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紙ドライバーFのへなちょこ試乗日記 第6回 日本初のグーグル搭載車! ボルボ「XC60」との対話

2021年11月09日 12:02  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
日本初のグーグル搭載車となるボルボの「XC60」に試乗した。クルマとスマートフォンをつないで「Android Auto」を起動するのではなく、クルマのインフォテインメントシステムそのものが「アンドロイドOS」になっている感じなのだが、その使い勝手は?


○走りはいうことなし!



SUVの「XC60」は世界で最も売れているボルボ車で、日本では「XC40」に次ぐ販売台数を誇る。2021年9月のマイナーチェンジでは内外装の若干を変更し、新たにインフォテインメントシステム「Google Apps and Services」(Google アプリ/サービス)を採用した。試乗したのはプラグインハイブリッド車(PHEV)の「XC60 Recharge Plug-in hybrid T8 AWD Inscription」というグレードで、車両本体価格は959万円だった。


走りについて、改めて申し上げることはない。そもそもXC60は、導入時に日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞したほどのクルマだし、PHEVの乗り心地は静かで速くて快適そのものだった。1,900mmの横幅は大きめだから少し気になったが、試乗した浦安周辺は広くて走りやすい道が多く、すぐに慣れた。安全装備が充実しているとこもボルボ車のよいところだ。


○アンドロイドOS搭載車? 「XC60」の実力は



さて、肝心のGoogle アプリ/サービスなのだが、具体的にはカーナビゲーションで「Google マップ」、音声認識で「Google アシスタント」が使えて、クルマ自体に「Google Play ストア」からアプリケーションが落とせるようになっている。普段からグーグルのサービスに慣れ親しんでいる人はもちろん、そうじゃない人でも、かなり使いやすいシステムなのではないかというのが使ってみた感想だ。



ナビはGoogle マップだから、ちょっとあいまいな検索でも望みの場所を探してくれる。自動車のナビでは往々にして、一言一句を正確に入力しないと目的地を見つけてくれないことがあり、それは結構なストレスだったりする。あるいはスマホのグーグルマップで目的地を検索して、電話番号をクルマのナビに打ち込んだりすることもあるが、これでは二度手間だ。クルマにGoogle マップが入っていれば、こうした面倒から解放される。



Google マップなので、ディーラーに持っていって更新をかけなくても、地図はいつも新しい情報を反映してくれる。Google アカウントでログインすれば地図の履歴を反映してくれるはずだから、検索はよりしやすくなるだろう。地図はメーターディスプレイやヘッドアップディスプレイにも映せるが、これも、クルマそのものにGoogle マップが統合されているおかげだ。


Google アシスタントは2022年第1四半期に日本語に対応するとのことで、現時点ではまだ、音声が英語だった。なので、つたない英語で話しかけてみた感想ではあるのだが、それでも認識能力の高さ(言葉を聞き取る力)は水際立っていた。対話の様子を動画で撮ってみたので、どんな感じかはそちらで確認してみていただきたい。日本語で「オッケー、グーグル」といってもほとんど反応してくれなかったので、少し恥ずかしかったが「オウケイ、グーゴウ」と話しかけた。

正直にいうと、これまでのクルマではあまり、音声認識を使ってこなかった。というのも、聞き取り能力のいいクルマが少ないと感じていたからだ。経験上、耳がいいなと思ったのはホンダの電気自動車「Honda e」くらいだった。その点、Google アシスタントは耳も頭もいいので、使っていてストレスが少ないどころか、使いようによってはドライブがより楽しくなるかもしれないと感じた。



例えば箱根をドライブしていたら、「北条早雲って名前をよく見かけるけど、何をした人なんだろう?」と気になることは必定だ。そんなとき、XC60であればGoogle アシスタントが常にスタンバイ状態なので、すぐに聞いてみることができる。おそらく、ウィキペディアの情報を教えてくれるはずだ。回答を聞いて早雲庵宗瑞に対する興味がわいたら、そのまま『箱根の坂』を駆け下りて小田原に乗り込み、「戦国時代の幕を切って落とした男」の気分を味わってみるのも楽しいだろう。



Google アシスタントを自宅のIoT家電と連携させれば、クルマの中から家のエアコンや照明を音声で起動させることも可能とのこと。クルマにスマートスピーカーが載っているようなイメージと考えればいいのかもしれない。個人的には、日本語対応が完了しても英語バージョンが選べたら嬉しいと思った。英会話の練習になるのは間違いないからだ。


Google Play ストアについては、アプリがこれから徐々に増えていくようだ。現状では例えば、音楽系だと「YouTube Music」と「スポティファイ」が入っていた。グーグル搭載車でありながら「YouTube」は入っていなかったが、考えてみればクルマなので、動画は優先順位が低いのだろう。


XC60にはeSIMが入っていて、これを通じて通信を行い、グーグルのサービスを利用する。4年間は利用料が無料だが、その後は有料になるとのこと。料金はまだ詰めているところだそうだ。



ちょっと気になるのは、「iPhone」(あるいはMac)ユーザーはどうなってしまうのかということなのだが、グーグル搭載車にアップル派を排除する意図はないらしい。BluetoothかUSBでiPhoneをつなげば「Apple Music」で音楽を再生したりもできるし、2022年には「Apple CarPlay」にも対応の予定だという。


ボルボがGoogleと手を組んだのは、「人がクルマに合わせるのではなく、クルマが人に合わせる」という考えからだという。



インフォテインメントシステムは自動車会社にとって、他社との差別化を図ることのできる重要な領域ではあるものの、いろんなクルマに乗ってみて感じるのは、使い勝手の悪いシステムも少なくないということだ。いくらクルマづくりが得意な会社でも、システムのUI/UXまで高い完成度で作れるとは限らないわけだから、そのあたりは得意な会社、例えばグーグルに任せてしまおうという考え方は、とても合理的だと思う。クルマの中が使い慣れた「グーグル」のシステムになっていれば、こちらから自動車メーカー独自のUIに合わせにいく必要はなくなる。直感的に操作できるのは便利だ。



そういえば先日、ホンダも「Googleと車載向けコネクテッドサービスで協力」すると発表していた(2021年9月のリリース。2022年後半に北米で発売する新車から順次、導入していくとのこと)。Honda eですばらしいインフォテインメントシステムを作ってみせたホンダでさえ、この領域ではグーグルと組もうと考えているのだとすれば、自動車業界では今後、車載システム領域におけるIT業界との協業がますます進んでいくのかもしれない。



紙ドライバーF かみどらいばーえふ 生活するには自動車が必須な北陸の某県で生まれ育ちながら、運転免許証の取得後は都会暮らしとなったため、これまでに一度も自家用車を所有したことのないペーパー(紙)ドライバー。すでにマニュアルトランスミッションの操作方法もおぼつかないが、ひょんなことから自動車業界を取材することとなった。 この著者の記事一覧はこちら(紙ドライバーF)