トップへ

えっ、焼酎のお湯割りを友達に作ったら酒税法違反ってホント?

2021年09月30日 16:41  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

「焼酎のお湯割りを友達に作ってあげたら酒税法違反になる」。こんなツイートがSNS上で話題になっている。過去にも自家製サングリアをつくると法的に問題になるとネット上で話題になったことがある。酒を混ぜたり割ったりすると、本当に酒税法違反になるのだろうか。国税庁酒税課に聞いた。(ライター・国分瑠衣子)


【関連記事:親友の夫とキスしたら、全てを親友に目撃され修羅場  】



●酒と糖を混ぜると、アルコール度数が上がる場合がある

話題になったツイートは、9月下旬に投稿され1万4000件近くリツイートされた。以下のような内容だ。



『ひょんな事で酒税法を勉強してたら「酒類の混合は直前に消費者自身が行う場合のみ適用外」とあって、あれ?では「宅飲みとかで友人や同僚に焼酎のお湯割りとか作ったら違法なのでは?」と国税局に確認したら調査の結果「確かにご指摘の通り違法になってしまいますね」と返答をもらう。』



このツイートに対して「法律が現実的ではない」「日本中に広げて、お湯割りを部下につくらせる文化をやめよう」などのコメントもついた。



本当に友達にお湯割りをつくるのは違法なのか。そうだとしたらあまりにも悲しい。



酒税法には「みなし製造」という概念があり、酒税法第43条で規定されている。「酒を混ぜたり割ったりすることは『新しく酒を製造した』とみなされ、基本的には酒の製造免許が必要です」。国税庁酒税課の担当者はこう説明する。



なぜ「みなし製造」の規定があるのだろうか。国税庁の担当者は「理由は1つではありませんが、酒に糖などを入れると発酵が進んでアルコール度数が上がることがあります。そうすると税率が変わることになり、公平な課税ができません」と説明する。



日本の酒税は、酒の製法によって①ビールなどの発泡性酒類②日本酒などの醸造酒類③焼酎やウイスキーなどの蒸留酒類④リキュールやみりんといった混成酒類の4つに分かれ、それぞれ異なる税率を適用している。



酒によってはアルコール度数が高くなると税額も上がる。例えば焼酎は20度を超えると1度ごとに1リットルあたり10円加算される。20度を超えると発酵が進みにくいとされているが、出荷後に酒の混和によって度数が上がると、課税額に影響が出る。



反対に、日本酒の場合はアルコール度数は関係なく従量課税で、税率は1リットルあたり110円。仮に酒の製造場から出荷されたアルコール度数15度の酒100本を、製造場以外の場所で水で薄めて10度150本にした場合、50本分は課税されなくなってしまう。酒を適正に管理するために「みなし課税」の規定がある。



●家で自分や家族のためにお湯割りつくるのはOK

しかし、酒を混ぜたり割ったりする全ての行為で製造免許が必要になるのは大変だ。このため酒税法第43条では「みなし製造」の例外を規定している。



43条10項では「消費の直前に酒を他の物品(酒類含む)と混ぜる場合は製造に当たらない」と規定している。バーやレストランなどの飲食店で客にカクテルを出すケースを想定している。



さらに43条の11項では一般の人が酒を混ぜる行為についても例外と規定している。「消費者が自ら消費するために酒類と他の物品(酒類を除く)と混和する場合は適用しない」と定めている。この「自ら消費」というのは法令の解釈で同居の親族も含むという。



●家族がよくて、友達がダメなのはなぜ?

冒頭のツイートに戻ると、この場合、ツイートの内容通り、「一緒に住む家族にお湯割りをつくるのはOKだけど、遊びに来た友達に作ってあげるのはダメ」ということになる。



しかし、家族は良くてなぜ友達はダメなのかが腑に落ちない。



しかも酒税法違反には罰則があり、酒の製造免許を持たずに製造した場合、10年以下の懲役か100万円以下の罰金が科される。



「確かに宅飲みで焼酎のお湯割りを作って友達に出すと、法律上は製造行為に該当すると言えます。でも、だからといって酒税法違反で取り締まるかというと、そこまで踏み込んだケースは私の知る限りではないと思います」(担当者)。



法律を真正面から解釈すると違反だけれども、違反行為を問題にするかというと、また別ということだ。担当者は「制限速度40キロの道路を運転していて、41キロ出てしまった時に取り締まるのか、という問題と似ています」と説明する。



●自家製梅酒を近所に配るのは許容範囲

では、自家製の梅酒をつくって近所に配る場合は製造免許はいるのだろうか。家庭で梅酒をつくる場合は①梅酒を漬け込む酒はアルコール度数が20度以上のもので、酒税が課税済みのもの②米、麦、トウモロコシ、ブドウなどを混ぜない③できた酒を販売しない――などの条件がある。



「自家製の梅酒を作り、近所に無償で配ることは想定される行為として許容されています。ただし、大量に作って近所から注文をとって販売する場合は、個人であっても製造事業者として申請する必要があります」(担当者)。



まとめると、ルールを守っての自家製梅酒づくりや、同居する家族以外に酒を割って出してあげても現実的には問題ない。秋が深まるこの季節、安心して友人にお湯割りを作ってあげることができそうだ。