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トモコイズミとCFCLが受賞、2021年「毎日ファッション大賞」の表彰式開催

2021年10月25日 21:31  Fashionsnap.com

Fashionsnap.com

写真左から)スノーピーク代表取締役副社長 高井文寛、山縣良和、小泉智貴、高橋悠介、鈴木三月

Image by: FASHIONSNAP
2021年度「第39回毎日ファッション大賞」の表彰式が10月25日の今日、恵比寿のEBiS303で開催された。大賞は「トモ コイズミ(TOMO KOIZUMI)」の小泉智貴、新人賞・資生堂奨励賞は「シーエフシーエル(CFCL)」の高橋悠介、鯨岡阿美子賞はここのがっこう、話題賞は「スノーピーク(Snow Peak)」が受賞。また故・高田賢三にファッション文化特別賞が贈られた。

 大賞を受賞した小泉は、千葉大学在学中の2011年にトモ コイズミをスタート。2019年に自身初となるファッションショーをニューヨークで開催し話題を集め、同年毎日ファッション大賞 選考委員特別賞を受賞。2020年LVMH プライズ優勝者の1人に選ばれ、2021年には東京オリンピック開会式で国歌斉唱の衣装を担当した。ブランド立ち上げ以来一貫した独自のラッフルフリルドレスで世界を魅了したことや、他業種との積極的なコラボレーションなど、次世代を担うデザイナーに新たな目標を提示したことが評価され、今回大賞に選ばれた。小泉は「日本では特に需要が少ないコスチュームデザイナーとして大きなドレスばかりを作り続けてきた。ある種メインストリームのスタイルではなかったし、キャリアは平坦な道ではなかった。しかし10代の頃に感じたファッションへの感動を信じ、デザイナーの道をこだわり続けた」と10年間を振り返り、「デザイナーを目指すきっかけとなったジョン・ガリアーノ(John Galliano)との協業や、世界で一番着て欲しいと思っていた歌手ビョークの着用など、2021年は願ってきたことが全て立て続けに叶う年になった」と喜びを噛みしめた。

 また後進デザイナーに対し「今回、自分の大賞受賞が独自性のある活動を模索する次世代のファッションデザイナーにとって一つの道筋になればと願っている。自分自身もファッションデザイナーとして多様なあり方を体現していきたい」と話し、授賞式後に行われたここのがっこう受講生とのトークセッションにも参加。「同じファッションデザイナーとして活動しているが、違う方向性で物作りをしているシーエフシーエルをどのように思うか」という学生からの質問に対し「全然違うことをやりながらも『得意なことをひたすらやり続けている』という点においては共通していると思う。それはデザイナーを目指す人たちにとってヒントになるかもしれない。あらゆるものを作る必要はなく『これを届けたい』というものが一つあれば良い」とアドバイスした。

 高橋は1985年東京都出身。2010年文化ファッション大学院大学を修了し、イッセイ ミヤケに入社。当時27歳の若さで「イッセイ ミヤケ メン(ISSEY MIYAKE MEN)」のデザイナーに抜擢された。約6年半にわたり同職を務め、2020年2月に独立。自身のブランド シーエフシーエルを立ち上げた。SDGsに対して真摯に向き合い、再生繊維を取り入れたコンピュータープログラミングニットとして結実させ、独自の立ち位置を確立していることなどが評価された。高橋は「ブランドを創業した翌月3月からコロナ禍によるパンデミックの影響が国内でも色濃くなり、ブランド初ローンチとなった今年2月の新宿伊勢丹のポップアップも緊急事態宣言下で行われ、コロナ禍の影響を受けながらバタバタした1年を過ごした」と振り返り、「いよいよ来年からパリに向けて本格的に動き出したい」と今後の展望について語った。

 シーエフシーエルは、授賞式後に行われたプレゼンテーションでは映像作品を披露。同ブランドが活用している新潟県の紡績工場に焦点を当て、新潟の自然豊かな情景と工場の無機質さの対比を表現。「ファッションショーは華やかだが、ものづくりの背景が見えづらい」と映像作品を制作した経緯を説明し「ものづくりにおけるかっこよさも、服を通して同時に伝えていきたい。国産のものづくりを支えていく役割がデザイナーにはあるはず。日本のものづくりが世界に通用するという付加価値をつけるために、良い服を作ることがデザイナーとして腕の見せ所だと考えている」と話した。


 鯨岡阿美子賞の「ここのがっこう」代表 山縣良和は、2014年に自身のブランド「リトゥンアフターワーズ(writtenafterwards)」で特別賞を受賞。個々の持てる力を伸ばすという一貫した教育方針に基づいた「デザインの本質を学ぶ場」としてこれまでに多くの優れたデザイナーを輩出しており、今回次世代のファッション界を担う人材育成が評価された。山縣は「講師や歴代の受講生みんなでもらった賞だと思っている」とし、「ファッションが文化として日本国内に根付いて欲しいという想いで13年前に立ち上げたが、まだまだ道のりは長いと思っている。受賞を光栄に思っていると共に今後も責任を持って自分がやるべきことを邁進したい」とコメントした。

 ファッション文化特別賞を贈られた故・高田賢三は、新型コロナウイルスに伴う合併症により2020年10月に逝去。若手デザイナーや若者に夢を与え続けた影響力と日本のみならず世界のファッションシーンを牽引した功績が讃えられた。壇上には、高田と長年ビジネスパートーナーであった鈴木三月が登壇。2019年に80歳を迎えた高田の誕生日パーティーでのエピソードを話し「今度は88歳の誕生日パーティーを盛大にやろうと約束していた」と故人の偲び、「ファッションで日本とフランスを繋げた高田賢三が大事にしていたのは、日本の伝統文化を世界へ発信すること。そして、次世代を担うデザイナーやアーティストが世界にどんどん出ていくことだった」と後進にエールを送った。

 このほか、話題賞を受賞したスノーピーク代表取締役副社長 高井文寛が登壇。「一般的にはアウトドアブランドとして知られているが、我々のミッションは自然思考のなかでライフバリューを提案し実現すること。今後も『衣食住働遊』と領域を広げ、道具やアパレルを超えた価値観を届けたいと考えている」とコメントした。