2021年11月14日 08:41 弁護士ドットコム
SNSや動画サイトなどに夢中になったり、地図アプリを見たりして、思わず「歩きスマホ」してしまう人たち。ネット上には「電柱と衝突して出血した」「階段の段差に気づかずに転倒して、捻挫した」など、歩きスマホをしていたためにケガをしてしまったという投稿も複数みられる。
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しかし、ケガのおそれがあるのは当の本人だけではない。歩きスマホ中に人とぶつかって、相手にケガをさせてしまうこともある。そのような場合、「犯罪」にあたるのだろうか。また、治療費などを請求されるのだろうか。泉田健司弁護士に聞いた。
ーー「歩きスマホ」をしていたために人にぶつかり、相手にケガをさせてしまった場合、犯罪にあたるのでしょうか。
故意に人にケガをさせたというわけではないので、傷害罪にはあたりません。また、歩くこと自体は危険な行為というわけではありませんから、かつて自動車事故に適用されていた業務上過失傷害罪も成立しません(なお、現在、自動車事故については、2014年に新設された自動車運転死傷行為処罰法が適用されます)。
ただし、過失傷害罪(刑法209条1項)には該当するでしょう。刑罰は比較的軽く、30万円以下の罰金または科料です。
ーー警察を呼ばれた場合、逮捕される可能性はありますか。
犯罪としては軽い部類であり、逮捕される可能性はほとんどないでしょう。そして、相手のケガの程度や事案の悪質性にもよりますが、ほとんどのケースが罰金にもならず、不起訴処分または微罪処分になる可能性があります。微罪処分とは、検察庁に送致すらされず、警察の段階でおとがめなしとなる処分のことです。
ーーケガをさせられた側から損害賠償請求をされることはあるのでしょうか。
歩きスマホという過失(厳密にいえば前方不注視の過失)とケガという損害に相当因果関係がありますから、損害賠償請求をされることは十分ありえます。
ただ、たとえば、歩行者同士の衝突であるならば、ぶつかられた人も回避できたといえるケースが多いでしょうから、過失相殺されて全額の賠償を受けられないと考えられます。また、自転車やバイク、自動車などと歩きスマホ歩行者の事故の場合、交通弱者である歩行者のほうが被害者とみなされることもあるでしょう。
このように見ていくと、歩きスマホも大したことないと思われるかもしれません。しかし、高齢者や児童にぶつかってしまうと大ケガを負わせかねません。そうなると、罰金や高額な損害賠償請求を受ける可能性があります。
何より、歩きスマホは周囲に迷惑をかける行為です。便利な道具も使い方次第。歩きスマホをやめられない人は、スマホとの付き合い方を見直してはいかがでしょうか。
【取材協力弁護士】
泉田 健司(いずた・けんじ)弁護士
大阪弁護士会所属。大阪府堺市で事務所を構える。交通事故、離婚、相続等を中心に地域一番の正統派事務所を目指す。
事務所名:泉田法律事務所
事務所URL:http://izuta-law.com/