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NMB48 石塚朱莉が語る『ドラクエ』への熱烈な愛情 “異色のゲーム実況”はどこへ向かう?

2021年11月08日 21:11  リアルサウンド

リアルサウンド

NMB48の石塚朱莉(撮影=堀内彩香)。

 ゲーム好きの著名人・文化人にインタビューし、ゲーム遍歴や現在の活動とゲームの関連性などを聞く、『リアルサウンド テック』の連載“あの人のゲームヒストリー”。第六回は『NMB48 石塚朱莉 10時間 ドラゴンクエスト実況~YNN裏放送~』が人気を集め、昨年9月にはゲーム実況用のYouTubeチャンネルを開設、リアクションや素朴なプレイが好評なNMB48の石塚朱莉に登場してもらった。


 今回は彼女のYouTubeチャンネルが1周年を迎えたことを機に、あらためて『ドラクエ』実況のなりたちや、そのルーツ、他にプレイしてきたゲームの話などについて、じっくりと話を聞いた。(編集部)


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――石塚さんの『ドラクエ実況』を毎回、面白く見させてもらっています。そもそもこの企画を始めたきっかけは?


石塚:最初は、私が知らないところで告知されてたんです。朝起きてTwitterを見たら、「YNN(動画配信サイト)」のホームページに書いてあって(笑)。その時はゲーム実況自体がどういうものなのかもわからなかったですし、12時間生配信をするというのも未知の領域でした。


――それ以前はどれくらいゲームをプレイする人だったのか気になります。人生で一番初めにハマったゲームはなんでしたか?


石塚:やっぱり『ドラゴンクエスト』シリーズですね。初めは幼稚園くらいのとき、父がやっている『ドラゴンクエストVIII 空と海と大地と呪われし姫君』を横から見ていて、自分もやりたいな、と思っていたんです。当時は「壊れるから、ゲーム機は触っちゃダメ」と言われていたので、自分でやることはなかったんですけど、両親どちらも『ドラクエ』が好きなので、2人がずっと夜中にこっそりプレイしているのを見て、「私も大人になったら絶対夜更かししてドラクエをやるんだ!」って思ってました。


――当時の石塚さんにとって、『ドラクエ』は大人の特権だったんですね。


石塚:そうなんですよ。お菓子とかおつまみを食べながらプレイしている姿がすごく羨ましくて(笑)。その後、『ドラゴンクエストIX 星空の守り人』が発売されたときはニンテンドーDSを持っていたので、初めて自分の『ドラクエ』を手に入れました。それまでは『マリオカート』や『マリオパーティ』『どうぶつの森』のようなファミリー向けのゲームばかりをやっていたんですが、『ドラゴンクエストIX』を手に入れてからは、ガチでゲームをやり込むようになりました。弟とお母さんと一緒に、秋葉原にある「ルイーダの酒場」へすれ違い通信をしに行ったり。


――ちなみに、『ドラクエ』シリーズで一番ハマったタイトルは?


石塚:一番好きなのは『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』です。親から子へ、そこからまた次の世代へ、という家族の温かさもあり、残酷さもあるような描写に、すごく涙したのを覚えています。


――人生の分岐点を選択する瞬間もあって、勉強になる作品ですよね。


石塚:そうなんです! これから生きる上で「私はどういう人と結婚したらいいか」というのを、このゲームから学んだ気がします(笑)。


――(笑)。ちなみに幼馴染のビアンカと、主人公を助ける富豪の令嬢・フローラでは、どちら派ですか?


石塚:断然、ビアンカです。「フローラを選ぶ人はちょっとどうなん? 一回話聞かせてくれへん?」という気持ちです(笑)。何周もしてますし、今回はフローラでいこうって決めていても、やっぱりビアンカを選んでしまうんですよね。進めてたらどんどん情が湧いてきて。


ーーそうやってフローラ派に詰め寄るくらい(笑)、ゲームにハマってたんですね。


石塚:学校の友だちとも喋れるし、家族とも一緒にできるのがすごく楽しかったですし、今は楽しみ方もさらに広がっているので、ゲームは本当に大好きなんです。ただ、それってNMB48の活動というよりは趣味の一環で、お仕事になることって今まで全くなかったんです。だから、趣味が仕事になるのかと驚きました。


――しかも、その実況タイトルが『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』という、石塚さんがプレイしてこなかった初期の作品だったわけですが、スタッフさんも石塚さんの『ドラクエ』好きは知っていたんですか?


