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キャバクラの女性従業員は「労働者」、さいたま地裁で和解成立 店が残業代含む「解決金」支払い

2021年10月14日 15:21  弁護士ドットコム

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キャバクラ店で働いていた女性が、店に対して残業代などを請求していた裁判は、さいたま地裁で和解が成立した。


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店側はこれまで「業務委託契約のため、残業代等は発生しない」という主張を続けたが、女性の「労働者性」を認める内容を和解条項に盛り込み、未払い分を解決金として支払うことが定められた。



女性側は10月14日、都内の会見で「キャバクラ店で働く女性は、労働者としての待遇を受けられないことが多い。労働者性が認められたことで、残業代や、深夜割増賃金なども会社が支払うべきだと明確にされた」とした。



●「業務委託契約」から一転、店は労働者性を認める

2016年5月から埼玉県内のキャバクラ店で働いていた女性(30歳・県内)は、店をやめた2019年3月、労働組合「キャバ&アルバイトユニオン(OWLs)」に加入し、働いていた期間の残業代などをもとめて、店を運営する会社(千葉県)と団体交渉をおこなった。



同12月に労働審判を申し立て、2020年3月からさいたま地裁での訴訟に移行した。



店側は、業務委託契約のため、女性は労働者ではないから、残業代等は発生しないという主張を続けていたが、2021年7月30日、和解が成立した。



●和解による成果

解決金は非開示だが、女性は裁判で約1100万円を求めており、「納得できる金額」が支払われたという。



和解において、店と女性との間の契約が労働契約だったことが確認された。



また、和解条項では、女性が求めていた(1)残業代、(2)深夜残業代、(3)早上がり分の賃金、(4)控除された費用(送り代、厚生費、修繕代)の支払いも認められた。



(3)の「早上がり」とは、シフト上、終了時間まで入る予定だったのに、客の入り具合によって、時間前に勤務終了させられることをいう。早く終了した時間以降の時給まで支払われることになった。



(4)の「厚生費」(1日1000円)は、店のトイレットペーパー・衣装のクリーニング代・マウスウォッシュなどの費用。「送り代」(1回1000円)は、店の用意した運転手付きの車で帰宅した際に控除されていたもの。また、給与の総支給額の5%が「修繕費」として控除されていたが、これも返還されることになった。



ただし、返還が認められたのは、2016年8月以降のものとなる。



●コロナの影響もあって和解した

和解であっても、キャバクラ従業員の労働者性が認められたことの意義は大きいと女性や代理人弁護士らは強調する。



「水商売=個人事業主。そのように世の中の人も、働く子も思っていると思って、裁判に至りました。



和解というかたちですが、労働者性が認められ、厚生費や修繕費や、(店による)早上げの支払いが認められたことが大きい。



本当は判決を出して判例にしたほうがよかったかもしれないのですが、コロナ禍でお店がどう転ぶかわからず、和解しました」(女性)



●キャバクラのユニオンに届く相談



OWLsの田中みちこ共同代表によれば、早上がり分などの支払いがなされないという相談はキャストからよく寄せられるという。



「私自身も水商売で働いています。早上がりは多くの人が経験していて、店に行って2時間で帰されることもあります。そうすると月の収入が半分以下になることもある。早上がりの分が支払われたことは大きい。



個人事業主もいるが、ほとんどのキャストは労働者です。労基法は私たちにも適用されます。あきらめないで相談してほしいと思います」



今回、裁判所から労働者性について肯定的な心証が開示され、和解協議がすすめられた。



山田聡美弁護士は、裁判所が労働者性を肯定したことに「推測するほかないが、店は場所だけ貸しているのではなく、時間管理や、接客対応についてもそれなりに指導していた。そのようなことを総合的に判断したのではないか」とする。



認められた早上がり分の支払いは、「仮に判決になったときに認められるかはケースバイケースだが、ハードルはあるだろう」と話した。