祝福の声を左右からかけられながら、ピットへ戻ってきたHitotsuyama Audi R8 LMSの篠原拓朗は、自身のスーパーGT初優勝にまだ信じられないかのような表情を浮かべていた。2018年、Audi Team Hitotsuyamaでは将来のドライバー育成にも目を向けるべく、篠原をCドライバーに起用した。そのときBドライバーだった富田竜一郎から紹介されたときは、まだあどけなさも残るドライバーだった。そんな篠原が、川端伸太朗とともにHitotsuyama Audi R8 LMSを駆り、11月7日に行われたスーパーGT第7戦もてぎを見事制し、スーパーGT初優勝を掴んだ。
篠原は2018年から富田やリチャード・ライアンから多くのことを学び、さらにチームからはTCRジャパンシリーズ参戦のチャンスを得た。また、スーパー耐久でD'station Racingから参戦すると、チームメイトの織戸学や藤井誠暢からも多くを吸収し成長してきた。また、2020年はエヴァRT初号機 X Works R8やPACIFIC NAC D'station Vantage GT3を駆りスーパーGTにスポット参戦。第8戦では、PACIFIC NAC D'station Vantage GT3で初めてのポイント獲得を果たしたほか、TCRジャパンでもチャンピオンを獲得してみせた。
そんな成長が、Hitotsuyama Audi R8 LMSの2021年のレギュラードライバー獲得に繋がった。ただ予選ではチーム2年目の川端伸太朗がQ1を担当し、Q2を任される役割だったが、アタック後チームに無線で「すいません」と伝えることが多かった。なかなか歯車が噛み合わず、Hitotsuyama Audi R8 LMSは第6戦まで無得点。苦しいシーズンが続いていたのだ。
2018年から加わったAudi Team Hitotsuyamaにとっても、最高の“恩返し”になったと言えるだろう。「2020年もTCRジャパンでチャンピオンが獲れて、今年はスーパーGTでも優勝を飾ることができました。これで僕を『育てて良かったな』と思っていただければ嬉しいですし、ここから先もドライバーとして頑張りたいです。とんでもなくお世話になっているので、これからもチームに恩返ししたいです」と篠原は言う。