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賑わうLMDhのしわ寄せ。台数増の2022年WEC、LMGTEアマに『2台体制・1ガレージ』義務付けを検討か

2021年11月10日 11:41  AUTOSPORT web

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2021年シーズンはポルシェ911 RSRの1台体制で参戦したイギリスのGRレーシング
WEC世界耐久選手権は2022年シーズンにおいて、ピットガレージ使用方法の変更とともに、LMGTEアマクラスのチームに2台でのエントリーを必須とすることを検討しているようだ。

 2021年シーズンにLMGTEアマクラスに参戦するいくつかのチーム代表は、2022年シーズンに先立ってスポーティング規則の調整が議論されていることを示唆している。

 この変更される可能性のある規則においては、すべてのLMGTEアマクラスに参戦するチームは、同じガレージと給油リグを共有する2台の車両をオペレートすることを義務付けられている。

 これは、来年の参戦台数の増加に対応するための措置で、利用可能な限られた数のガレージに合わせるために導入される可能性があるものと理解されている。WECにおける最大参戦台数は、富士スピードウェイの(ピットビルA棟の)ピットガレージ数から、34台であると考えられている。

■2023年のLMDh参戦準備のため、2022年のグリッド数が増加?
 このLMGTEで2台体制を参戦要件とする可能性について説明を求められたACOフランス西部自動車クラブのピエール・フィヨン会長は「まだ答えるには早すぎる。様子をみてみよう」とSportscar365に対し語っている。

「暫定的なエントリーリストが出たら、何ができるか分かるだろう。それについてはまだ話せない」

 2012年シーズンのWEC開始以来、LMGTEアマのチームはシーズンごとに何台のエントリーを行うか、自由に選択することができた。

 2台でのエントリーを強制するとなると、マイク・ウェインライトのためにポルシェ911 RSR-19の1台体制で参戦しているGRレーシングや、同じく1台体制でポール・ダラ・ラナを擁するアストンマーティン・レーシングなどに対し、プレッシャーを与えることになる。

 同様に、3台体制へのステップアップを目指しているチームにとっても、その種のプログラムが可能かどうかを確認する必要があり、彼らは来季のコミットメントについて保留をしている状況だ。

「WECが抱える問題は、(2023年正式導入の)LMDhの準備をするために多くの新チームがやってくるということだ」とプロトン・コンペティションのチームボス、クリスチャン・リードは語っている。

「そのため、パドックのスペースが不足するように思える。みんなを幸せにするための解決策を見つけなければならない」

「新たなチームの参入は難しいが、10年にわたってシリーズをサポートしてきたアマクラスのチームも手放したくない。簡単ではないね」

「3台目を参戦させる計画を持つチームもある。そういった場合は、もしかしたら他のチームと何かを共有する必要があるのかもしれない。だが、それについて何かを語るのは時期尚早だ」

 フェラーリで参戦するアイアン・リンクスのチーム代表であるアンドレア・ピッチーニは、2022年に3台体制へと拡大するプログラムへの検討について、リードと同様の感情を持っている。

「ACOへのリクエストは、たくさんある」とピッチーニはSportscar365に対し語った。

「彼らは、すべてのチームにいくつのエントリー(枠)を与えるのか、決断する必要がある。彼らはそれを、1チームあたり2台に制限することについて話し合っている」

「来年はエントリー数が増えるため、ピットにおいて許される給油タワーの数を減らすことについても話した」

「ACOが来年、何をするつもりか、それが分かるまでもう少し待たなければならないだろう。我々はWEC(LMGTEアマ)において少なくとも2台のエントリーをすでに決定している」

■“同時ピットイン”の際に生じる問題に警鐘も
 別のチーム代表は、2台体制のチームにガレージの共有を要求する場合、安全性とスペース管理の面で問題が発生する可能性があるだけでなく、レースやその他のセッション中の競技手順にも影響を与える可能性があると警鐘を鳴らす。

 彼らは、セーフティカーやフルコースイエロー(FCY)の際に自チームの2台双方の車両を給油のためのピットに呼び戻す際に生じる潜在的な落とし穴について、強調している。

「現在は1台の車両のためのひとの給油リグ(給油タワー)があるが、それをどう運用するのか分からない」と匿名を希望するチームマネージャーは語る。

「両方のクルマの残燃料がわずかな場合はどうなる? あと1周することはできない。(一方の作業をもう一方が)待機する必要がある」

「そのとき、隣り合うピットはどうなる? そこに(ピットを待機する)クルマがいる場合、安全上の大きな問題となる」

「加えて、同じスペースで2台分のクルーが待機しているという事実もある。8人のメカニックと、交代するドライバー、そしてドライバーヘルパーのための充分なスペースはない」

 プロトンのリードは、次のように付け加える。

「こういったことが起こるのか、見極める必要がある。2台の車両に対して給油タワーがひとつしかないと、戦略に大きな影響を与える。ラッキーにもアンラッキーにもなり得るが、それは望んでいるものではない」

 フィヨンは、1台体制のチームが直面する苦境に対しACOが「取り組んでいる」と語っている。

「もちろん、来年WECで走りたいと思っているすべてのチームを幸せにするために、あらゆる選択肢を検討する」とフィヨンは述べた。

 2022年の規則変更の確定は、12月15日に開催される次回のFIA世界モータースポーツ評議会で行われる予定だ。