先の読めないコロナ禍で、就活生が以前よりも安定志向になっていると感じます。マイナビの2021年4月26日の調査では、就活生(2022卒)の企業選びのポイントは「安定している」が42.8%と最も高くなっていました。(文:キャリアコンサルタント 坂元 俊介)
「ベンチャーは受けません」という学生
就活生と話をしていると、こんな声をよく聞きます。
「安定志向なので、ベンチャーは受けません」
「安定志向なので、福利厚生が整った会社が良いです」
「安定志向なので、とりあえず大手を受けようと思っています」
就活の場面では、「安定志向」という言葉は、「不測の事態の際にも、経営が揺らぐことなく安定している企業に所属したい」といった意味で使われることが多いです。
私はこの安定志向、という言葉を聞くたびに「安定したいのは、あなたなのか?会社なのか?」と言う、少し意地悪な質問を投げかけます。
「自分です」と答える学生もいますが、「どう違うのか?」と聞き返す学生もいるし、「会社」と答える学生もいます。実はここに「安定志向」の危険性が潜んでいるのです。
会社が安定していても、所属している個人が安定しているとは限りません。超大手企業やメガバンクでも、早期退職を何千人と募っていたり、事業所や部署を閉鎖するケースは珍しくありません。経営が安定している=人員削減がないという意味ではありません。
「安定志向」を口にする人が実際に望んているのは、自分のキャリアや生活の安定です。自分のキャリアや生活に不安を感じることがない、個人としての安定を得るために必要なことは、自分自身の「市場価値」を高めることに他なりません。
将来が予測しにくい時代に、今は安定している企業が、20年後・30年後も安定した経営基盤を誇っているかは、誰にもわかりません。
実際、コロナ禍により経営状態が悪くなった超大手企業の50歳前後の方から、転職相談を受ける機会も増えています。
ただ残念ながら、年収を大幅に落とさない限り、そういった方にご紹介できる仕事はほとんどありません。
こういった現実を目の当たりにしていると、「安定志向」で就職先を選ぼうとしている就活生には、自分自身の市場価値を高めるという意味の「本当の安定志向」を身に着けて貰いたいと思っています。
自分が最も成長出来る、輝ける環境を選ぶことで、市場価値は最大化していきます。「本当の安定志向」で就職先を選ぶなら、正解はみんな違うはずです。
「安定志向だから大手を受けます」
「安定志向だから銀行を受けます」
「安定志向だから公務員になります」
と思考停止せずに、自分自身にとっての正解を選んでもらいたいと思います。
【坂元 俊介】株式会社STORY CAREER代表取締役/キャリアコンサルタント・採用人事コンサルタント
同志社大学経済学部卒。新卒でリクルートHRMK(現リクルートジョブズ)入社。中途・新卒領域における求人広告媒体の営業に従事、その後、営業として3つの新メディアの立ち上げを行う。リーダーや大手担当を経験。Webベンチャーでのオフィス長経験を経て、30歳になるタイミングで家業の和菓子屋を継ぐとともに、企業の採用コンサルティング会社を立ち上げ、採用人事支援なども行う。リクルートの同期が立ち上げた株式会社STORYの法人化の際に、取締役に就任。大学生・第二新卒層のキャリア支援をおこなうSTORY CAREER事業部の責任者を兼任。2020年4月、STORY CAREER事業部の拡大に、同事業部を分社化、株式会社STORY CAREERの代表取締役に就任。毎年数百名の大学生・社会人のキャリア支援を行っている。