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『王様ランキング』が気づかせてくれる“自分の可能性” ほのぼのとした絵に込められた強いメッセージを読む

2021年11月11日 12:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『王様ランキング』込められたメッセージ

 十日草輔による漫画『王様ランキング』。漫画投稿サービス「マンガハック」に掲載されていた作品が口コミで人気が広がり、単行本化に至った。「このマンガがすごい2020」のオトコ編で第7位にランクインし、現在テレビアニメも放送中と、今もっとも注目度が高い作品のひとつと言える。


 王様ランキングとは、国の豊かさや抱えている強者の数、王様自身がいかに強いかを総合的にランキングづけしたもの。


 王様ランキング7位のボッス王が治める国に生まれた王子・ボッジが主人公だ。しかしボッジは巨人の両親を持ちながらも体が小さくて、非力だ。まともに剣を振ることすらできない。そして、耳が聞こえず、言葉も話せない彼は第一王子ながら、周りからは王の器ではないと思われていた。そんなときにボッジが出会ったのは暗殺集団「影の一族」の生き残りで、大きな目玉がついた影のような生物の「カゲ」。カゲとの出会いによって、ボッジの運命は少しずつ動き出す。


ボッジとカゲの過去……心が震える第1巻

 1巻ではボッジが国でどのような扱いを受けているか、カゲとの出会い、そしてカゲの過去が描かれた。


 耳が聞こえず、話すことができないボッジは、城の人間とは手話で会話を行っている。しかし、大半の人は、ボッジが何も聞こえないと分かると心ない言葉を投げかける。悪気がなさそうに、聞こえないなら何を言っても一緒だろう、というふうに。しかし、実はボッジは読唇術で相手の言葉を理解していた。何を言われているか分かっても、ニコニコしてやり過ごしている。何も感じていないわけではない。我慢しているのだ。そして、ひとりになってから泣いているのだ。なんと、強い少年だろう。


 カゲも最初はボッジを馬鹿にしていた。が、ボッジの本当の姿に触れていくうちに、どんな時も味方になることを誓う。


 カゲ自身も辛い過去を持っていた。母が殺され、自分を助けてくれた人を主人とし、懸命に尽くしていた。その主人も失ったカゲはひとりで生きていたが、ボッジとの出会いによって、カゲの運命もまた変わっていくのだ。


敵ばかりだと思っていたけれど……

 城内でもボッジの扱いはひどい……ように見えたが、それはあくまで表面的なものだった。


 特に、ボッス王国の王妃・ヒリング。ボッスの後妻で、第二王子ダイダの母。ボッジにとっては義母になる。ヒステリックで言葉も辛らつなため、最初はボッジがこの義母にいじめられていたのかと思うのだが、実は心優しい女性で、ボッジを思っての行動をとっていたことがわかってくる。


 振り返って見てみると、ヒリングは手話を使っていた。ボッジの言葉に耳を貸さず、ボッジに自分の気持ちを伝える気がないのであれば、手話を学ぶ必要はない。ボッジとちゃんとコミュニケーションを取りたいという気持ちがあってこそ。


 ヒリングのように、『王様ランキング』に登場するキャラクターたちには隠された本心があり、実はとてもあたたかい物語なのだ。


ボッジ王子が強くなっていく物語

 父・ボッス王が亡くなったあと、ダイダが国王となる。城を出たボッジは自分が持つ力を最大限に生かして強くなる方法を模索する。みるみるうちに成長していくボッジ王子の様子には、とても勇気づけられる。同時に、私たちは自分たちの可能性を諦めてしまっているのではないか、と気づかされる。


 ボッジは大きなハンデを跳ね返そうと懸命に自分の心と戦っている。誰だって、強くなりたいと思えばなれる。「自分なんて」そう思ってしまいがちな人にこそ届いてほしい物語だ。


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