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「お前もイベルメクチン飲め!」個人輸入した薬を配る上司、医者でもないのに大丈夫?

2021年10月29日 10:01  弁護士ドットコム

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勤務先の事業所長が、新型コロナウイルス感染症の予防や治療のためとして、抗寄生虫薬「イベルメクチン」の服用をしつこく迫ってくると、困惑した読者から弁護士ドットコムニュースにLINEメッセージが寄せられた。


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この読者によると、所長はワクチン接種に強く反対する一方、「イベルメクチン」を海外から個人輸入し、周囲に配っているそうだ。力のある人物だけに断ることも難しく、部下たちが困っているという。



イベルメクチンの配布については、弁護士ドットコムの法律相談コーナーにも質問が寄せられている。たとえば、離れて暮らす家族が自宅療養となったときのためにイベルメクチンを購入したいが、譲渡して大丈夫かといった内容だ。



イベルメクチンについては治験が進められているところで、まだ臨床試験で有効性が明らかになっていない。コロナ治療薬として承認されておらず、副作用が出ても救済対象にならない可能性がある。



医師や薬剤師でもないのに他人に薬を配っても良いのだろうか。薬機法にくわしい松下朋弘弁護士に聞いた。



●配布は「絶対にしないようにしましょう」​​

――薬の個人輸入は違法にはならない?



「イベルメクチンを、自分自身で使用するために個人輸入することは禁止されていません。一部の医薬品については個人輸入自体が認められていませんが、イベルメクチン自体は『数量にかかわらず厚生労働省の確認を必要とする医薬品について』(令和3年3月26日付け薬生監麻発0326第2号厚生労働省医薬・生活衛生局監視指導・麻薬対策課長通知)の禁止リストには含まれておりませんので、地方厚生局で必要書類を提出する等の手続を経ることで適法に輸入できる可能性があります」



――周囲に配る行為はどうでしょうか?



個人輸入をしたイベルメクチンを周囲に配ることは薬機法で禁止されています。もともと自分自身で使用する場合に限って未承認医薬品を個人輸入することができる理由は、外国で受けた薬物治療を継続したり、海外からの旅行者が常備薬として携行する場合への配慮にあります。そのため、個人輸入したイベルメクチンを配るようなことは絶対にしないようにしましょう



ーー輸入代行業者経由での入手に警鐘を鳴らす報道も出ています。



「未承認医薬品について輸入代行業者を利用すること自体が直ちに問題にはなりませんが、輸入代行業者の中には薬機法に違反した形で営業をおこなう悪質な事業者も存在します。そのような事業者に輸入代行業務を委託した場合、トラブルに巻き込まれる可能性はあります。



違法な未承認医薬品の輸入代行業としては、広告によって不特定多数の者の希望を募ったり、募った上で商品となる未承認医薬品を一括発送によって事業者が直接輸入を受け、個人に対して商品を発送(販売)するようなものがあります。未承認医薬品については非常に厳しい薬機法上の広告規制がありますので、新型コロナ対策でイベルメクチンの輸入を募るような広告はやってはいけないものとお考え下さい



また、商品の発送を直接外国の事業者から個人に対して取次をせず、一旦事業者が輸入をした後に個人へ発送をしてしまうと、輸入の代行ではなく未承認医薬品の販売行為と判断されるため、これもやってはいけないものとお考え下さい(あくまで輸入代行事業者ができるのは輸入の「代行」です)」



治療効果の有無については、現在進められている治験の結果等によりいずれはっきりするとして、ワクチン同様、コロナ治療薬についても人からの強制は望ましくないということは言えるのではないだろうか。命にかかわることもある感染症だけに、不安につけ込むような悪質商法に巻き込まれる可能性もあり、注意したいところだ。




【取材協力弁護士】
松下 朋弘(まつした・ともひろ)弁護士
慶應義塾大学法科大学院修了、ベンチャー企業インハウス弁護士、コンサルティング会社勤務を経験。医療法人、医療機器メーカー、医療広告コンサル会社の顧問として広告表示のチェックなどを行う。
事務所名:松下総合法律事務所
事務所URL:https://www.mtstsogo-law.com/