すっかりおなじみの光景となったUber Eats配達員の姿。街のあちこちで見かけるものの、そのリアルな実態は知られていない。2017年から兼業配達員を続け、6000件を配達したライターの飯配達夫さんに、当事者しか知らない赤裸々エピソードを寄稿してもらった。(文:飯配達夫)【連載第1回】
黎明期ならでは? 注文したのは、まさかの……
まだUber Eatsがサービスインして日が浅い頃の話である。
ひとりの配達員がとある店舗で注文された商品を受け取った。「さて配達先はどこだろう?」と確認したところ、現在地の住所が記されている。
「システムエラーか?」と思いつつ、何とはなしに振り返ったところ、そこに利用客が待っていた。
なんと客は、わざわざ自分が今いる店内から注文していたのだ。おそらく「Uberの配達ってどんな風なんだろう? 一から十まで目で見て確認したい」と考えたのだろう。
これは他の配達員から聞いた話なのだが、さすがに今は、こんなことはない。黎明期ならではのエピソードだろう。
ところで、この話から連想したことがある。文明開化の時分、郵便配達の仕組みは、ずいぶん不思議がられたそうだ。ポストの前で、日がな一日観察していた人がいたという。この件とまるっきり同じではないか。日本人の行動は明治の頃から進歩していないのかもしれない。