トップへ

『#家族募集します』重岡大毅の演技が強力な引力に 最終話の屋上であふれた感謝と愛情

2021年09月25日 06:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『#家族募集します』(c)TBS

 <カレンダーだって知らない未来 一緒なら僕ら でっかい愛と歩いていける>


 火曜ドラマ『#家族募集します』(TBS系)が9月24日、大団円を迎えた。それぞれの家の中で行き詰まっていたシングルファザー、シングルマザーたちが、ひとつ屋根の下に集い、ときにぶつかり、ときに寄り添い「ホントの家族みたい」に助け合える仲間に……。そんな彼らの姿は血のつながった「本当の家族」こそ見失ってしまいそうになる大切なものを、思い出させてくれる温かなドラマだった。


【写真】重岡大毅、木村文乃、仲野太賀、岸井ゆきのクランクアップ時の様子


 「みんなで次のページをめくるときが来た」。お好み焼き『にじや』の店主・銀治(石橋蓮司)の息子家族が戻ってこられるように、2階の“みんなの家”を明け渡す決意をした俊平(重岡大毅)。あんなにも先が見えない未来を恐れていた礼(木村文乃)が「私たちなら大丈夫」と力強く語る姿ににじやの家族がもたらした大きな変化を痛感する。


 頼れる家族のいない日々で迷っていたあの頃とは違う、彼らのポジティブな顔つき。きっとこの明け渡しは、1人では動き出せなかったであろう一歩を、それぞれが動き出すための“巣立ち”なのだ。


 亡き妻・みどりの想いを受け止め新しい絵本を作り出せた俊平。ときには成り行き任せで自由に子育てできる余裕を持った礼。めいく(岸井ゆきの)も黒崎(橋本じゅん)の元妻で歌手の黛倫子(平原綾香)に歌を聞いてもらったことで、さらに夢が膨らんだ。そしてファインダー越しに見た家族に憧れることしかできなかった蒼介(仲野太賀)は、自分の家族を手にしたことで再びカメラを構えることができた。


 「ただいま」と帰る場所があるから、家から飛び出して繋がることができる。思い出しては頬が緩むような家族の思い出があるから、離れていても背中を押してもらえるような気持ちになる。だから、彼らは巣立つことを決意できた。「ありがとう」とお互いを称え合いながら。


 屋上で「ありがとう」を連呼する俊平、蒼介、礼、めいくの姿は、この役柄を演じたキャストたちの素のやりとりにも見えた。クランクアップ時に、木村が「ひとつの家族みたいになれた現場でした」とコメントしていたのも印象深い。


 また仲野も「重岡くんやハルの誕生日を、キャストとスタッフが一丸となって本当の家族のように盛り上げるというアットホームな現場は僕自身初めてでしたし、楽しい時間を過ごせて幸せな気持ちでいっぱいです」と語り、岸井も「他人同士が家族になっていくというストーリーの中で、こういう関係性が生まれたことはすごく尊いことだと思っています」と話していた。


 間違いなく、このメンバーだからこそ伝わってくるものがあった。そして、その中心に初の父親役、そしてゴールデン・プライム帯連ドラマ初主演という重岡がいたことが大きい。重岡の屈託のない笑顔と、まっすぐな眼差し、そして心の中をさらけ出した涙。俊平として精一杯生きる姿に、キャストも視聴者も心を鷲掴みにされた。


「このお芝居を見られただけでも、この作品に参加できてよかったなって思いました」


 そう仲野が語った第1話のキャッチボールをしながら俊平が号泣するシーンは、今思い出しても心をキュッと締め付けられる。


 俊平が、どれほどの思いを胸に押し込めていたのか。一瞬でも緩めてしまったら止まらなくなるからこそ、無意識に強くフタをしていたものが一気に噴き出した様子は、役者・重岡大毅の最大の持ち味と言えるだろう。


 9月17日に重岡が出演した『A-Studio+』(TBS系)では、近年の活躍の裏側で「カッコつけるのをやめたんです」という決意をしていたことを明かしていた。自分のテリトリーを守る秘密主義であり、やると決めたらまっすぐに努力するストイックな性格の重岡は、自分だけでなんとかしようとしていた当初の俊平というキャラクターとも重なる部分があるように感じた。


 そしてにじやの仲間と出会い、ありのままの自分で先の見えない未来を歩んでいく俊平の姿は、もしかしたらジャニーズWESTをはじめとした家族とも呼べる仲間たちに出会い、カッコつけずに表現することを知った重岡自身の物語とリンクしていたのかもしれない。そんなふうに考えてしまうほど、本作の俊平という役柄に重岡はフィットしていたのだ。


 第1話と対象的に描かれた最終話の屋上シーン。切なくて辛いかつての涙とは違い、感謝と愛情があふれる嬉し涙になっていた。そんな自然体な重岡の演技が強力な引力となって、キャストたちの素の演技が引き出されたのではないだろうか。


 きっとこの『#家族募集します』というドラマを通じて彼らが過ごした日々は、その様子を見届けた私たち視聴者にとっても、おいしいメロンのように「思い出し甘みで5年はイケる」思い出になった。ここから巣立つ重岡たちの新しい挑戦もまた楽しみだが、願わくばまたいつか「ただいま」と言って帰ってくる続きの甘みも味わってみたい。


※参照
https://realsound.jp/movie/2021/08/post-844078_2.html
https://realsound.jp/movie/2021/09/post-865545.html
https://www.tbs.co.jp/tv/20210917_A361.html


(佐藤結衣)