2021年11月04日 18:11 弁護士ドットコム
物流大手「佐川急便」の男性社員(当時39歳)が今年6月、都内の営業所の社屋から飛び降り自殺した。会社側が遺族に提供した調査報告書によると、原因は上司のパワハラにあったとみられる。遺族側の代理人弁護士が11月4日、記者会見を開いて公表した。
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佐川急便では2011年にも上司のパワハラが原因で社員が自殺し、労災認定されている。今後、会社側と補償について話し合うという。労災の申請も検討する。
会社側が第三者の弁護士事務所に依頼した調査結果によると、男性の営業所では朝の朝礼などで、上司が部下を怒鳴ることが頻繁にあったようだ。
男性は営業係長職にあり、今年3月にエリア統合があると、担当するドライバーが10人以上増え、経験が浅いドライバーもいたことから男性の負担が増えた。会社が認定しただけで、月40~50時間ほどの残業と月平均10時間ほどのサービス残業があったという。
一方、直属の上司である課長からは厳しい叱責が続いた。亡くなる前日には、男性を立たせたまま、ほかの従業員の面前で40分以上も怒鳴り続けたという。見かねた同僚が一部を録音するほどで、「お前どれだけ俺に嘘つくんだよ、お前よお」などの発言が確認された。
遺族側代理人の川人博弁護士によると、「働く同僚の目の前で亡くなったということもあり、事件発生後、集中的に調査がおこなわれて、かなり早い段階で遺族に対する社長が出席した説明会と謝罪の場が持たれた」という。
会社側が社長名で遺族に送った謝罪文には、「上司の課長の行為はパワーハラスメントに該当し、また会社においては(…)『安全配慮義務』に欠けており、適切な対応を怠った責任がある」との文言がある。
取材に対して佐川急便は、パワハラについて「会社としてこの事実を認め、すでにご遺族に謝罪するとともに、誠心誠意対応させていただくことをお約束しています。今回の事案を真摯に受け止め、再発防止に向け、全社で取り組んでまいります」とコメント。遺族側との協議を進める中で、関係者の処分についても検討するとのことだった。