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DOBERMAN INFINITYが語る、シングル初のバラードにこめた思い「これも攻めの姿勢」

2021年10月26日 15:11  リアルサウンド

リアルサウンド

DOMERMAN INFINITY(写真=石川真魚)

 AK-69とのコラボ曲「Shatter」を皮切りに、今年9月から始まったDOBERMAN INFINITYの3カ月連続リリース。その後、10月に発売された初のライブ映像作品『iii -three-』に続き、ラストを飾るニューシングル『あの日のキミと今の僕に』が到着した。新曲はシングル初のバラードで、尚且つ、夏のイメージが強い彼らが初めてウィンターソングに挑戦した意欲作だ。DOBERMAN INFINITYはデビュー3周年を迎えた今年、2月のホールツアーや8月の主催フェス、さらにミニアルバム『#PLAY』など、怒濤の攻勢を仕掛けてきた。3カ月連続リリースの意図と新曲の制作背景を語ってもらうと同時に、パワフルに活動した今年1年の活力源も振り返ってもらった。(猪又孝)


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■ウィンターバラードへの挑戦


ーー新曲「あの日のキミと今の僕に」は3カ月連続リリースの締めになる作品ですが、そもそも今回の連続リリースはどんな意図から始まったんですか?


GS:3カ月連続となると常に情報を発信し続けることができるなと思って。そういう狙いはありましたね。


ーー企画を立ち上げた段階で、今回の曲の概要は決まっていた?


GS:冬の曲、クリスマスソングを作ろうというのは決めてました。それがゴールだと。1発目はAKさんとの曲で、DOBERMAN INFINITY(以下DI)の軸であるヒップホップをしっかり押し出して、その次に幕張のライブを見ていただくことで自分たちがどういうアーティストかを知ってもらう。そのあとにこの曲を出すことによって、さらにDIの可能性や“All Round HIP HOP”な部分を提示できるんじゃないかと考えたんです。


ーー今年は2月のホールツアーから始まって、毎月リリースやライブがある状況でした。そんな中での楽曲制作はキツかったんじゃないですか?


P-CHO:スケジュール的にキツイっていうのはあんまりなかったですね。


SWAY:ただ、今回の曲に関しては、予定より制作に時間がかかっちゃったんで、そこでのキツさはありました(笑)。


GS:まず、夏に冬の曲を作るっていう経験がなくて。これまではスケジュール的にもパツンパツンで、リリース直前に曲を制作することが多かったんで「夏に冬の歌を作るなんて新鮮でいいですねー」とか言ってたら、結局できあがったのはギリギリ、リリース直前やんけっていう(笑)。けど、それだけ1曲に対して熱意を持って取り組んでいたっていうことなんで、そういうふうに書いといてください(笑)。


P-CHO:でも実際そうやったしね。


ーー「あの日のキミと今の僕に」の曲作りはどんなふうに始まったんですか?


GS:冬といったら正月じゃなくてクリスマスというイメージがやっぱりあって。とはいえ、「クリスマスを歌おう」というのはどちらかというとカップリング曲「Your Santa Claus」の方が強くて、こっちは「冬の恋愛を歌おう」という中で、クリスマスは切っても切れない行事だから、それを絡めて冬の恋愛を表現していこうということになったんです。


ーー世の中にごまんとあるクリスマスソングとの差別化はどう考えましたか?


SWAY:この曲では時間の経過とともに変化する2人の心情を描きました。4年前、2人がまだフレッシュで何をしていても楽しかったところから物語が始まって、男は東京という場所に刺激を受けて彼女のために仕事も頑張ったつもりが、彼女のほうはそれによってなかなか会えない寂しさを感じながら過ごしていたっていう。一緒にいてくれるだけで良かった彼女と、東京の華やかなクリスマスに憧れた男との4年後のズレっていうのが良いかなと。


ーーそういう時間の流れを丁寧に描くことにこだわった?


KUBO-C:そうですね。あとは恋愛に対する男女の価値観の違いとか。


P-CHO:男なら考えると思うんですよ、好きな子のために頑張るっていうのは。


ーー頑張って稼いでちょっと高いものを買ってあげようとか。良かれと思って頑張ったりする。


P-CHO:そう。だけど、そのために費やす時間が増えると、彼女と会う時間が反比例して減っていく。そのズレが別れを生むっていう。


GS:愛し方の違い、なんですよね。


ーー先程、「制作に時間がかかった」とありましたが、どんなところに苦心したんですか?


