2021年10月28日 18:51 弁護士ドットコム
長時間労働が原因の過労死と認定された男性会社員(当時40)の遺族が、会社と社長に計約7200万円の損害賠償を求めていた裁判の判決が10月28日、東京地裁(金澤秀樹裁判長)であり、会社側に約1100万円の支払いが命じられた。
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訴えられたのは、バッグやアクセサリーを製造するアパレル企業「エスジー・コーポレーション」(東京都墨田区)とその社長。
判決などによると、亡くなった男性は中国の外注先工場との交渉・製造管理などを担当。2015年11月に致死性不整脈で亡くなり、向島労働基準監督署が2017年8月に労災認定した。
裁判所は、男性のパソコン記録などをもとに、遺族側の主張通り、亡くなるまでの半年間に月約77時間~127時間の残業があったと認定。会社側が、男性の長時間労働を認識しながら、適切な措置をとらなかったと判断した。
判決を受けて、男性の妻は「私たちの主張通りに夫の勤務状況を裁判所から認められ、会社と社長の責任が認められたことで、夫の無念を晴らすことができたと思います」などとコメントした。
エスジー・コーポレーションは「判決を確認できていないので、コメントできない」と話した。
遺族側代理人によると、判決の認定内容からすれば、本来は6000万円ほどの賠償金が認容されていたと考えられるという。そうならなかったのは、男性の死後、子どもの学資ローンなどの支払いが困難になり、遺族が相続放棄をしていたことにあるという。
たとえば判決は、男性の逸失利益を約5500万円と認定している。
通常であれば、この金額を遺族が相続するが、今回は相続放棄しているため、男性の生活費などを控除して、半分の約2800万円を遺族の扶養利益喪失額とした。慰謝料も、男性分は相続されないため、妻と娘分を合わせた約400万円にとどまった。これらから遺族補償年金分などを差し引いた約1100万円が認められたというかたちだ。
男性の妻は「死亡届などの手続きでバタバタしているところに、支払いの催促が続いたので相続を放棄してしまった。自分がしたことなので仕方がないと諦めている」と話す。
一方で、代理人の早田由布子弁護士は「労災は調査に時間がかかることも多い。認められるかもわからないのに、相続放棄ができる熟慮期間が3カ月というのは短い。そういう制度を前提として、損害額を削るあり方はどうなのか」と疑問を呈した。
控訴するかどうかは話し合って決めるという。