トップへ

「文春砲」で知事を辞めた米山隆一氏が衆院議員に…。なぜ当選? 地元で話を聞いて回った。

2021年11月10日 15:30  キャリコネニュース

キャリコネニュース

写真

10月31日に行われた衆議院選挙・新潟5区で米山隆一氏が初当選を果たした。米山氏は新潟県知事だった2018年、女性スキャンダルを週刊文春に報じられ辞任したことで全国的に有名になった。

そんな米山氏が8万票近くを集め、次点候補に得票率10ポイント以上の大差で勝利したということで、Twitterでは一時「新潟県民」や「新潟5区」がトレンド入り。その多くが「新潟県民どうなってるの?」「新潟5区の有権者大丈夫?」などといった、米山氏の当選が信じられないという反応だった。

なぜ、米山氏は当選できたのだろうか。地元の人たちに話を聞いて街の温度感を探ってみた。(取材・文:箕輪健伸)

「料理をすべて食べてくれる」

新潟県内の老舗料亭の仲居は「米山さんの人柄ではないでしょうか」と話してくれた。

「うちは国会議員や県会議員など、多くの議員さんから利用していただいていますが、中でも米山さんはトップクラスに人柄が良いことで従業員間では有名です。配膳の際に仲居一人ひとりに『ありがとう』と声を掛けてくれますし、いつも敬語で無茶な注文もされません」

「出された料理をすべて食べてくれるのは米山さんくらいです。政治家の方の中には、箸さえつけていただけない方も少なくありません。会食続きでいちいち食べていられないという政治家の方の事情も分かりますが、やはりお出ししたものを残されるのは気分が良いものではないですよね」

「米山氏いい人証言」は他にもある。「県知事在任期間は2年と短かったですが、悪い印象はありません。むしろ良い人だという印象があります。穏やかで、若手の意見もよく聞いてくれた知事でした。少なくとも私の中では、良い印象しかありません」とは、新潟県庁職員(30代・男性)だ。

スキャンダル「許せない」の声もあるが…

ただ、いくら人柄が良かろうが、過去のスキャンダルは強烈だ。女性の反発や拒否感が強いあろうことは想像に難くない。この辺りを地元の女性有権者に取材したところ、案の定、スキャンダルについて「許せない」という人や嫌悪感を表明する人はいた。

その一方で、「詳細を覚えていない」「もう責任は取った(新潟県知事を辞任)」「金銭問題とは違う」といった反応も多かった。

結局、いくら全国的に大きなインパクトを残したスキャンダルでも、3年も経つとだんだん記憶が薄れてくるのだろう。少なくとも筆者が取材した範囲の中では、選挙で大きな足かせにはならなかった模様だ。

ところで、Twitterで政治系の話題をチェックしている層にとっては、米山氏は橋下徹・元大阪府知事や松井一郎・大阪市長らをはじめ多くのユーザーとあれこれと論戦をしていることでも有名だが、そんな「Twitter論客」のイメージも地元では薄いようだった。

一方で、米山氏が昨年結婚した作家・室井佑月氏については、多くの人が好印象を持っていたようだ。新潟5区の大票田・長岡市の主婦(70代)は、「室井さんの大ファンになった」と話す。

「最初は、結婚してもどうせ東京に住むんでしょなんて思っていたんだけど、長岡に住んでいるっていうじゃない? それだけで私らにとっては好印象だったんだけど、実際に会ってみたらいっぺんにファンになっちゃった。室井さんってキレイで気さくで面白いのね。米山さんはスキャンダルもあったけれど、彼女がいるならもう大丈夫よ」

室井氏に好印象を持っていたのは、この女性一人ではなかった。取材で聞いて回った限りでは、高齢層の女性有権者の多くが室井氏への好感を語った。米山氏が女性有権者から投票してもらえたのは室井氏が支えてくれたから、という側面も大きいだろう。

室井氏が好かれる理由は、そのカリスマ性もあるのだろうが、2人が地元長岡の神社・蒼紫神社で結婚式を挙げた点も無視できない。テレビでよく見る有名人が、東京の結婚式場ではなく地元の、すぐそこにある神社で結婚式を挙げてくれた。これで好感を得ないわけがない。「地元が都会の人に認められる」というのは、なんだかんだと言って誇らしいのだ。

こうして意見を聞いてまわると、やはりテレビやネットを通じて見えてくるイメージと、実際に会った人が感じる印象とはずいぶんと違うようだった。米山氏は当選後もさっそくTwitterで物議を醸していたが、今後、国会議員としての活動がさらなる注目を集めれば、地元の人たちが抱くイメージもまた変化していくのだろうか……。