石塚:一回「『ドラゴンクエスト』は学校教材にしたほうがいい」ってツイートしたのを、スタッフさんが拾ってくれたみたいです。


――あれは衝撃の配信でした。


石塚:結果的に約14万人の方が来場してくださって、コメント数も14万に届くくらい、たくさんいただいて。12時間50分の間、視聴者の方と私と、来てくれた何人かのメンバーと、本当に冒険をしたという感覚になりました。


――時間が経つにつれて、NMB48ファン以外の視聴者がどんどん増えていく、という変化も面白かったです。


石塚:最初はやっぱり自分たちのファンの方しかいなくて、「あんちゅ頑張れ」「可愛いよ」みたいなコメントをしてくれてたんですけど、夕方ぐらいから『ドラクエ』歴30年くらいのガチの方が入ってきてくれて、お叱りのお言葉やアドバイスをいただいたり(笑)。私自身も、ゲームファンと接するのが初めての経験だったので、すごく新鮮で楽しかったです。この配信で初めて「ゲーム実況」というものを知りましたし。


――12時間配信をやってから「私のやってたことは『ゲーム実況』やったんか!」というのを知ったんですね……(笑)。


石塚:そうなんです(笑)。だから12時間配信のときは何も手本にせず、ひたすら手探りやったんですよ……。


ーーだからこそ、異色のスタイルが生まれたのかと納得しました。


石塚:やっぱり異色なんですかね……? ゲームが上手い人や、おしゃべりが上手い人がゲーム実況者、というイメージがあるので、私はゲームも下手くそやし、手際悪いし、大丈夫なのか……? っていつも思ってます。


――「リアクション」という最大の武器があるじゃないですか。


石塚:そうなんですかね(笑)。視聴者の方と自分とで、一緒に冒険している気分になるというのも、私の強みなのかなって思っています。


――なるほど。12時間配信からYouTubeチャンネル開設まで1年ほど期間が空いていましたが、その理由は?


石塚:元々、ゲームは仕事として一切やらないんじゃないかと思っていたので、スタッフさんに「YouTubeで実況者としてやってみないか」と言われたんですけど、結構悩みました。でも、YouTuberって今やスーパーヒーローですし、ゲーム実況も実際にやってみてすごく楽しかったので、とりあえずやってみようということで、チャンネルを開設しました。


――そんな石塚さんのチャンネルも、9月18日で開設から1年を迎えました。おめでとうございます!


石塚:ありがとうございます! 最初は「余裕でしょ」と思ってたんですけど、続けていく大変さもありますし、YouTuber・ゲーム実況者として始めるとなったら、要求されるものも違ってくるし、『ドラゴンクエストII 悪霊の神々』の実況からスタートしたんですけど、足りないところが多くて、本当に落ち込みました。一生懸命やってるつもりなんだけど、いろんな人に怒られちゃうし。私のファンの方とゲームファンの方で小競り合いもあったりして。今でも「どうしたら面白くなるのかな」って悩んでます。


――見る側としては、いつも楽しませてもらっていますよ。ちなみに、ご自身の中で印象に残った回を挙げるとすれば?


石塚:『ドラゴンクエストII』2のメタルスライム回ですね。これ、30分の動画にまとめてるんですけど、実際は1時間くらいプレイして5匹も出てこなかったし、結局1匹しか倒せてないんです。めちゃくちゃイライラしたんですけど、見てくださった方たちからは「神回」って言われていて。「イライラする様子が面白いんか」と驚きました(笑)。


――3ターン目で逃げ出したメタルスライムに発狂したり、中盤で完全に不貞腐れてる石塚さんが面白い回でした。


石塚:あともう一つ挙げるとしたら、『ドラゴンクエスト3』の転職回ですね。当時はそんなつもりなかったんですけど、普通だったら考えられない転職をしてしまって、コメントがお叱りとお説教の嵐で埋め尽くされたんです。コメントで日々お叱りの言葉を受けることは多いので「また怒られたな」くらいのつもりだったんですけど、「やばいことをやってる奴がいる」と拡散されて。


