トップへ

1.8m超の車幅は? HVの乗り味は? トヨタ「カローラクロス」に試乗

2021年11月02日 11:02  マイナビニュース

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
トヨタ自動車「カローラ」の55年におよぶ歴史の中で初めてのSUVとなる「カローラクロス」に試乗した。実際に見てみると想像以上に大柄なクルマだが、1.8mを超える横幅は運転感覚にどのような影響を与えるのか。ハイブリッドの乗り味は? 気になるポイントをチェックした。


○燃費良好! 高速道路で28km/Lに到達



カローラクロスにはガソリンエンジン車とハイブリッド車(HV)がある。試乗したのは、HVの中間グレードである「S」の前輪駆動(FWD)車だ。ほかに、後輪駆動用モーターを追加した4輪駆動(4WD)車もある。試乗車はオプションの「パノラマルーフ」を装備していた。


対面したカローラクロスは、想像以上に大柄なSUVに見えた。



想像以上といったのは、「TNGA」(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)の「GA-Cプラットフォーム」と呼ばれる骨格を採用しているクルマにしては、という意味だ。この骨格は現行「プリウス」から採用が始まり、プリウスのあとにはSUV「C-HR」も発売されたが、C-HRはそれほど大柄に感じなかった。


車体寸法を確認すると、C-HRの横幅は1.8mを切っているが、カローラクロスは1,825mmある。ひとつ車格が上の「RAV4」よりは狭いが、1.8mを超える車体幅は、それなりの大きさといえるだろう。


実際、運転席に座ってみると、前方視界は極めて良好だが、左側のドアミラーがずいぶん遠く感じる。同じカローラといっても、例えばステーションワゴンの「カローラツーリング」(車幅は1,745mm)と比べると、カローラクロスは大きめのクルマを運転しているという意識にさせられるクルマだ。



運転を始めても、一般道では左側の車幅感覚がずっと気になった。ただ、グローバルSUVとして世界で販売することを考えると、ほかの市場ではこれくらいの大きさが求められるのかもしれない。


ハイブリッドシステムは1.8Lのガソリンエンジンにモーターを組み合わせる。プリウスをはじめとするGA-Cプラットフォーム採用車と同じだ。動力性能に不満はなく、一般公道から高速道路まで、交通の流れに自然に乗ることができた。



燃費もよさそうで、メーター上のオンボードコンピューターはWLTCモードによる燃費性能値26.2km/Lと同等の実用燃費を示していた。高速道路での淡々とした走りでは28km/L台に達したほどだ。



一方、車格は異なるが、先に試乗した新型「アクア」に比べモーター走行領域は少なく、従来通りのトヨタ・ハイブリッド・システムⅡの乗り味で新鮮味はなかった。アクアは「バイポーラ型」と呼ばれる新開発のニッケル水素バッテリーを搭載しているが、それによりモーター走行領域が増えたことで、静粛性や上質感が格段に高まっていた。


そこまでの快適性をカローラクロスに求めるべきかどうかはわからない。しかし、車格が下のアクアがトヨタの最先端技術を採用した今日、伝統ある「世界のカローラ」で初となるSUVの乗り味が、これまでのほかのトヨタ車やとあまり変わらないというのは、どこか惜しい気がする。



新開発のバッテリーは、原価が高いのかもしれない。それによって車両販売価格が上昇してしまう可能性がある。世界で販売されるカローラシリーズの立場では、どの国や地域でも整備や修理が可能な支援体制を築かなければならないので、新型バッテリーの供給能力が追い付かないという事情もあるのかもしれない。それでも、カローラクロスがアクアのような乗り味を提供したら、トヨタのSUVの中でも特別な価値を提供できていたのではないかと思う。



御堀直嗣 みほりなおつぐ 1955年東京都出身。玉川大学工学部機械工学科を卒業後、「FL500」「FJ1600」などのレース参戦を経て、モータージャーナリストに。自動車の技術面から社会との関わりまで、幅広く執筆している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。電気自動車の普及を考える市民団体「日本EVクラブ」副代表を務める。著書に「スバル デザイン」「マツダスカイアクティブエンジンの開発」など。 この著者の記事一覧はこちら(御堀直嗣)