SWAY:今回はJeff Miyaharaさんの自宅スタジオで一緒に作らせてもらったんですけど、最初にサビの最後の<Goodbye>のフレーズができあがってたんです。


KUBO-C:その<Goodbye>がメッチャいいなぁってなってたんで、そこはブラさないでいこうと。


SWAY:だから、何をどう書いたとしても<Goodbye>で落とさないといけない。そこにメチャメチャ手こずって「どう落とします?」みたいな。


GS:あと、最初は4年前と1年前と現在っていう3つの時間軸だったんです。だけど、それだとストーリーを追っていっても、主人公の男性が本当に思っていることをなかなか掴めないねと。サビも最初は全然違う歌詞で、「これだとこういう男性像しかイメージできなくない?」「これって彼女のことをそんなに思ってる男性かな?」とか、全員、物足りなさを感じていて。リリックを書くときは、架空の主人公を5人それぞれの観点でイメージするので、その主人公が最終的にどういう男性で、彼女のことをどう思ってるかっていうのをひとつにまとめなきゃならない。尚且つ、その男性が彼女に対して何と発するかっていうところまで追い込もうと。そこを統一させるのにメチャクチャ時間がかかったんです。


ーー5人がイメージする男性像をカチっと合わせないとブレてしまうと。


P-CHO:そう。全員がこの曲の“僕”になりきれたときの言葉がいちばん強いと思うから。


SWAY:そこを詰めに詰めましたね、今回は。


KUBO-C:もう詰め師でした(笑)。


■バラードをやるタイミングはここがベストだった


ーー結果、ヴァースは時間経過を説明するストーリーテリングで、サビは主人公が思いを吐露するリリックの構成になっています。つまり、サビを歌うKAZUKIさんだけ視点が違う歌詞になっていますが、レコーディングではどんなところを大切にしましたか?


KAZUKI:最後は<Goodbye>なんですけど、直前で<I love you>と言ってるんです。それってどうなの? 好きなのに<Goodbye>って、じゃあどうやってその間の感情を埋めてくの? っていう。そこを考えました。主人公の男性はクリスマスになるとどうしても相手のことを思い出してしまう……<Goodbye>と言いながらこの主人公は本当に相手のことを忘れられているのか? っていうところがあると俺は思って。だけど、いつまでも立ち止まっているのも情けないし、っていうところで<今日だけはキミのことを想っていてもいいですか>っていうフレーズが<Goodbye>に繋がってくるだろうと。そういうふうにちゃんと頭の中で主人公の気持ちやそのときの風景を思い描きながら歌いました。だから、レコーディングのときは歌詞を全部自分の中に取り込んで、歌詞を見ずに今回歌ったんです。


ーーポイントは、そのサビの「ですます」口調ですよね。


KAZUKI:そうなんですよ。「いいですか?」はメンバー間で物議を醸したところなんです。俺は正直、大丈夫かな? って思ってて。


ーーグループのイメージ的に?


KAZUKI:それもあるし、曲的にも。


SWAY:自分的にも?(笑)。


KAZUKI:自分的にですかね、いちばん引っ掛かったのは(笑)。俺、「ですか」って歌えるかなって。


GS:仕事をすごい頑張ってる人間が、<今日だけはキミのことを想っていてもいいですか>って言うのも、その男性のイメージに合ってるのかな? っていうのもあったよね。


ーーでも、その違和感がこの曲のフックになってますよね。


KAZUKI:そこなんですよ、まさに。


SWAY:それくらい強烈な印象を与えるフレーズだと思うんです。本当、語尾の言葉ひとつで、男性の性格が変わってきちゃうから。


GS:でも最終的には、それだけ仕事を頑張ってきた男性がサビでこういう口調になるくらい彼女のことを思ってたっていう。その落差がいいなと。


ーー相手に対する敬意も感じられますしね。


KAZUKI:そう。敬意があるんですよ。変にかっこつけてないし、懺悔感もある。歌詞ができたあともいろいろ考えたんですけど、これに勝る言い回しはなかったですね。でも最初はホント、「大丈夫かな?」と思いました(笑)。


ーー「ですます」口調もそうですが、そもそもシングルでバラードは初めてですよね。そこもDIのイメージとギャップがあるものだと思います。


P-CHO:過去にバラードシングルをやろうかっていう話は出ていたけど、そういうのは勝負時にやりたいよねって言ってたんです。それが今なんじゃないかと思ったんですよ。3カ月連続リリースの締めを飾る作品でもあるし、デビューから3年を経てもう1個殻を破ったドーベルマンを見せるタイミングでもある。バラードをやるタイミングはここがベストなんじゃないかと満場一致で決まりました。


