「(小田急で)相模大野から新宿まで30分くらいなのに、(追加料金のかかる)特急に乗る人が行列作っててびっくりした」というツイートが話題を呼んでいる。
この人は関西人(阪急利用者)なのだそうだが、その意見にぶっちゃけ同感である。大した距離でもないのに片道420円も多く払うなんてもったいない。そんな感想を述べたところ、知人のAさん(30代男性)が、まさに小田急線でロマンスカー通勤をしていたという。Aさんに、いろいろ聞いてみることにした。(文:中山道登)
420円を払えば快適さが保証される
Aさんがロマンスカー通勤をしていたのは10年ほど前。区間は新百合ヶ丘から新宿までだったという。乗車時間はロマンスカーだと約20分。しかし、快速急行でもせいぜい30分程度で、その差は10分に過ぎない。10分に420円って高くない?
Aさんはこう話す。
「通勤で乗る人の場合、時短のためというよりは、満員電車の混雑はマジ勘弁っていうケースが多いんじゃないですかね。都心はどの路線も似たりよったりかもしれないですが、通勤時間帯の小田急線は激混みなんです」
だんだん力がこもってくる。
「朝の電車でギュウギュウ息が詰まって、仕事でも緊張させられて、さらに帰りの電車も人と密着して……。人の圧っていうんですかね、プレッシャーで吐きそうになったりしていました。もし快適さが保証されている特急に乗れるなら、それは使いたくなりますよ」
私鉄の「特急」は停車駅が少ないだけで車両も通常と同じ、料金も変わらずというものもあるが、小田急ロマンスカーは違う。なにせ名前がロマンス。シートも広々豪華で、追加料金がかかるのは納得だ。
神奈川の過酷な通勤事情
「それに、神奈川県民って、そもそも通勤時間が国内最長なんですよね」
Aさんは続ける。2020年にニッセイ基礎研究所が調べたところ、神奈川県民の平均通勤時間は片道53.4分で全国一だったという。
ちなみに兵庫・京都・大阪は片道40分前後だった。けっこう違うものだ。神奈川県は、東京に出るにも横浜に出るにも交通の便が良いイメージだったが……。
「あちこちに駅がある都内とちがって、神奈川は最寄り駅までバスで行くって人も結構いるんですよ。ボクも最寄りの新百合ヶ丘駅までバスでした。しかも神奈川の住宅地ってもともと山だったところが多いから、バス停まで坂道を歩かないといけなかったりして…」
なるほど。
「タイミングが悪いとバスもなかなか来ない。雨が降って道路が混むと、バス待ちが10分以上とかもあるので最寄り駅に行くだけで結構疲れます。都心に出るのに1時間以上かかることもあって、会社に通うだけでけっこうな体力を消耗しちゃうんですよ」
考えてみれば仕事の息抜きにスタバでお茶をしても400円ぐらいはかかってしまう。それで満員電車の不快さを回避できるなら……片道420円も高くはない、ということか。
「満員電車って、体力がない人にはすごくキツイんです。ボクの場合、調子が悪いときなんかは待ってでも乗っていましたね。ロマンスカーがあってほんと良かったです」
あらためて、片道420円。自分ならどうするだろうか。やはり常用はしないが、体調不良の時には乗るかもしれない。テレワークなどで解消気味とはいえ、まだまだ高い通勤列車の混雑率。もう少しマシになってくれればいいのだが……。