2021年のスーパーGT第5戦SUGOで5年ぶりの優勝を飾ったカルソニック IMPUL GT-R。チームを率いる星野一義監督は、GT500クラスでの久しぶりの勝利に安堵の表情を見せた。
かつてはシーズン1勝は挙げる活躍を見せていたTEAM IMPULだが、2016年第5戦富士で安田裕信/ジョアオ・パオロ・デ・オリベイラが優勝を飾ってから、表彰台の中央から遠ざかる日々が続いていた。
シーズンの開幕前には「今年こそ勝つ!」と力強いコメントをする星野監督だが、内心ではサポートしてもらっているスポンサーや協力してくれているサプライヤーたちに早く恩返しをしたい気持ちでいっぱいだったと言う。
「長い間勝てなくてイライラしていたんですけど、勝ってホッとしました。本当にみんなの協力があっての勝利です。タイヤも急なリクエストを聞いてくれたり、積極的に協力してくれた。それを結果で恩返しをしたい思いがありました」と星野監督。
「特にカルソニックですね。これだけ長い間勝てなかったのに、それでもフォローし続けてくれました。しばらくニッサンが低迷していた時期もありましたけど、とにかく彼らに“優勝”という成績を持っていきたいという気持ちでいました。こうして恩返しできたことがうれしいです」
今回のSUGOでは初日から好調な走りを見せ、予選3番手を獲得。決勝でも前半スティントの松下信治がアグレッシブな走りで2番手に浮上すると、後半スティントの平峰一貴もAstemo NSX-GTとのバトルで一歩も引かない走りを披露。ARTA NSX-GTがペナルティで後退したことにより、残り30周でトップに躍り出た。
平峰は順調に周回を重ね、後続との差も徐々に広げていったが、それでもSUGOでのレースは最後まで何が起きるか分からない。その走りを見守るピットは気が気でないのだが、星野監督はドライバーを信じてチームにある指示をしたという。
「とにかく余計なことは言わなかったし、チームにも(ドライバーに対して)言わせませんでした。僕が現役のときもそうだけど、あと何周だとか、路面の状況とかタイヤの状況は乗っている本人が一番分かっているわけだから。『何も言うな!』とチームにも指示しました。無理な追い抜きもしていないから、『後ろとの差がちょっと詰まっても何も言うな!』と言っていました」
「タイムを見ていても、もし追いつかれたとしても、4~5周でまた引き離していたので『これはちゃんと後ろを見て走っているから、周りがどうのこうの言う必要ないな』と思っていました。こういうときのドライバーの気持ちは僕もよく分かるからね」
また星野監督は、平峰と松下の頑張りも讃えていた。
「彼らを磨くのは僕の仕事ですから、ときには“愛の鞭”ということで怒ったりすることもありました。でも、こうして勝ってくれたらすべてが解決してくれる。彼らもレースキャリアでさまざまな苦労があったから、ここで良いドライバーだというのを証明したかったと思います」
この1勝で、呪縛から解放された感のあるTEAM IMPUL。次戦の第6戦オートポリスではサクセスウエイトも重くなるが、「この流れをなんとか維持できるように、次も頑張るよ!」と星野監督は前向きにコメントしていた。