GS:強烈なパンチの連続ってことですよね。AKさんとヒップホップをがっつりやって、DVDという今まで出してない作品を出して、やったことのないバラードをやってっていう。常にフックとなるものを提示して行こうという、今の自分たちの気合いの表れでもあると思ってます。


SWAY:あと、今回は2曲しか入ってないシングルで、クリスマスソングが2曲あるっていう。これも攻めの姿勢ですよ。


KUBO-C:逆に攻めてるんでね、これ。普通どっちかは違うテーマで行くだろと。どっちもクリスマスで行くか? っていう(笑)。


ーーその2曲目「Your Santa Claus」は、どんなイメージで作ったんですか?


GS:これは(1曲目と)真逆で、ハッピークリスマスですね。


P-CHO:ハッピーなクリスマスを楽しんでいるところに俺たちが行くぞ、みたいな。「ドーベルサンタが会いに行くよ」みたいなイメージはありました。歌詞にはユニークな言い回しが多かったりするんですけど、KAZUKIがそういうワイワイしたイメージをスッと2人きりの世界に狭めてくれる役割を担っていて、そのバランスがとてもいい曲になったなと思ってます。


ーー曲調には懐かしい雰囲気がありますね。


SWAY:この曲ではニュージャックスウィングを意識しました。今の若い人が聞いたらニュージャックは新鮮かもしれないし、DIのフィルターを通してニュージャックをやりたくて。なんかニュージャックと冬は相性が良いっていうのが自分らの中であるんですよね。


ーービートがスウィングしてるから、パーティーはパーティーでもスタイリッシュで大人っぽい感じがありますよね。バカ騒ぎって感じじゃない。


GS:クールですね、かなり。いつもの俺たちの感じだったらサビがいちばんパーティーなんですよ。でも今回はヴァースをパーティーにして、サビをクールにかっこよく決めるっていうふうにしたんです。そこが冬っぽさかなと(笑)。


■挑戦していくことでもっと夢が現実的に見えてくる


ーーそろそろ2017年も終わりますが、今年はハードな1年だったと思います。それを乗り越えられた活力源は何だったと思いますか?


SWAY:前回出したミニアルバムのタイトルが『#PLAY』でしたけど、PLAY=遊びが仕事の活力になりましたね。地方にライブに行ったときに打ち上げを兼ねてメンバー同士で飲みに行ったりとか。そうすると二日酔いになりながら「また明日から頑張ろう」みたいな。それが思い出になるし、笑い話にもなるし。


ーー特に印象に残ってるPLAYは?


KAZUKI:愛媛の日はメッチャ楽しかった。


KUBO-C:うん。クイック飲みっていうのが今、メンバーの中でブームなんですよ。


SWAY:僕ら最近ハシゴが好きで。現地の知らない居酒屋さんに入って1杯だけ飲んだら絶対出て、次の店に行くっていう。それで数軒ハシゴしていくんです。で、一周して、「やっぱあの店良かったよね」っていうところに戻るんです。札幌で初めてやったら結構面白くてブームになったんですよ。


ーーその他にモチベーションを維持する源になったものはありますか?


GS:あとは、やっぱ上を見たこと、先を見たことですかね。夢を掲げて進んでいる中で、他の活躍しているアーティストを見て、常に挑戦心を持てたことが活力になったように思います。負けてらへんっていう思いというか、自分たちはまだまだや、っていう思いが攻めの姿勢に変わったと思いますね。


SWAY:それはありますね。


GS:自分たちが描いた理想では、もっと早い段階でアリーナツアーを実現させてたんです。だけど、現実との差を感じるところはありましたし、楽曲にしても自分たちの思い通りに曲が届かなかったりすることもありましたし。毎回何かを狙ってやってるんですけど、それを完全に100%ど真ん中に刺しきれないっていうことは、自分たちの考え方や見方を変えていかなきゃならないし、そうして挑戦していくことでもっと夢が現実的に見えてくるのかなと。同じ場所に留まっていると同じ視点でしか物事を見れなくなる気がするんです。だったら今回のようなバラードもちゃんといいタイミングでやるべきだと思って、今回出しました。そういう意味では、いろんな視点や考え方をもって目標に向かっていけた1年だったし、「まだまだや! まだまだ! まだまだ!」っていうのが先に向かう一歩になっていたなと改めて思いますね。