WEC世界耐久選手権およびル・マン24時間で2021年シーズンから採用されているル・マン・ハイパーカー(LMH)規則に準じたハイパーカーの開発を進めているバイコレス・レーシングは、予定している2022年のキャンペーンに先立ち、ノンハイブリッド・プロトタイプカーのロールアウトを「今後4~5週間以内に行いたい」と考えている。
バイコレス社のボスであるコリン・コレス博士はSportscar365に対し、コンストラクター兼レーシングチームである彼の組織がホモロゲーション取得前のテストプログラムと2022年のレースデビューに備え、夏の間ずっと新型プロトタイプ『PMCプロジェクトLMH』を作り上げてきたと語った。
LMP1で豊富な経験をもつバイコレスは、2018年にWECの新しいカテゴリーであるハイパーカークラスに参加する可能性がある者として最初に登場し、いまから約1年前の2020年9月にLMHレギュレーションに基づいて製作されたマシンの予備デザインを公開した。
このプログラムの最新情報は今年4月に発表された、トム・ディルマンとエステバン・グエリエリをLMH開発ドライバーに起用するというニュースだ。
「基本的に、クルマは現在組み立てられている」とコレスは述べた。
「先週私が最後にワークショップを訪れたとき、モノコックがそこにありエンジンがモノコックに取り付けられていたという状況だ」
「ギアボックスとサスペンションも、モノコックに取り付けてあった。これが現在のステータスだ。また、先週の時点で配線や電子機器は機械の中に収まっていた」
今年中にPMCプロジェクトLMHのロールアウトが可能であるか、それに自信があるかを尋ねられたとき、コレスは次のように答えた。
「本来であれば2月にすでにクルマをトラックで走らせることができたはずだが、それには意味がなかった。だから、過去数年間のように自分たちにプレッシャーをかけないことにした」
「正直に言うと、私たちにとっては良いクルマをシリーズに持ち込みトヨタや他の人たちを打ち負かすことが非常に重要なんだ。それがターゲットだ」
バイコレスは今年のル・マンにLMH車両を投入することも検討したが、それにはフルシーズンエントリーを申請し、ハイパーカーメーカーとしてフルシーズンのエントリーフィーを支払う必要があった。そのため、チームは焦点を2022年のデビューに切り替えることにしたという。
ル・マン補足規則の第3.2.3条では、「ハイパーカー・カテゴリーへの参戦を希望する競技者は、ハイパーカー・FIA世界耐久選手権(マニュファクチャラー選手権)に参加しなければならない」と規定されている。
■参戦を1年先送りし、その間にマシンをさらに改良することを選択
同社はこの夏、ギアボックス関連の遅延に遭遇したため、初走行の時期を見定めるのが困難になったと理解されている。
コレスは本拠地があるドイツでの最初のロールアウトに続き、ポール・リカールやモンツァなど“いつもの場所”をテストのために訪問するだろうと予想している。このテストは最終的にホモロゲーションにつながり、公認取得後は基本的に5年間にわたって仕様が凍結される。
「それは完全に新しいクルマだ」とコレスは語った。
「PMCプロジェクトLMHにはキャリオーバーのパーツはなく、100%フィットさせる必要がある。つまり非常に高い水準の品質でなければならない」
「LMP1時代の我々の弱点は“急ぐ”ことだった。その反省から、いま我々には時間のプレッシャーはない」
「ACOフランス西部自動車クラブにはル・マンでクルマを走らせたい旨を伝えたが、レギュレーションが変更され、LMHエントラントとしてレースごとにエントリーすることができなくなった。これが我々が2月に決定を下した理由だ」
「私たちは1年スキップし、その間にクルマをより良くする開発を行うことを決めた。何のために50万ユーロ(約6400万円)を支払うのか、その意味を見いだせなかったからだ」
「とはいえ、当然できるだけ早くテストに行きたいと思っている。なぜならホモロゲーションに縛られてしまうので、(その前により多くの走行機会を得て、相対的に)ホモロゲーションを可能な限り遅らせたいんだ」
バイエルン州のグレーディングで自社生産されるPCMプロジェクトLMHには、バイコレスがENSO CLM P1/01で使用したLMP1用エンジン、ギブソンGL458 V8をLMH用に最適化したものが搭載される。
「基本は同じだが、まったく同じエンジンではない。明らかにいくつかの改良が加えられている」とコレス。
「それは最適化され、たしかに電子制御システムはまったく異なるものになっている。また、パワーとトルクのカーブもLMH規定下で必要とされるものに調整する必要があった」
バイコレスの新しいレーシングプロトタイプは、同社が掲げる“PMCプロジェクト”3本柱のひとつを形成するもの。のこる2本の柱はサーキット専用のトラックデイモデルと公道走行が可能なロードゴーイングモデルだ。