女性管理職比率のアップを経営戦略に置く企業が増えています。私は約20年前に就職したのですが、そのときは男女で役割や賃金に差別はなく、出産前後のことも会社や世の中に考慮されているとばかり思っていました。
しかし、実際出産すると実はそうでもないんだなと感じました。待機児童問題はもちろん、女性の家事育児負担が高すぎる構造に「そりゃ少子化も進むよね」と落胆してしまいました。娘の将来を思うと、20年経った今も、まだまだ過渡期であることに焦りを感じます。(文:ウーマンエンパワープロジェクト 谷平優美)
「派遣さんと若い女性はサポート事務」という期待役割があった
今後も女性管理職を増やすことは喫緊の課題です。今回は9年、子育て女性チームを運営してきた身として、女性管理職を育成するポイントについて書いてみました。
まず考慮していただきたいのが女性に対する期待役割の問題です。私は新人時代、こんな経験をしました。同期男子は最初から営業なのに対して、経営企画に配属され、派遣の皆さんと同じ「電話番とラウンジ受付の接客」が業務シフトに組み込まれていました。
「派遣さんと若い女性はサポート事務」という期待役割があることに違和感を抱いたのは事実です。そこから業務に役に立ちそうなことを色々と提案・実行しているうちに少しずつ周囲の方々に引き上げてもらえ、やっと男性と同じ土俵に立たせていただけた、ということには感謝しています。女性が管理職に多い会社ではありましたが、そんな職場でもこうした期待役割の文化があったのです。日本の多くの女性がこうした違和感・不平等を感じてきているんではないでしょうか。
弊社で女性向けにアンケートを実施した際も、職場で理不尽を感じているというエピソードを多々いただきました。意欲のある人に性別役割の押し付けは失礼です。女性だからという特別扱いや遠慮も同様でしょう。本人の希望や状況を聞きながら平等に機会を与え、男女のバイアスを取り除いた上でしっかりと「期待していることを伝える」ことが大切です。
誰でも参加できる企業文化を作る
次が「押し付けず尊重する」ということです。昔、男性上司が一部の若手女性社員を「女の子ちゃん扱い」するといった、今となってはセクハラとされる行為を堂々と社内でしていてモヤモヤしたことがあります。流す女性と、本当に精神的に参る女性と、逆にそれを利用してうまく世渡りしようとする女性と3つくらいに反応は分かれていましたが、組織内で強い立場の上司へ注意できる人はなかなかいません。
彼らも悪気なく接していたのでしょうが、何か人として尊重されていなく、女性は下に見られているんだな、とモヤモヤした気持ちになってしまいました。今ではハラスメントの意識も進んできていますが、逆に自分も学ばないと無意識にそんな風に誰かを不快にさせてしまっているかもしれない、とアンテナを張ることが一歩なのでしょう。
「あなたってこうなはずだよね」「こうするべきだよね」と押し付けられたり、「私と違うのは変わってる、おかしい」と勝手に定義されるのも誰だって嫌なものです。職場に限らず、家族や友人からだって同じではないでしょうか。
もちろん何でもかんでも自由では秩序が保てないので組織ルールの整備は必要ですが、従来のやり方、慣習を何でもかんでもそのまま踏襲すると居心地の悪い人、制約があって参加できない人が増えてきてしまいます。
例えば、エイエイオーと営業前に号令を言わないといけない体育会系の儀礼を強要する、毎度集まりは飲み会かゴルフ、などもその例でしょう。いま一度、色々な属性の人を尊重して、偏った属性のみにしかハマっていない排他的な文化がないか見直すことをおすすめします。
「いつでも聞いてね」が大事
最後に「適切な仕組みとフォロー」について。自分で道を切り開いてきた起業家や、ハイパフォーマーだった上司は自分も誰にも教わってないから、と丁寧な説明や教育フォローが弱いことがあります。こうした傾向も女性の引き上げには足かせになりがちだと感じています。私も気持ちはわからなくはありませんし、仕組みが成熟していない時期はゆっくり教育する余裕がなく困りました。
ですが市場や事業の状況、その人のタイプ・成長段階によって必要なフォローは変わります。「自分と同じ」を押し付けず、個人個人にあった適切な成長支援が肝だと思います。
私自身は、その後の転職先で知り合った女性の上司・先輩たちが部下に寄り添ってくれるタイプだったので救われました。若いときにそうした女性上司たちに出会えたからこそ、女性の成長を促進するには「仕組みづくり」と、「寄り添って適切なサポートすること」が一番の近道、という思いがあります。
本人が自信がないと言っても、できる人だと思えば機会は提供したい。しかし、マネジメントがよくても仕組みや体制が悪いと続きません。小さな企業は特に大変ですが、最適な業務分担と時間で働ける仕組みづくりが最優先です。心の負担を減らすためできるだけ2人以上のチーム体制にすること、業務を可視化・マニュアル化しておくこと、相談できる先輩をつけて並走してもらうことなどが成長段階では喜ばれました。
その上で、丁寧に説明するとともに1on1で面談をして本人の気持ちをきくことが大切です。単なる丸投げで「立場が人を作るしどんどん現場で経験してね」だけでは、人によっては潰れかねません。経験上、女性には向いてないことが多いので注意が必要です。
「いつでも聞いてね」「いつでも声かけてね」と言っても下の立場からは聞けない・言えないことが多いものです。立場が上の人から引き出してあげないとわからないことが多いものです。
女性の部下の対応がわからない、いまいちコミュニケーションが上手くいっていない、と感じている方がいたら、一方的に伝えたりプロセスを押し付けすぎてないか、チェックしつつ、
「いま、正直困ってることある?」「私はこうなのかと思っていたけどあなたはどう感じているの?」と素直に聞いてみる会話を増やしてみると、新しい発見や意外な解決策があるかもしれません。
……家庭では子どもについ押し付けがち、一方的になりがちな私も日々反省しながら努力しているところです。
-----
【筆者プロフィール】
谷平 優美
ウーマンエンパワープロジェクト代表/株式会社ルバート代表取締役。早稲田大学商学部卒業後、総合人材サービス会社で新規事業立上げ・執行役員を経て、 株式会社リクルートエージェント(現リクルートキャリア)入社。WEB企画・マーケティング、法人営業を経て退職。出産前後には専業主婦やフリーランスも経験。サロン講師、就職講座講師やキャリアカウンセリングをしながら、無理ない子育て中の働き方を模索するも待機児童となり認証保育園を利用しながら活動。転職支援・キャリア教育に関わった経験と、出産後に感じた様々な社会への違和感に何か発信をしたいと2012年にママハピを創業。2018年、社名変更後は時短ママのジョブシェア体制で事業運営。J-WAVEやフジテレビライブニュースα、東洋経済、NewsPicksなどメディア実績多数。2児の母。