トップへ

意外と知らない「クルマ」の豆知識 第19回 扁平率って何だ? タイヤ選びの基礎知識

2021年11月12日 11:31  マイナビニュース

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
タイヤのサイドウォールにはさまざまな情報が記されていますが、中でもいまひとつわからないのは「扁平率」です。パーセンテージで示される指標ですが、これの高低によりクルマにどんな影響が出るのでしょうか? モータージャーナリストの内田俊一さんに聞きました。


○扁平率が高いとスポーティーに?



前回はタイヤのサイドウォールに書かれているさまざまな記号を解読した。そこで今回は、続編として「タイヤの違いでクルマにどんな影響が出るか」を考えてみたい。今回もブリヂストンの方々に話を聞きつつ、タイヤとクルマの関係をまとめてみた。



まずわかりやすいところで、タイヤの「扁平率」が変わるとどうなるかというお話から。扁平率とはタイヤの幅に対する高さの比率で、断面の高さを断面の幅で割り、そこに100を掛けたパーセンテージだ。数字が小さいほど、サイドウォールの幅が薄くなると思っていい。数値の低いタイヤをいわゆる低扁平、「ロープロファイルタイヤ」と呼ぶ。



扁平率が低いと、タイヤはより大きなパワーをエンジンから路面に伝えることができるようになる。高速走行時は安定性が増し、コーナリング中は横への振れが小さくなる(タイヤの横剛性が高くなる)。ステアリングの切れが良くなり、高速時における操縦安定性が増すというメリットがあるのだ。もうひとつ、ホイールが大きく見えることから、視覚効果として、足元がしっかりと大地を踏みしめているような安定感が出る。


これだけいいこと尽くしであるならば、なぜ全てのクルマがロープロファイルタイヤを履いていないのか。それは、タイヤの特性と関係がある。

タイヤは単に路面とクルマをつないでいるだけではなく、路面からの衝撃を吸収する役割も持っている。衝撃吸収に重要な役割を果たすのがサイドウォールだ。一般的に、ここが厚いほどショックを吸収しやすくなる。



つまり、ロープロファイル化するとクルマの乗り心地が悪化する。もちろん、そのぶんタイヤの横剛性が高くなるので、クルマの安定性は向上する。もちろん、これらは「極端にいえば」という話なので、ロープロファイルタイヤでも基本的な性能は保たれているのをお忘れなく。



では、タイヤ選びで扁平率をどう考えればいいのか。それは、クルマの性能・個性に関係してくる問題だ。スポーツカーやGT、ハイパワーのクルマ、あるいは積極的に運転を楽しみたいという方であれば、タイヤはロープロファイルである方が望ましい。一方で軽自動車やミニバン、SUVといった車種を選ばれる方や、乗り心地を重視したいという皆さんは、どちらかというと、ある程度は扁平率が高いタイヤをチョイスした方がいいだろう。


もうひとつの重要な問題として、扁平率を下げる場合は、当然ながらタイヤ幅を広くしないと意味がない。最初の計算式を思い起こしていただければわかりやすいだろう。例えばリム径(ホイールの大きさ)を同じとするならば、「195/65R15」であれば「225/50R15」となる。このようにタイヤの幅が広くなるので、タイヤ自体は若干重くなり、燃費にも影響を及ぼす。



あるいは、リム径を大きくするという方法もある。195/65R15であれば、215/50R17といった具合にホイールを大型化するのだ。いわゆる「インチアップ」と呼ばれる方法で、ホイールを1インチまたは2インチサイズアップすれば、タイヤの外径を変えずにリム径の大きなタイヤに変更できる。ただ、インチアップは走行性能に大きく寄与する一方で、乗り心地が硬くなったり、ロードノイズが大きめになったりすることがある。また、タイヤの外径を変えるとスピードメーターに誤差が生じたり、タイヤが車体に接触したりすることもあるから要注意だ。



このように、タイヤを変えればクルマの乗り味は大きく変わるのだが、それだけに、タイヤ選びの際には「自分のクルマをどのような方向性にしたいのか」を見定めておくことをおすすめしたい。そうでないと、見た目重視でカッコいいタイヤを履かせたものの、乗り心地が悪くなったり燃費が悪くなったりと、想定外の悪影響が出てしまう可能性があるからだ。せっかく“いい靴”を買っても、歩き心地が悪いとがっかりしてしまう。



内田俊一 うちだしゅんいち 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験をいかしてデザイン、マーケティングなどの視点を含めた新車記事を執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員。 この著者の記事一覧はこちら(内田俊一)