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1匹数千円!?で高額取引される珍メダカ 副業としても注目「メダカビジネス」の現状とは

2021年10月13日 06:10  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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童謡「めだかの学校」にあるように、かつては身近な川にいたメダカ。環境省が野生種を「絶滅の危機が増大している種」と指定する一方で、観賞魚としての飼育・品種改良がブームになっている。今年2月には俳優の木村拓哉さんが飼い始めたこともSNSで話題となった。メダカを飼育・販売するビジネスや副業も注目を集めている。

メダカに関する総合情報サイト「めだかやドットコム」を運営する青木崇浩氏に、副業としてのメダカビジネスについて聞いた。(取材・文:伊藤 綾)

メダカ人気の一因は飼育のしやすさ



「基本的には水と容れ物、メダカさえいればいいので元手資金はほぼ掛かりません。最初にどんなメダカを仕入れるかにもよりますが、80リットルのトロ舟も2000円ぐらいで買えるし、世話といっても主に一日1~2回の餌やり程度。本業の片手間でメダカを販売し、月数万円のお小遣いを稼ぐ人はたくさんいます」

大学生だった1998年にメダカの飼育を始め、その飼育経験やメダカの情報を2004年からホームページで紹介するようになったという青木氏。現在は八王子市に店舗を構えてメダカや飼育関連商品を販売している。

「『めだかやドットコム』を始めた当時は本当に一部のマニアだけの世界で、メダカに関する専門書もなく、専門店も群馬と広島にあったのみでした。第一次的なメダカブームが始まったのは僕の感覚だと2005年くらいですね。サイトへのアクセス数やBBS掲示板の投稿が盛り上がって、各地でオフ会なんかも盛んに開かれて。かつてメダカは金魚・鯉に続く"第三の魚"と言われていたんですが、5、6年ほど前には金魚や鯉を抜き、メダカのマーケットのほうが大きいと言われるようになりました」

個人のお小遣い稼ぎレベルから、ECや専門店を出したいという人まで、問い合わせは多いらしく、中にはアクアショップの経営者がメダカ専門店に鞍替えしたいといった相談を受けることもあるという。

そんなメダカ人気の背景としては、日本の自然環境や住環境に合った飼育のしやすさがあるようだ。

「フナ科の系統は例えば金魚でも長生きすると30センチくらい大きくなりますが、メダカは2~3年の寿命なので15センチぐらいの水槽でも、きれいな水と陽の当たる環境さえあれば飼える。隠れ場所を作ると良いんですが、場所もあまり取らないし、日本に野生で生息する魚なのでヒーターなども不要。水もカルキ抜いた水道水でOKです」

希少さを表す固定率が成功の鍵

他の観賞魚などと比べて入口が広い一方、メダカならではの魅力やオタク心をくすぐる要素もあるという。

「金魚や鯉には何百年と長い歴史がありますが、メダカの品種改良はここ15年ほどの歴史。メダカは3ヶ月で大人になって卵を産むんですが、世代交代が早く、それだけ新種にも出会いやすい。数年前にはラメが出てきて話題になったり、今はヒレの長い種類が新しく現れたり、毎年のように新しい表現のメダカが現れています。世代の移り変わりを楽しめる点も他のペットや観賞魚と違う文化ですね」

夏休みの研究などで子どもが飼い始め、最終的に父親が夢中になるパターンも少なくなさそうだ。

大人の趣味として浸透した結果、近年は高級メダカと呼ばれる万単位で取引される品種も現れ、過去には盗難事件なども発生している。

「メダカの価格は表現の新しさと固定率で決まります。同じ親から100匹育てて何匹の子が親と同じ特長を引き継ぐかという確率を固定率と言いますが、これが低いほど数を増やすのが難しく、価格は当然上がります。9割以上が親と同じような特長を引き継ぐ種類なら100~500円が相場ですし、遺伝や環境でも変わりますが、固定率20~30%の「ダルマメダカ」(通常より体長が短い品種)は常に2000~3000円の値が付きますね」

将来的に販売を視野に入れてメダカを飼育したい人は、固定率をしっかり知ることが大切なようだ。

「柄物も高値がつきやすく、例えば3色錦など柄が良いメダカに"ダルマ"や"ラメ"といった表現が重なるほど、数ができにくいので価格は一気に高くなる。逆に最初は非常に新しい表現で10万円の値がついた品種でも固定率が高ければ、1年、2年と時間が経つにつれて1000円前後で取引されることもあります」

ヤフオクとインスタで取引

「こうした基本的なポイントを抑えていけば、飼育や繁殖自体はそれほど難しいことではないので、誰でも副業にしやすいと思います。お小遣い稼ぎを考えているなら、最初は信頼できる専門店などで相談しつつ、固定率の低いメダカで2~3種類に絞って、小さく始めていくといいでしょう」

現在、青木氏は店舗での対面販売に限ってメダカを販売しているが、ヤフーオークションで生体の取引が可能になった2000年代後半以降はヤフオクで取引されることが多いそうだ。また、ここ1年ほどはインスタで情報発信する愛好者も急増しているという。

「酸素を入れて発送すればメダカは2~3日保つので、北海道でもどこへでもメダカは販売できます。もちろん生き物なので運送会社との契約など、一般的な商材と違う部分もありますが、SNSを使った販売や営業の戦略などは同じです。お店も個人も関係なくビジネスできる時代ですし、歴史が浅い分、しっかりした専門店もまだまだ少ないので、個人の副業レベルでもヤフオクやSNSをうまく使って入り込める余地は十分あります」

最近は「画像と実施に送られてきたメダカと色味や柄が違う」といったトラブルも増えているそうで、販売者には基本的な倫理観も求められる。

「顧客対応も大切ですが、他に副業での注意点としては基本的なことですけど、副業で稼げたからといって、いきなり大きな勝負に出ないことですね。ビジネスとして魅力的な可能性がメダカにあることは事実ですが、市場が成熟していけばより本格的に専門性を身につけて差別化する必要があるので」

室内鑑賞用に水槽一式とメダカをセットにした「めだか盆栽」なる商品を展開している青木氏。メダカ単体の販売も堅調なようだが、特にコロナ禍では自身のバクテリアや水草などの専門知識と特許技術を活かしたこの「めだか盆栽」の販売が伸長したという。

「30万~60万円する商品ですが、法人のお客様を中心に昨年だけで50本ぐらい売れましたね。メダカ愛好者は見せ方の部分にはわりと無頓着というか、バケツとかで飼う人も多いなかで、しっかり水槽の中で世界観を組んで鑑賞するような文化にしていきたいと思って始めた商品なんですけど。副業レベルならともかく、専門店はこうした付加価値をつけていくことが今後より重要だと思っています」