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「カローラクロス」が追加! 急増するトヨタSUVは共存可能?

2021年11月03日 11:01  マイナビニュース

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
トヨタ自動車の新型SUV「カローラクロス」の競合となりうるのは、ホンダ「ヴェゼル」や日産自動車「エクストレイル」、マツダ「CX-3」「CX-30」などだ。それぞれに個性のあるSUVであり、好みもわかれるところだろう。ただ、カローラクロスのライバルは、トヨタ車の中にもいるかもしれない。



トヨタのSUVラインアップは非常に充実している。車名をあげてみると、5ナンバーの「ライズ」、3ナンバーの「ヤリスクロス」「C-HR」「RAV4」「ハリアー」「ランドクルーザー」、そして、今回の「カローラクロス」だ。住み分けがどうなっているのか、1台ずつ特徴を見ていきたい。


○トヨタSUVラインアップそれぞれの特徴



5ナンバーのライズはダイハツ工業「ロッキー」と基本的には同じクルマだ。開発はダイハツが主導しており、エンジンは1.0L直列3気筒ターボの1種類となる。ここにきて、ロッキーにはハイブリッド(HV)が追加となったが、ライズにはまだ情報がない。いずれにしても、ライズ/ロッキーは5ナンバー車であること自体が大きな価値となっている。


ヤリスクロスは3ナンバー車だが、こちらは小型ハッチバック車「ヤリス」がベースなので、TNGAプラットフォームもカローラシリーズより小型車向けの「GA-B」を使っている。したがって、3ナンバーといっても車格は下で、エンジンもガソリン車/HVともに1.5L直列3気筒を搭載する。これにより、動力性能や快適性も異なるが、小型ハッチバック車であるヤリスをベースとしているだけに、SUVといってもヤリスクロスは機敏な走行感覚が特徴だ。


C-HRはヴェゼルの対抗車種として誕生したクルマ。外観は独特だ。運転してみると、後方視界が十分でないなど不便な面もあるが、外観に惚れ込んで購入した人も多いのではないかと思う。発売になると、たちまち大人気となった。運転感覚も、「SUVといえども楽しめなければ」という強い思いを持ったチーフエンジニアがドイツへ遠征して仕上げたほどだから質が高い。格好よく、走りのいいSUVである。


RAV4はTNGAの「GA-Kプラットフォーム」を採用している。「カムリ」と同じ骨格だ。昨今のSUVがどちらかというと都市型で、舗装路を主体に走ることを目指して進化してきたのに対し、現行のRAV4は未舗装路でも存分に力を発揮できる走破性の獲得を狙いとした。このため、トヨタは4輪駆動技術の新開発にも力を注いできた。



それに対しハリアーは、そもそもSUVという価値を世の中に問うた祖として、都市型のクロスオーバー的な存在感を保持し続けている。


ランドクルーザーは、いうまでもなく悪路走破性を第一とした本格的4輪駆動車だ。ここまでくると、カローラクロスとの競合は全く発生しないはずである。


カローラクロスはC-HRとRAV4/ハリアーの中間に位置しており、SUVらしいSUVとの印象を与える。いうなれば正統派だ。なにか特別な部分があるわけではないが、不満なく、運転はしやすく、荷物が十分に詰める実用性も兼ね備えている。唯一、前席から後席まで広がる大きなガラス面積を持つ「パノラマルーフ」(オプション装備)が、ハッと息をのませる開放的な魅力を放っていた。


あらゆる機能において80点であり、プラスアルファとしてパノラマルーフが追加の魅力をもたらしていた。「80点プラスアルファ」はまさに、初代から続くカローラの伝統だ。そういう意味で、カローラクロスはカローラらしいSUVだといえるだろう。数々のSUVを取りそろえるトヨタのラインアップでも、独自の存在感を持つクルマだ。



これほど多彩なSUVをそろえられるのは、TNGAを早期導入した結果でもあるが、競合他社の倍以上という販売店網を持つトヨタならではの戦略といえる。改めて、感嘆させられる。



御堀直嗣 みほりなおつぐ 1955年東京都出身。玉川大学工学部機械工学科を卒業後、「FL500」「FJ1600」などのレース参戦を経て、モータージャーナリストに。自動車の技術面から社会との関わりまで、幅広く執筆している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。電気自動車の普及を考える市民団体「日本EVクラブ」副代表を務める。著書に「スバル デザイン」「マツダスカイアクティブエンジンの開発」など。 この著者の記事一覧はこちら(御堀直嗣)