トップへ

「条例でレジ袋ないの草」「買う気うせた」 京都・亀岡市、国より厳しい規制の中身

2021年09月27日 10:01  弁護士ドットコム

弁護士ドットコム

記事画像

環境省と経済産業省は2021年8月、プラスチックの使用量削減やリサイクルを促進する目的の新法(プラスチック資源循環促進法)に基づき、消費者に無償提供されるスプーン、ストロー、歯ブラシなど12品目の提供削減を事業者に求める方針を明らかにした。


【関連記事:駐車場の車の中で寝ていただけなのに「酒気帯び運転」といわれた!どうすればいい?】



国は、2020年7月にプラスチック製レジ袋の有料化もおこなっており、消費者にとって身近なプラごみの削減に取り組む方針をさらに推し進めるつもりだ。



もっとも、ことレジ袋については、国よりさらに厳しい規制をしている自治体がある。京都府亀岡市だ。



市議会は2020年3月、プラ製レジ袋提供を全面的に禁止した条例を制定。2021年1月から施行され、さらに同年6月からは違反した事業者名の公表などの罰則も適用し、プラごみ削減を強力に推進している。



しかし、ツイッターには「亀岡市の条例でレジ袋ないの草w紙袋しかないのは不便」「(コンビニ)で買おうとしたらそれでマジで他にも買おうという気が失せた。なのでレジ袋禁止の間抜け亀岡市で物を買わず沓掛か八木まで買わないようにしてる」など条例に対する厳しい意見が飛び交う。



国の法令より厳しい条例とはどのようなものか。条例制定の背景とともに、あらためてその内容を確認する。



●亀岡市のほとばしる情熱「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」

亀岡市と亀岡市議会は2018年12月、「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」をおこなった。



市公式ホームページによれば、宣言に至るまでのきっかけは、2004年に市内を流れる保津川で川下りをする船頭が環境保全のために始めた流域に漂着するプラごみの清掃活動にあるという。



2007年には保津川遊船企業組合やNPO法人による継続した組織的な清掃活動もスタートし、これら取り組みを契機に、2012年に内陸部の自治体では初となる「海ごみサミット2012亀岡保津川会議」を開催。2018年3月には、循環型社会の構築のため「亀岡市ゼロエミッション計画(ごみ処理基本計画)」も策定している。



宣言は、こうした流れを引き継ぎ、『世界に誇れる環境先進都市』を実現しようと、2030年までに使い捨てプラスチックごみゼロのまちを目指す姿勢を内外に示したものだ。目指す目標として、以下の5つが掲げられている。




(1) 市内の店舗でのプラスチック製レジ袋有料化を皮切りにプラスチック製レジ袋禁止に踏み切り、エコバック持参率100%を 目指す取組みを進めます。



(2)「保津川から下流へ、そして海にプラスチックごみを流さない。」 世界規模の海洋汚染(マイクロプラスチック)問題に立ち上がる意識のつながりを呼び掛けます。



(3) 当面発生するプラスチックごみについては100%回収し、持続可能な地域内資源循環を目指します。



(4) 使い捨てプラスチックの使用削減を広く呼びかけ、市内のイベントにおいてもリユース食器や再生可能な素材の食器を使用します。



(5) 市民や事業者の環境に配慮した取り組みを積極的に支援し世界最先端の『環境先進都市・亀岡』のブランド力向上を目指します。




市は、宣言の主旨に賛同する事業者・団体と「エコバッグ等の持参及びレジ袋の大幅削減の取組みに関する協定」や「環境及び教育事業連携に関する協定」を締結するなど、具体的な取り組みを進めており、レジ袋条例も取り組みの一つとして制定されたことが条例の前文(法令の条項の前に置かれている文章)で明らかにされている。



●罰則も存在する「本気」の条例

自治体の宣言で法的義務が発生することはないが、条例となれば話は違う。条例違反に対して、2年以下の懲役・禁錮、100万円以下の罰金など罰則を定めることも可能だ。亀岡市のレジ袋条例にも、懲役刑などの重い罰則こそないものの、罰則自体は存在する。



条例では、「市の責務」、「市民等の責務」、「事業者の責務」をそれぞれ定めている。



まず、「市の責務」として、プラスチック製レジ袋の提供禁止等の取組の推進を図るために必要な措置を講じ、その取組に関する市民や事業者の意識の啓発を推進しなければならないとしている。



「市民等の責務」については、取組に協力するよう努めるとともに、使い捨てプラスチックごみの削減に努めなければならないと定めている。なお、「市民等」には、市内在住者に加え、市内に通勤・通学・滞在する人や通過する人も含まれる。



とはいえ、市および市民等の責務に違反した際の罰則は設けられていない。罰則適用は「事業者の責務」に違反した場合についてのみだ。



「事業者の責務」について、条例は、(1)プラスチック製レジ袋は無料のみならず有料での提供も禁止、(2)紙袋など生分解性の袋であっても、無料提供は禁止(有料は可)、(3)使い捨てプラスチックごみの削減に努める、という3つの責務が定めている。



罰則の対象は(1)と(2)だ。市は、違反した事業者に立ち入り調査や是正勧告をおこない、それでも従わない場合に、審査会の意見を聴いたうえで事業者名を公表できる。



国によるレジ袋有料化は、プラスチック製レジ袋の無料配布を禁止するにとどまる。有料での提供や生分解性の袋の無料提供については対象外だが、そこを事業者名の公表という罰則を設けてまで禁止しようとしているところに、市の「本気」の姿勢が表れているといえるだろう。



罰則の適用は2021年6月からだが、亀岡市環境政策課の担当者は9月16日、弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「現時点で事業者名が公表されたケースはない」と回答した。条例に基づく立ち入り調査や是正勧告についても、「事業者の方々には、実施前の段階でご協力いただいている」とし、実施例は今のところないという。