イスタンブール・パーク・サーキットは、角田裕毅(アルファタウリ・ホンダ)にとって初めて走るサーキットだ。
「昨年のF2ではトルコでレースがなかったので、イスタンブール・パークをドライブするのは、今回が初めてです」と言う角田は、いつものように午前中にエンジニアと一緒にサーキットウォークを行っていた。これはドライバーがチームのスタッフと一緒に歩いてコースの下見を行うもので、全員というわけではないが、フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)やセバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)といったベテランでも行っている重要な時間だ。
そのため、メディアはコース上で出会ってもあいさつはするものの、取材はしないことが暗黙の了解となっている。
しかし、今回のF1第16戦トルコGPの木曜日に行われるFIA記者会見で、角田は最後のグループが割り当てられた。スタート時刻は夕方の4時半。その後、各国のテレビ局のインタビューがあり、紙媒体のメディアの囲み時間はその後、午後5時5分からというスケジュールだった。
日本との時差は6時間あるので、取材を終えて原稿を送るのは日本時間で金曜日になってからとなる。「それだと、せっかくの原稿がちょっと遅くなるなあ」と思った筆者は、せめてリアウイングの『ありがとう』についてだけでもコメントをもらおうと、暗黙の了解を破ることにした。
角田がコースマーシャルたちからツーショットのリクエストを受けて、エンジニアと少し離れたのを見計らって近づき、質問すると角田は「ああ……ええと、そうですね……」と言った後、「コーナーが迫っているので」と言って、やんわりと取材を断った。
急足でその場を立ち去る角田に目をやると、その先ではエンジニアが待っていて、角田が追いつくとタブレット端末で何やら説明を開始していた。
その後も路面や縁石を念入りにチェックしていた角田。午後5時5分にミックスゾーンでの取材で再開したとき、まず「サーキットウォークのときは失礼しました」と筆者が謝ると、「いえいえ、こちらこそ、すみません」と言って、角田はインタビューに応じ始めた。
高い集中力を持って臨んだトルコGP初日。角田は久しぶりにトップ10にあと一歩となる11番手を獲得。
「ここは本当にすごいコース。イスタンブール・パークでの最初の2回のセッションをすごく楽しみました」と順調な滑り出しを見せた。