2021年10月24日 10:11 弁護士ドットコム
夫から「浮気をしてよい」と言われた女性が、弁護士ドットコムに質問を寄せました。
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相談者は年の差婚をしており、高齢の夫は現在、年相応に悩まされています。穏やかな結婚生活でしたが、その夫から先日、「浮気をしても良い。その代わり家の事はしっかりとやってほしい」と言われたそうです。
女性は公認されたとはいえ、実際に浮気をしたら離婚事由になるのではないかと考えています。配偶者の同意があっても不倫は法的に問題があるのでしょうか。長瀬佑志弁護士に聞きました。
——配偶者から同意があっても、不倫をすれば離婚理由や慰謝料請求といった問題になるのでしょうか
結論から言えば、浮気について他方配偶者から同意があった場合には、離婚理由として主張したり、慰謝料請求をしたりすることは難しいと考えられます。浮気に至る前に、夫から同意があったということは、妻にとって有利な証拠になるといえます。
この点、浮気について他方配偶者から同意があった場合、裁判上の離婚理由である「不貞行為」(民法770条1項1号)には該当しないと解説する文献があります(「離婚調停・離婚訴訟」【三訂版】)。
また、東京高判平成4年12月24日(判例タイムズ臨時増刊852号124頁)は、妻に不貞行為があったものの、夫がこれを宥恕し(編集注:許すこと)、通常の夫婦関係に戻り、その後破綻するに至ったという場合に、妻からの離婚請求は許されると判断しています(一旦宥恕した夫が妻の不貞行為を理由に妻の有責性を主張することは信義則上許されないと判示しています)。
——今回の相談例ではありませんが、病気な年齢を理由に一方が性的関係を持てない夫婦の場合でも、一方が不貞をしたら慰謝料や離婚理由となってしまうのでしょうか
性交不能が婚姻関係を継続し難い重大な事由(民法770条1項5号)があると判断した裁判例(最判昭和37年2月6日民集16巻2号206頁)に照らすと、性交不能によってすでに婚姻関係が破綻していたといえるのであれば慰謝料や離婚の理由にはならないと考えられます。
もっとも、婚姻関係の破綻原因が性交不能以外にあるのであれば、不貞が慰謝料や離婚の理由にはなりうることにはご留意ください。
【取材協力弁護士】
長瀬 佑志(ながせ・ゆうし)弁護士
弁護士法人「長瀬総合法律事務所」代表社員弁護士(茨城県弁護士会所属)。多数の企業の顧問に就任し、会社法関係、法人設立、労働問題、債権回収等、企業法務案件を担当するほか、交通事故、離婚問題等の個人法務を扱っている。著書『企業法務のための初動対応の実務』(共著)、『若手弁護士のための初動対応の実務』(単著)、『若手弁護士のための民事弁護 初動対応の実務』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が書いた契約実務ハンドブック』(共著)、『現役法務と顧問弁護士が実践している ビジネス契約書の読み方・書き方・直し方』(共著)、『コンプライアンス実務ハンドブック』(共著)ほか
事務所名:弁護士法人長瀬総合法律事務所
事務所URL:https://nagasesogo.com