2021年10月29日 14:11 弁護士ドットコム
動物をいじめる様子を映した動画を投稿するユーザーがあとを絶たない。動物愛護にくわしい弁護士は「再生回数を増やすための道具として、動物を利用することは許されない」と警鐘を鳴らしている。
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ことし10月中旬、飼っていた子猫を浴槽に入れて、無理やり泳がせたとして、無職の50代男性が動物愛護法違反の疑いで愛知県警に逮捕された。
報道によると、男性は2020年6月、当時住んでいた名古屋市内の自宅で、水を張った浴槽に子猫を入れて、足がつかない状態で泳がせた疑いが持たれている。
しかも、猫を泳がせる様子を映した動画をSNS(インスタグラム)に投稿していた。
閲覧者が通報したほか、動物愛護団体が刑事告発したことで、愛知県警が動いた。猫が水を嫌がる習性があることから、虐待にあたると判断したようだ。
しかし、男性は「虐待はしていない」と容疑を否認しているという。今回の事件について、動物虐待事案にくわしい細川敦史弁護士に聞いた。
――そもそも、猫を無理やり泳がせる行為は「虐待」にあたるのでしょうか?
動物愛護法には、動物虐待罪(44条2項)にあたる行為が定められています。猫を無理やり泳がせることは、そのうち、「酷使」または「その健康及び安全を保持することが困難な場所に拘束することにより衰弱させる」という構成要件にあてはまる可能性があります。
――男性は容疑を否認しているようですが、今後のポイントはなんでしょうか?
逮捕事実は、子猫を足のつかない浴槽で泳がせたことのみのようですが、SNSで公開された動画から、虐待の可能性があると考えられる行為はこれだけではありません。
たとえば、目をつぶって動かない状態の子猫を屋外で撮影した動画も公開されていました。最終的に、この子猫は死亡したおそれもあります。
捜査機関の取り調べにより、余罪を含めた捜査をおこなったうえで、最終的に検察庁がどのような処分を下すか、注目しています。
――今回のように動画サイトを含めたSNSに投稿する事件が増えています。
スマホの普及によって、動画撮影が容易になったことから、近年、動物虐待の様子を撮影し、YouTubeなどのインターネット動画サイトに公開する事案が散見されます。
ただ目立ちたいだけなのか、広告収入が得られるからか、いずれにせよ、再生回数を増やすための道具として動物を利用することは許されないことです。
そのような虐待動画をたまたま目にした視聴者が気分を害するなど、二次被害も発生する可能性があり、犯行態様として非常に悪質だと思います。
YouTubeは、動物虐待などの暴力的なコンテンツについて掲載を禁止し、違反の報告を受けて対応する仕組みを用意しています。
現状は、動画サイト側の自主的管理によって動物虐待動画の拡散はある程度制限されているといえますが、それでは対処しきれない状況になれば、こうした動画を公開する行為自体について、罰則を伴う規制の導入について議論する必要があるかもしれません。
【取材協力弁護士】
細川 敦史(ほそかわ・あつし)弁護士
2001年弁護士登録。交通事故、相続、労働、不動産関連など民事事件全般を取り扱いながら、ペットに関する事件や動物虐待事件を手がける。動物愛護管理法に関する講演やセミナー講師も多数。ペットの法と政策研究会代表、ペット法学会会員。
事務所名:春名・田中・細川法律事務所
事務所URL:http://www.harunatanaka.lawyers-office.jp/