WEC世界耐久選手権のハイパーカークラスに参戦しているトヨタGAZOO Racingは、第5戦バーレーンの走行初日、フリープラクティス1のセッションに先立ってリモート形式の会見を開き、現地から小林可夢偉と中嶋一貴が日本メディアの質問に答えた。
9月に予定されていた富士6時間レースが渡航制限等の影響により中止となったことで、2021年シーズンは今週末と来週末、2週連続バーレーンでレースが開催され、閉幕する。10月30日決勝の第5戦は6時間、11月6日決勝の最終第6戦は8時間(ポイント1.5倍)で争われることになる。
会見冒頭、第4戦ル・マン24時間レースを制している7号車GR010ハイブリッドの小林可夢偉は、次のように抱負を語った。
「7号車としては、しっかり優勝を飾ってチャンピオンを獲るという目標を掲げてきています。まだ走っていませんが、充分に準備はできているので、しっかり自分たちの力を出し切って、チャンピオンを獲りたい」
「ただ、アルピーヌのBoPの関係もあるので、勝つことが目標なのか、しっかりチャンピオンを獲ることが目標なのか、というのはしっかり準備していきたいです。ただ、チャンピオン獲りたいです」
一方、9ポイント差で追いかける8号車の一貴も、ル・マンでの悔しさを晴らすべく、タイトル獲得に照準を合わせている。
「残念ながら富士では走れませんでしたが、その悔しさもバーレーンで晴らしつつ、いいレースがしたいですね」と一貴。
「ル・マンでは勝てませんでしたが、チャンピオンの可能性は残っているので、残り2戦、しっかり優勝を目指して、7号車といい戦いをして、チャンピオンを獲れるよう頑張っていきたいです」
今回のレースのポイントとしてふたりが挙げるのが『暑さ』と、そこから来るタイヤへの負担をどうケアするか、という点だ。トヨタが今季投入したル・マン・ハイパーカー(LMH)、GR010ハイブリッドはバーレーン・インターナショナル・サーキットでは初めての走行となり、走ってみなければ分からないことが多い。
「今回、いつもより開催時期が早いせいか、非常に暑いです。とくに第5戦に関しては昼間のレース(現地時間11~17時)となるので、そういう意味ではタイヤのマネジメントが非常に懸念されるところですね」と一貴。
「路面も、表面が決してスムーズなわけではないので、とくにリヤタイヤのデグラデーションは厳しいんじゃないかと思っています。そこが一番難しいところになると思います」
可夢偉もまた、リヤタイヤを守る必要性について触れ、「レース中にはしっかり、クルマだけでなく運転側でも合わせていきたい」と展望を語る。
「リヤは高速コーナーでも、低速コーナー(立ち上がり)のトラクション側でも、どちらでも発熱しやすい。フロントなら話が違うけど、リヤについては僕ら(ドライバー)ができることは『全コーナー、丁寧にいく』しかないです。簡単に言うと、1回でも(タイヤを)滑らしたら終わり、みたいな気持ちでいくしかない」
第3戦モンツァ、そして第4戦ル・マンでも決勝レース中に発生した燃料系統のトラブルの原因と対策についての質問が出ると、可夢偉は次のように現状判明していることを説明した。
「おそらくは原因が分かりつつあって、多分こうだろう、という対策もしてここには来ています。まだ走っていないので100%とは言い切れませんが、ほぼ原因は分かったようです」
「燃料タンク内には、Gとかで燃料が揺れて偏ったときに、ガソリンが来ない(吸えない)のを防ぐために『バッファー』というものがあるんですけど、そのバッファーが走行中ガソリンがなくなってきたときに倒れてしまい、倒れたバッファーが振動やGで擦れ、その擦れたバッファーの材料がガソリンに流れていき、それがおそらくフィルターに詰まった、というのが原因らしいです」
燃料タンクの構造は変えられないため、今回はそのバッファーの固定方法を変更してレースに臨んでいるという。
バーレーン2連戦はグリッケンハウス・レーシングが欠場しており、「心の底から寂しいです」(可夢偉)、「相手は多いに越したことはないですからね」(一貴)と複雑な心境もあるようだが、トヨタの2台は酷暑のなかでタイトルをめぐる熱いレースを繰り広げてくれそうだ。
WEC第5戦バーレーン、走行初日フリープラクティス1のセッションは、日本時間10月28日(木)21時30分にスタートする。