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都会にやってきたサル、捕まえてもいいの? 東京都と環境省の見解は

2021年11月04日 16:11  弁護士ドットコム

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サルに遭遇したら、どうするのが正解なのか。


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11月に入ってから、東京都心を縦横無尽に走りまわる猿が話題になっている。1日から、目黒区、新宿区、世田谷区、北区…テレビのワイドショーはここ数日、猿の行方を追いかけ、ネットでも目撃情報が多数報告されている。



都は現在、実害がない限り、捕獲や駆除はしない方針だという。



四国出身の都内男性はこの方針に「捕獲しないの?と言っている人がいて、逆にびっくりしました」と話す。男性が生まれ育った土地では、集落に降りてくる猿は見慣れたもので、農作物を荒らすことがない限り、見守るのが普通だったという。ただし「いざとなれば捕獲をします」とさも当然のように話す。



●東京都「現時点では、サル駆除の許可は出せない」

しかし、都心では猟友会が出てくるのは難しいだろう。もし仮に、一般人がサルにケガを負わせたり、駆除・捕獲したりした場合、法的には問題になるのだろうか。



東京都の担当者は、「サルは野生鳥獣です。捕まえるには鳥獣保護法(鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律)にもとづき、都に申請のうえ許可を得る必要があります。その際、ケガをさせられた、させられる可能性が高いといった理由や、畑を荒らされるなど有害鳥獣としての理由が必要です」



現在、そのような申請は出ていないという。仮に出されたとしても、「今であれば、許可は与えられない」という。



「現在出没中のサルは都内を移動するだけで、特に人や農作物に危害をくわえることもありません。市区町村や警察には『特に近づかず、遠くから見守るように』などと伝えてあります」



一方、サルから危害をくわえられそうになった場合、殴ってケガをさせたり、殺したりしまってもよいのかという質問には、「鳥獣保護法でそのような場合を想定していないため、答えられない」とした。



●「テレビクルーも追いかけて刺激しないで」

「サルには極力近づいたり触ったりせず、遠くから見守ってください。へたに追いかけたり、あみで捕まえようとすると、サルが興奮して逆襲して、怪我することがあります。



実際にはテレビのカメラが追いかけてしまうこともありますね。よい映像を撮りたい気持ちもわかりますが、遠くから撮るなど刺激しないようにお願いします」



環境省も「野生鳥獣の捕獲・駆除には基本的には許可が必要。捕まえたり、傷つけたりすることは違法です。近づかないでください」と呼びかける。



●住宅街を出歩く猿は全国に

サルが住宅地や都心に現れるケースはよく報じられている。今年9月には、福岡県の北九州市に現れたサルが人を襲った。8~9月にかけて、噛みつかれるなどして16人がケガをしたという。ほかにも、2017年には、神奈川県の横浜市や、東京の大田区や港区など住宅街など都心部に猿が出没した。



小学生の子をもつ港区に住む女性は「数年前、学校の近くに猿が出た時には、注意を呼びかけるメールがきました。子どもたちは棒や傘を持って登校していきましたね」と話す。



都会の子どもが、「珍客」に興奮する気持ちはわからなくもないが、前述したように、一般の人が許可なくサルを傷つけたり、捕獲したりするのは大きな問題があるから注意が必要だ。



●殺傷するかもしれないと考えて許可なく殺傷してはいけない

なお、鳥獣保護法の考え方について、都の担当者は、「捕獲など(殺傷も含む)または採取などをおこなう意思がなく、結果として、鳥獣を捕獲などまたは採取に至った場合には、これを罰しない」という考えがあると説明する。



たとえば、鳥が巣を作った木を切って、地面に叩きつけられたヒナが死んだ場合、知らずに切ったならしかたないが、ぴいぴい鳴き声が聞こえていて、ひなが死ぬ可能性を認識したうえで切ったら、法に抵触するという。