――ダーマの神殿での転職をきっかけに、コメント欄でいろんな人がドラクエ論を展開し始める、という。


石塚:この回はコメント欄から物語が生まれてると思います。


――生まれてますね、確実にこれは生まれてます。


石塚:こうやって色んな方のコメントを見ながらプレイすることで、『ドラクエ』の隠しネタを知ることができたのも大きかったですね。コメントを読んでいる視聴者の方も「そんなことがあったんだ、知らなかった」と反応してくれているのを見るので、面白いなと。自分が普通にアイドルとして生きてきた中で、『ドラクエ』好きの方と出会うことってあんまりなかったんですよ。なので、こういう場所で『ドラクエ』が好きな同志たちと触れ合う機会を作ることができて、自分は間違ってないんだなと気づかされました。最近『ドラゴンクエスト脱出ゲーム』というリアルイベントにも参加したときに、『ドラクエ』好きの友だちと知らない方と4人でパーティーを組まなきゃいけなくて。


――4人未満で行くとマッチングされるんですよね。


石塚:そうです。結果的にドラクエ好きのご夫婦と組ませてもらったんですけど、会話をしている『この人はドラクエが本当に好きなんだな』っていうのが伝わってきて。私は旅芸人だったんですけど、「ファッションショーをやれ」「ギャグを言え」という要求に応えるのも楽しかったですし。ゲームの中に入り込むような仕掛けもたくさんあって、テンションが上がりました!


――石塚さんは舞台のお仕事も多くて、『悪い芝居』への参加もそうですし、自身で『劇団アカズノマ』も立ち上げるなど、演者としての幅も広がっています。NMB48としての活動も含め、ゲーム実況をすることで、これらのお仕事に良いフィードバックはありそうですか?


石塚:今のところ、決定的に交わる瞬間というのはあまりなくて。2年目以降は、アイドルとゲームとお芝居を良い形でクロスさせていきたいという思いは強いです。私を通していろんなジャンルを知ってほしいので。


――そういう意味では、石塚さんファンの方はすごく幸せですね。推していたら色々なジャンルに触れることができるという。


石塚:私が好きで舞台を見に来てくれるファンの方も、私が知らないところで「〇〇の舞台行ってきたよー」と違う劇団を観に行ってくださっていたりして、私自身も嬉しくなるときがあります。そうやって楽しんでもらえる方がもっと増えてほしいですね。


――NMB48のメンバーとしてはどうですか?


石塚:ゲームや舞台のファンの方に、NMB48の活動をもっと観てほしいところはあります。このタイミングで今後のNMBを作ってくれるような後輩が一気に増えたので、私もこの6年間の活動から、ほんの少しくらいは後輩に何かを残すことができるかもしれないので、アイドル活動やゲーム実況、舞台で学んだものを、少しでも後輩たちに還元できたら嬉しいです。そういえば、私のゲーム実況を見てオーディションを受けに来た子もいたみたいで、本当に感動しました。


――それはすごいですね。NMB48に関しては、吉田朱里さんを筆頭に個人活動が活発ですし、石塚さんのような方が後輩に伝えることで、グループはさらに個性的になっていくと思います。


石塚:そうですね。吉田さん以外にも、三田麻央さんとか村瀬紗英ちゃんとかもそれぞれのジャンルで突き抜けているので、私も負けじとついていきたいです。『劇団アカズノマ』の第二弾も次を考え始めてるんですけど、できれば新しいメンバーを一人出したいなと思ってて。


――キャリアの浅いうちからピックアップしてもらえたら、めちゃくちゃモチベーションが上がりますね。山本彩さんの卒業も迫る中ではありますが、そうして着々と次世代育成にも携わっていると。


石塚:山本さんが居なくなったらどうなるのか、まったく想像つかないんですけど、だからこそ一人ひとりが力をつけていこうと思っているのかもしれません。だからこそ、たかが石塚朱莉かもしれないけど、そういう部分でも頑張っていかないといけないな、と思いました。


ーー配信について、2年目以降の目標はありますか?


石塚:2年目はどんどん幅を広げていきたいなとは思っていて。NMB48でYouTuberといえば、吉田さんというめちゃくちゃ強い先輩がいるわけですよ。追いつくためにも、毎日投稿、自分で編集、月に2~3回の生配信をしていきたいと思っています。


ーー大きく出ましたね!


石塚:こういう場で言わないと、自分を追い込めないと思うので!(笑)


(中村拓海)