すっかりおなじみの光景となったUber Eats配達員の姿。街のあちこちで見かけるものの、そのリアルな実態は知られていない。2017年から兼業配達員を続け、6000件を配達したライターの飯配達夫さんに、当事者しか知らない赤裸々エピソードを寄稿してもらった。(文:飯配達夫)【連載第6回】
色がヒントになると思いきや……
配達員をしていると、色の表現はつくづく難しい、と思うことがある。お客様のご自宅が分かりづらい場合、メッセージや電話で、物件の特徴を伺うことがある。そのとき「~色の家」などと教えてくれるケースが少なくない。
ところが、このせいで逆に混乱を招くケースがある。厄介なのは、夜に行くと「昼間と違う色に見えてしまう」という例だ。
利用者に「緑色のアパートです」と言われたが、それらしい物件が見つからない。困っていたところ、実は目の前にある「白壁にしか見えない物件」が目的地だった、という笑えない体験をしたこともある。褪色したミントグリーンは、街灯に照らされると白く見えるのだ。
夜間でなくても、色の表現は難しい。若い女性から「白い一軒屋です」と言われて現場へ向かったが、家を見てみるとどう見ても白ではない、これはベージュか明るい茶色と呼ぶべきだ……。そんな経験を2度ばかりした。
また、これは配達中のエピソードではないが、緑色のライトバンを「ブルー」と呼んでいる年配者に出くわして面食らったことは忘れられない。確かに日本語では生い茂った木々の緑を「青々している」と言うが、それを「ブルー」と呼ぶのは違うのではないか?
こんな経験を何度もしてきたため、建物外観の特徴を聞いたときも、「色」の部分については話半分程度にしか信用しないことにしている。