10月31日の衆院選投開票を前に、与野党の候補者の訴えが続いている。「投票しよう」という呼びかけも増えてきた。アウトドア用品のパタゴニア日本支社では「Vote Our Planet 私たちの地球のために投票しよう」というキャンペーンを展開。また、小栗旬さんや橋本環奈さんなどの人気芸能人を用いた「VOICE PROJECT 投票はあなたの声」という動画も話題だ。
しかしながら「投票しろ」と言われても、「どこに投票すればいいのかわからない」という声もある。そんなことで注目を集めているのが、質問に応えるだけで、自分にもっとも近い意見の政党や候補者を教えてくれるマッチングサイトである。
だが、多数登場しているマッチングサイトで選んで見ると「そんなバカな」という結果になる事例も多数報告され、本当に役に立つのかと疑念を生んでいる。(文:昼間たかし)
え、なんでボクが自民党?
現在、投票マッチングサイトは、選挙・政治情報サイト「選挙ドットコム」で公開された「投票マッチング」をはじめ、朝日新聞、毎日新聞のものなどがある。
どのサイトでも設問は、コロナ対策など直近の政治課題に関するものから、消費税の減税、安全保障政策など多岐にわたる。一見、それぞれの政治課題に関する自分の選択を選んでいけば、もっともマッチする政党を選ぶことができそうである。
ところが、その結果はどうもおかしい。
筆者が朝日新聞のサイトで試してみたところ「一致度が高い政党」になったのは「自由民主党」と「NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で」で、どちらも50%の一致度であった。次いで一致度が高いのは「立憲民主党」の43%という結果に。
ならば、メディアで紹介される機会の多い「選挙ドットコム」を試して見るとどうだろう。こちらでは「自由民主党」が一致度72%、次いで「日本維新の会」が62%という結果に。
個人的な意見だが、筆者は新自由主義政策を進める自民党や維新に投票することはあり得ないと思っているのだが、どうしてこんな結果に……?
どのマッチングサイトも設問が雑すぎる
この結果を精査すると見えてくるのは、設問の雑さである。
たとえば、憲法をめぐっては、朝日新聞のマッチングで「あなたはいまの憲法を変える必要があると思いますか、それとも変える必要はないと思いますか」という設問がある。単に「変える必要があるか?」と提示されても、憲法のどの部分を変えるかで、政治的立場はまったく異なると思うのだが……。
また、「選挙ドットコム」で設問のひとつにしている「政府がロックダウンなど私権を制限できるよう、法改正すべきですか?」もそうだ。
私権の制限をめぐっては各党それぞれに意見があるわけだが、具体的に「こうした形で私権を制限する」「過剰な制限とならないために、このような施策も実施する」という詳細な案が出揃っているわけではない。そんな状況で賛成か反対か決めろといわれても、どう判断していいのか困惑する。
設問のおかしさのせいか、ネット上では「がちがちのレーニン主義者なのに判定が公明党になった」「ファシズムを志向すると、なぜか新自由主義の維新になる」などなど、投票しようとしている政党とは、まるで違う結果になってしまう指摘がなされている。
政治学者の三浦瑠麗氏による「あなたの価値観診断テスト」もSNSで話題になっていたが、ネットではこちらにも苦言がでていた。
「どのマッチングも、判断に迷う設問が目に付きます。とりわけ、三浦瑠麗氏の<あなたの価値観診断テスト>なんて<同性愛者を特別扱いすべきではない>という設問がありますが、法の下で平等に扱うことを前提としているのか、単にアンチを煽っているのか意図がわかりませんよ」(新聞記者)
どのサイトにも共通している問題は、普段から政治や社会問題に興味を持っていないと、どう判断してよいか問題の意味が理解できない設問が多数存在していること。手軽さ重視なのだろう、質問数もかなり絞ってある。
結局、精度はイマイチ。話題づくりの「ご参考」程度のものなのだろう。普段から議論を深めることをすっ飛ばして、単に投票率がアップすれば世の中が良くなるかのような、お気楽さとリンクしている問題のような気がしてくる。