2021年10月14日 09:01 リアルサウンド
小学生や中学生の頃、図書館で読んだ思い出の本といえば何を思い出すだろうか。筆者は、友人と会話をしていると全く別の場所で育ったにも関わらず同じような本を図書館で読んでおり、はっとした経験がある。それも1人だけではない。それぞれの学校ごとに選書の基準は変わり、個性はあるだろうが、多くの学校に共通して置かれている本もありそうだ。
学校の図書館のわずかな漫画コーナーや、シリーズものの児童書コーナーなどには、長年人気を得ている名作が揃えられている。今回は、思わず「私もそれ読んでた!」と言いたくなるような、大人になって読むさらにと面白い、学校の図書館にあった作品を紹介したい。
小学生の頃や、もしかしたら保育園・幼稚園児のころなどに、誰もが一度は開いたことがあるであろう絵本『ウォーリーをさがせ!』。80年代にイギリスで発売されて以来、世界中で読まれ続けているベストセラーシリーズだ。人気のあまり近年では塗り絵なども登場している。
一目見ると忘れられないメガネにボーダーTシャツの主人公やその仲間たちを、人混みの中から探し出す。さまざまな場所を舞台に描かれるウォーリーシリーズだが、筆者のお気に入りは『タイムトラベラーウォーリーをおえ!』。石器時代から未来まで、タイムスリップしたウォーリーがの世界は眺めているだけで旅をしている気分に。子どもから大人まで、たまに開くと思わず夢中になってしまうシリーズだ。
誰もが知るであろう国民的漫画のひとつ、『ブラック・ジャック』は小学校の図書館で見かけたという人が多いのではないだろうか。無免許の外科医ブラックジャックが数々の困難な病を治していくストーリーだ。天才的な手術の腕と引き換えに、莫大な治療費を請求するブラック・ジャック。正統派ヒーローとは異なる、その捻くれたかっこよさに惹かれる人も多くいることだろう。
医師免許を持つ手塚治虫が描いた本作だが、病気や治療法に関してはデタラメも多いという。しかし、命とは何なのか、医療とは何のためにあるのかなど、重要なテーマを示してくれる作品と言えるだろう。今思えば、小学生には少し刺激が強い描写も多いように感じるが、大人になったいま読めば、ドラマティックでシリアスな本作に引き込まれてしまいそうだ。
手塚治虫作品で図書館にあった本といえばもうひとつ、『火の鳥』だ。1954年から1986年という長い期間、連載が続いた大作である。不死鳥・火の鳥の血を飲めば永遠の命を得ることができるという設定のもと、古代から未来まで、人々と火の鳥との関わりと苦しみを描いた作品だ。
永遠の命が素晴らしいのではなく、限りある命をどう大切にするかが描かれる。命や環境の問題、AIとの関わり方など現代にも通じる問題を提起してくれる。この作品が面白いのは、それぞれのストーリーももちろんだが、その構成だ。物語のスタートである黎明編とラストである未来編が先に描かれ、その後で途中の時代が描かれている。それぞれの編ごとに完結しているが、どの順番で読んでもつながる部分があり、少し視点を変えて読んでも面白いのだ。
児童書として長年人気を誇るのが『わかったさんのおかしシリーズ』と『こまったさん』のシリーズだ。不思議な事件に巻き込まれながら、わかったさんとこまったさんが美味しそうな料理やお菓子を作って問題を解決していくシリーズだ。
巻末には、それぞれの巻で作られた料理やお菓子のレシピも掲載されている。子どもでも作れるようなわかりやすい説明がされているので、家族で作ってみたりするのも楽しそうだ。筆者も図書館から本を借りてわかったさんのアップルパイを作ろうとしたのを覚えている。今見てもかわいい、わかったさんとこまったさんの鮮やかなコスチュームも魅力的。大人でも、家の本棚に置きたくなるようなシリーズだ。
比較的新しい作品だと、『都会のトム&ソーヤ』も上げておきたい。20代の人は特に、小学校や中学校時代に手に取ったことがあるという人も多いのではないだろうか。2003年から刊行されているシリーズ作品で、主人公は平凡な成績ながらもサバイバル術に長けた内藤内人と、大財閥グループの跡取りで頭脳明晰な竜王創也の中学生2人組だ。究極のロールプレイングゲームを作ることを目標に冒険を繰り広げる。
内人と創也のテンポの良い会話と、いくつも張り巡らされた仕掛けにみるみるうちに引き込まれてしまうだろう。内人のセリフには、たびたび内人の祖母の言葉が登場する。これが大人にとっても、響くセリフばかり。冷静さと優しさを持った推理小説を読みたい時にはおすすめだ。
幼い年齢の子どもが読む本だからこそ、学校の図書館にある本は、読むものを引き込み、素敵な視点を与えてくれる作品に溢れている。たまには昔読んだ懐かしの作品に立ち返ってみるのはいかがだろうか。