「基本的にはレース中は自分のレースのことしか考えていないですけど、Twitterにも書いたように今回のヘルメットのデザインは日本ファンのみなさんやホンダのF1ラストイヤーへ対する気持ちがこもっています」
初めて臨むサーキット・オブ・ジ・アメリカズでのレースに向けた思いを、角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)はそう語っていた。
紅葉したもみじの葉を何枚もあしらった日本画のようなデザインのヘルメットは本来、秋に鈴鹿で行われるはずだった日本GP用に準備していたもの。しかし、コロナ禍により2年連続で中止となった。
角田にとっても母国に凱旋することができず悔しかったが、角田はそれよりもF1を楽しみにしていた日本のファンと、F1ラストイヤーにホームコースである鈴鹿でレースができなかったホンダのスタッフの心中を察していた。
だから、日本GPで使用する予定だった特製ヘルメットをかぶって戦うアメリカGPのレースは自分だけのものでないという思いを強く持って臨んでいた。その特別なレースで、角田は今年一番の走りを披露した。
アメリカGPの舞台であるサーキット・オブ・ジ・アメリカズはタイヤに厳しい。スタートでソフトタイヤを装着したのは、土曜日の予選Q2でソフトを選択した角田と予選6番手のカルロス・サインツ(フェラーリ)のふたりだけ。デグラデーション(劣化)が大きいソフトタイヤを履いてスタートする角田にとっては、状況は簡単ではなかった。
しかし、レースはミディアムタイヤ勢にとっても簡単ではなく、9周目に角田が1回目のピットインをした直後からミディアム勢もピットインするという展開となった。
ソフトタイヤのデグラデーションが大きくなり、1回目のピットストップを早めに行った角田だが、ハードタイヤに履き替えた第2スティントは32周目まで引っ張ることに成功した。
その第2スティントと第3スティントの多くの周回で角田はキミ・ライコネン(アルファロメオ)と戦った。ライコネンはタイヤのマネージメントに定評がある。そのライコネンを向こうに回して、角田は一歩も引かない堂々たるレースを披露した。
「エンジニアとのコミュニケーションもだいぶまとまってきて、それがいい方向に行ったんだと思います」
9位でチェッカーフラッグを受けた角田にとって、今回の入賞は後半戦初。何かよかったのか?
「大きく変えずにちょっとずついろんな改善を行ってきて、それらをうまくまとめてきている感じです」(角田)
第17戦アメリカGPが終わり、今シーズンも残るはあと5戦。もみじ柄のヘルメットを脱いで、ミックスゾーンにやってきて、こう言った。
「これからも一戦一戦、ホンダという心強いサポートがバックについていることを噛み締めながら、走りたいなと思います」
サーキット・オブ・ジ・アメリカズの空には、表彰式の演出で使用された紙吹雪が舞っていた。