2021年11月04日 10:21 弁護士ドットコム
俳優の戸田恵梨香さんと水川あさみさんが10月27日、それぞれのSNSアカウントを更新し、一部女性誌が報じた不仲説を否定した。「有名税」を払うばかりだった有名人の「反撃」に芸能界からも賞賛の声が上がっている。
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2人の「嘘をつき続けて苦しくはありませんか?」(戸田さん)、「芸能人が嘘をつくと怒られるのに 週刊誌が嘘をつくと怒られないのはなぜですか?」(水川さん)といった言葉からは今回の件にとどまらない怒りを感じさせる。
戸田恵梨香(@toda_erika.official)がシェアした投稿
芸能人の依頼者を多く抱える佐藤大和弁護士のもとにも、「デタラメな記事に困っている」との相談が寄せられるという。これまでは泣き寝入りせざるを得ないケースも多かったが、最近はSNSの存在により、芸能人が声をあげやすくなったそうだ。
「芸能人は問題のある報道に積極的に声をあげたほうが良く、ファンがそれを支えていくことも大切だ」と語る佐藤弁護士に寄稿してもらった。
週刊誌報道等について芸能人らから相談を受けますが、報道内容には、事実と異なる内容やプライバシーを侵害する内容が含まれていることがあり、過度な精神的負担になっています。
また、家の周辺で付きまとったり、家族や関係者に取材したりするなどの取材方法により、プライベートや平穏な私生活が損なわれて、精神的に追い詰められることもあります。
実際に相談者の中には、精神的不安や極度の緊張により過呼吸や不眠症などになっている方も少なくありませんし、希死念慮を抱く方もいます。
また、今の報道はSNSなどを通じて、一気に情報が拡散し、間違った事実やプライバシー侵害がインターネットに残り続けます。それが培ってきたブランディングを毀損し、さらには新たな誹謗中傷の温床にもなっているのが現実です。
仮に、誹謗中傷に至らない内容でも、一度に多くの強い批判に晒されることで、芸能人を過度に追い詰めることにもなります。
このように報道による影響や被害は、昔と比べることができないほど拡大し、深刻化しているといえるでしょう。
ここ数年、週刊誌報道に対して、SNSを通じて声をあげたり、法的措置をとったりする芸能人も増えてきましたが、裁判手続をへるとなれば、相応の負担もあり、また自らの活動に影響する可能性があるため、泣き寝入りする人が多いのが現状です。
例えば、週刊誌を発行しているのは大手出版社やその関連会社が多く、裁判をすることでその出版社からの仕事に影響があったり、また出演している番組やドラマ、CM等にも影響がでたりする場合も少なからずあります。
仮に裁判をしても、被害の深刻度と比べて損害賠償額も著しく低く、また週刊誌を抑制するものではないことから、「どうせ無駄である」と焼け石に水と感じているところもあるかと思います。つまり、こういった事情を背景に、「無法地帯化」している側面はあると思っています。
最近、週刊誌報道などに対して違法とする判決も増えていますが、個人的には、違法な週刊誌報道に対しては、積極的に法的措置を検討するべきだと思っています。
ただ、それだけでは週刊誌のスタンスは変わらないと思います。今回の戸田さんの動きに共感の声が多く寄せられ、他の芸能人の方々にも波及していますが、これを一過性のもので終わらせてはいけません。
個人的には、ファンも同時に「Change.org」などの署名サイトで声を集めて、各週刊誌や配信会社に意見を伝えることで、積極的に時代を変えていく必要があると考えます。違法な報道や取材を是正させ、また芸能人の心身を守るために、社会的に議論をするべき段階にきていると思っています。
【取材協力弁護士】
佐藤 大和(さとう・やまと)弁護士
代表弁護士。芸能人の権利を守る「日本エンターテイナーライツ協会(ERA)」共同代表理事。エンターテインメント分野に強く、多くのタレント、アーティスト、ユーチューバー、スポーツ選手等の顧問弁護士をしている。厚生労働省「過重労働解消のためのセミナー及び過重労働解消キャンペーンに関する広報事業検討委員会」委員長、文化庁「文化芸術分野の適正な契約関係構築に向けた検討会議」委員なども務めている。
事務所名:レイ法律事務所
事務所URL:http://rei-law.com/