トップへ

意外と知らない「クルマ」の豆知識 第13回 派手な色のクルマ、なぜ少ない? 理由は下取り価格と…

2021年09月24日 11:02  マイナビニュース

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
街中を眺めていると、どちらかというとモノトーンのクルマが多いことに気がつきます。白、黒、グレー、次いでシルバーあたりが目立つ印象ですが、なぜバイオレットやレモンイエロー、ビビッドピンクといった派手なカラーリングのクルマは少ないのでしょうか。モータージャーナリストの内田俊一さんに聞いてみました。


○人気色とイメージカラーの関係



新車が発表されると、そのクルマのイメージカラー(訴求色)が同時に公開される。例えばテレビコマーシャルやカタログのメインカットなどで使われるカラーといった方が分かりやすいかもしれない。訴求色に選ばれるのは、そのクルマのキャラクターを最も端的に表現できるカラーであることが多い。



しかし、市場の反応を見ると、決してそのカラーが売れているとは限らない。理由は大きく3つある。ひとつは、街中で走っていて目立つこと。そしてもうひとつは下取り価格だ。



現在の自動車市場で出回っている外装色は、白・黒・シルバー/グレーで7割ほどになるという。これらのカラーが「人気色」となっているので、当然のことながら「不人気色」より下取り価格も高くなる。


新車を購入するときは、オプション(有償色)でない限り、どの色を選んでも値段は変わらないが、手放すときに差がついてしまうので、セールスマンも積極的には勧めない。その結果、前述のイメージカラーはあまり売れず、下手をするとマイナーチェンジなどのタイミングで廃色になってしまうことすらある。



最後は、デザイン的な意味合いだ。新型車のデザインを決める際、開発者たちは最終的に、「クレイモデル」や「モックアップモデル」などと呼ばれる1/1モデルを作成する。ここまでくると、完成度はほぼ現車と同じだ。一目見ただけでは、モデルなのか実車なのかわからない程の出来栄えとなる。

モックアップなどの最終的なモデルで開発陣は、デザインが「本当にこれでいいのか」を確認する。全体のたたずまいからキャラクターラインに至るまで、事細かくチェックするのだ。


モデルは粘土(クレイ)などで作られているため、本来のボディカラーはまとっていない。クレイに「ダイノック」と呼ばれるシルバーのシートを張りつけて仕上げていくのだ。シルバーは全体のシルエットやキャラクターラインが入った際の陰影に至るまでの表現性が高いことから選ばれたカラーなので、クルマのデザインの本質を見抜くのにふさわしい色である。市場においても、デザインが分かりやすい色としてシルバーが選ばれやすいのだろう。

○自分好みのカラーを選びたいけど…



「白・黒・シルバー/グレー系の増殖」という現状を打破しようという動きもある。例えばマツダは、「ソウルレッド」という美しい赤のボディカラーを新開発したが、2020年の販売実績では、全体の3割近くがこの赤だったという。


日産自動車のプレミアムブランドともいえる「オーテック」(AUTECH)は「オーテックブルー」をイメージカラーとしているが、こちらも車種によっては50%~70%の割合に達するそうだ。


「好きな色のクルマを購入したい!」という気持ちはよく分かるのだが、下取り時に大きな差がついてしまうことを考えると、積極的に白・黒・シルバー/グレー以外を勧めることには、やはり躊躇してしまう。しかし、購入から3年あるいは5年以上の長い時間を共に過ごすことを考えると、やはり自分の好みのカラーを選んで欲しいとも思う。その方が気持ち的な満足感は高くなるだろうし、それ以上に街中が華やかになるとも思うのだ。



内田俊一 うちだしゅんいち 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験をいかしてデザイン、マーケティングなどの視点を含めた新車記事を執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員。 この著者の記事一覧はこちら(内田俊一)