元F1ドライバーのジャン-エリック・ベルニュは、F1で3年を過ごしたあと、他のチャンピオンシップで輝かしい成功を収めており、フォーミュラEでは2度タイトルを獲得した。しかしこれだけ時間が経っても、31歳のベルニュは、レッドブルのドライバープログラムから放出されたやり方には依然として特別な痛みを覚えている。
ベルニュはレッドブルのジュニアチームであるトロロッソ(現アルファタウリ)からF1にデビューした。2012年と2013年にダニエル・リカルドと、その後はダニール・クビアトと組み、レッドブル昇格のチャンスがくることを期待していた。
だが2014年シーズン半ばにベルニュはレッドブルのモータースポーツコンサルタントを務めるヘルムート・マルコから、レッドブルへの昇格はあり得ず、シーズン末で放出されることを知らされた。
「夏に電話を受け、若いドライバーと交代させられると言われた」とベルニュは今週の最新の『Beyond the Grid』ポッドキャストで語った。
「そのドライバーはマックス・フェルスタッペンだと分かっていた。それがゲームだ、レッドブルに場所はないんだ、という感じだった。3年後に空いたシートはなく、ヘルムート・マルコからその年末で終わりだと言われた」
「それまでに他のF1チームと話したことはなかった。なぜなら僕はレッドブルファミリーにいたからだ。もしかするとそれが僕の過ちだったかもしれない。僕はいつの日かレッドブル・レーシングに行くためにトロロッソにいたようなものだった」
2014年のレッドブルのシートはセバスチャン・ベッテルと、マーク・ウエーバーの後任であるリカルドが占めていた。しかし4度の世界チャンピオンのベッテルはそれまでで最悪のシーズンを過ごしており、彼は2015年にはフェラーリに移籍するのではといううわさが渦巻いていた。
「ヘルムートとの率直な会話のなかで、僕は『ベッテルが離脱したらどうなる?』と聞いた。彼は『ベッテルは離脱しない』と言ったが、僕は『もしそうなったら?』と言った。そうすると彼は、僕がレッドブルへ行くことになると言った」
■「ヘルムートには、他のドライバーに話をするのを最終戦後まで待ってほしかった」
しかし、その後ベッテルのレッドブル離脱が発表されると、マルコはベルニュを放出するという以前の決定を覆すことで面子を失いたくないと思っているようだった。代わりに、マルコはレッドブルの穴を経験の浅いクビアトで埋め、トロロッソにはカルロス・サインツを起用してフェルスタッペンと組ませ、ルーキー同士のラインアップにした。
「(日本GPの)土曜日か金曜日にベッテルがフェラーリに行くことが分かった。レッドブルはすぐに対応したかったので、誰とも話をせずにクビアトの起用をその朝に発表した」
「それは年の半ばに発表され、僕はトロロッソから放出されることになった。もしベッテルがフェラーリ移籍を決めた時に、彼がレッドブルに来るように僕に言ったら、とてもバツの悪いことになっただろう。厳しい瞬間だった」
「彼は(トロロッソで)マックスと組ませるのに経験のあるドライバーを求めていたが、レッドブルは僕を留まらせるとふたたび言うことができなかった。カルロス・サインツJr.がもうひとりのドライバーとして浮上し、彼らはサインツJr.を起用した」
ベルニュは、マルコがシーズンの早い時期に彼の放出を発表していなければ、歴史はかなり違うものになっただろうと指摘した。
「彼がシーズンのそれだけ早い段階で僕に話してくれたのはよかった」とベルニュはポッドキャストで語った。「だけど同時にそれは僕の最大の問題になったかもしれない。彼がシーズンのそんな早い時期に話したことがね」
「ヘルムートが他の多くのドライバーたちに対してやったように、彼らに話をするのをシーズン最後のレースまで待ってくれたらよかったのにと思う。もし彼が待ってくれていたら、(ベッテルが離脱を発表した)日本より前のグランプリで僕ははるかに上の順位につけ、クビアトを抜いてレッドブル・レーシングに入っていただろう」