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本来の目的とは違うけど……出そうなホテルで「御朱印除霊デッキ」

2021年10月30日 15:01  おたくま経済新聞

おたくま経済新聞

本来の目的とは違うけど……出そうなホテルで「御朱印除霊デッキ」

 旅していると、中にはいわくありげな雰囲気で、何がとは言いませんが「出そう」な宿泊施設の部屋に泊まる羽目になることがあります。不穏な空気を感じて眠れないこともしばしば。不安な気持ちを抑えるため、本来の趣旨とは違いますが、寺社の参拝記録である御朱印帳を広げてお守りがわりにし、眠りについた方がいます。


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 この方法を「御朱印帳の強そうなページを出して御朱印除霊デッキ組んで寝たことがあります」とTwitterで紹介したのは骨牌(かるた)さん。


 骨牌さんは「審神者(さにわ)」と呼ばれる「刀剣乱舞」のファン。それと同時に、各地の寺社に参拝し、参拝したことを寺社が証明する「御朱印」を授けてもらっています。


 ある時、骨牌さんが格安プランで宿泊したホテルで通されたのは、なんとも不穏な空気が漂う部屋。


 骨牌さんは「フローリング材で軋む床、冷蔵庫の中が汚い、毛髪が落ちているなどしばらく封印されてたのかな?というようなサービスの行き届いてなさだったので、もしかして事故物件ならぬ事故客室なのかも」と思ったといいます。


 もともと、格安プランというものは何らかの事情で「訳あり」なので安くしますよ、というもの。その理由は様々で、空調が効きづらいとか、工事中で騒音が聞こえるとかがありがちなパターンです。


 もちろん、ホテルで凶悪事件が発生したケースもありますから、事件の舞台となった部屋もそれなりに存在しますが、そういった事情を宿泊客が耳にすることはまずありません。ですから、骨牌さんの宿泊した部屋が「事故客室」だったかは不明です。


 しかし、色々と不備な点も目立つので、そのまま眠ると何かが「出そう」な雰囲気。不安な気持ちを抱えた骨牌さんは、お守り代わりになるものはないか……と所持品を探したところ、御朱印帳に目が留まりました。


 御朱印帳は、寺院の場合は納経の印として、神社の場合は寄進の印として授けられたものがルーツ。現在は寺社に参拝した印として、初穂料などを納めて授けてもらう場合がほとんどです。


 基本的には、自身が参拝したことを後になって思い出せるアイテムというのが御朱印帳。しかしながら骨牌さんの直面した状況では「こういったお寺や神社に参拝したんだから」と心を落ち着かせるため、御朱印帳を広げたのでした。


 骨牌さんいわく、自分の心が最も落ち着きそうな「強そうなページ」として開いたのは、審神者らしく名刀「髭切」と「膝丸」の御朱印が記されたページ。


 髭切と膝丸は、平安時代に源満仲が天下守護のために作らせた太刀であると「源平盛衰記」に記されています。双方とも源満仲の子である源頼光へと受け継がれ、その代に有力な家臣である渡辺綱、坂田金時(金太郎)、碓井貞光、卜部季武の「頼光四天王」とともに様々なエピソードが生まれました。


 髭切は頼光四天王の筆頭、渡辺綱に貸し出された時に京都の一条戻橋で鬼の腕を切り落としたことから「鬼切丸(鬼丸)」と名を改めたとされます。その後も源氏の嫡流に受け継がれ、源平合戦では源頼朝を勝利に導きました。現在は北野天満宮にある重要文化財の太刀が「髭切」ではないかとされています。


 膝丸は源頼光の時代、頼光四天王とともに土蜘蛛退治で活躍したことから「蜘蛛切」との別名が生まれました。その後、源頼朝の弟である源義経に受け継がれ「薄緑」との別名もつけられました。また曽我兄弟の仇討ちに使われたとのエピソードも。現在は京都の大覚寺にある重要文化財の太刀が「薄緑(膝丸)」ではないか、とされています。


 化け物を斬った太刀の御朱印を見て、心を落ち着かせた骨牌さんは御朱印帳を広げたまま就寝。幸い、何も変わったことは起きなかったそうです。


 本来の目的とは違うものの、参拝した寺社の御朱印を見てご利益を思い出し、心の安寧を取り戻すのもありかもしれません。もちろん、そんな「いわくありげな部屋」に泊まったりしないのが一番ですが……。



<記事化協力>
骨牌さん(@karuta_x)


(咲村珠樹)