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プログラミングスクール卒業生は現場で使えない!? 10人以上採用したIT企業経営者が思うこと

2021年09月16日 06:10  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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はじめまして、スーパーソフトウエアというソフトウェア開発会社を経営している船木と申します。近年、「未経験から○ヶ月でエンジニアになれる」などと謳ったプログラミングスクールが多数出てきているのはみなさんもご存知でしょう。

しかし、こうしたスクールの出身者は採用する企業側からすると微妙なことが多いのが実情です。今回はそのあたりの事情について書いていこうと思います。

うちの会社でもこうしたスクール出身者をこれまでに10人以上採用してきました。広告をたくさん出している大手スクールの出身者も採用しました。全く同じようなコードをGitHubにあげて自分の成果として示し、面接対策として仕込まれたであろう受け応えをすることは大目に見つつ、一抹の不安を感じながらも、エンジニアになりたいという意気込みを買って採用したのです。

最初は仕事になるはずもないが、徐々にでも出来るようになれば、という親心もありました。ところが期待に反して多くの人は雲行きが怪しくなってきます。最初は頑張るが、続かない。あれだけあった熱意や意欲が、実務の難しさに直面するとあれよあれよと消えてしまう。

そうして、思った仕事と違ったとか、自分には向いていないといった理由で諦める人が大半でした。なぜこのような状態なのか考えてみると、彼らはある意味での被害者なのではないかと思えてきました。(文:スーパーソフトウエア代表 船木 俊介)

受講生を勘違いさせているだけ?

そもそもプログラミングとは、情報の入力と出力をつなぐロジック(論理)をコンピュータが分かるように記述することを指します。

例えばログイン機能であれば、利用者が入力するメールアドレスとパスワードという入力があり、それを受けてログインの成功、失敗という結果が出力されます。その間には、入力情報を内部のデータベースと照合するというロジックがあり、データベースのどれかと一致すれば、成功として出力を返します。この処理の流れをRubyやPythonなどの言語で記述して動作させることをプログラミングというのです。

ただ、このような一般的でよく使う機能はライブラリというものを利用することで、いまは非常に簡単にできるようになっています。何1つ難しいことを考えなくても、ログインして商品一覧を表示して詳細情報を表示するというWebアプリケーションはものの数時間で出来ます。あとは見た目を整えればそれらしい成果物になります。

ありものを組み合わせただけですが、スクール出身者の話を聞くと、これで自分はプログラミングできるんだ、さあエンジニアとして就職だと受講生を勘違いさせているスクールがあるようです。これでは実際に仕事ができるレベルからはほど遠いでしょう。

炊飯器でご飯が炊けるだけの人がスペイン料理店で働いたら……

実際の仕事では、セッション管理や脆弱性などの様々な知識があることを前提に、新しいロジックを組み立てることこそが仕事であって、単にありものを使えるというのでは全く太刀打ちできません。

炊飯器でご飯を炊けるようになっただけなのに自分を料理人だと勘違いしている人を想像してみてください。そんな人がスペイン料理店で働くとどうなるでしょう。パエリヤを注文されても、エビのむき方もわからず右往左往することになります。

炊飯器でご飯を炊ければ高収入といった仕事はこの地球上には存在しません。やはりお客さんはパエリヤだからこそお金を払って食べるのです。おいしいパエリヤを作るためにはエビもイカも下処理がいるし、サフランの量も間違ってはいけない。なぜこの工程が必要なのかも含め、段階を踏みながら粘り強く学ばなければいけないのです。プログラミングも同じです。

一部のプログラミングスクールがやっていることは、なにも知らない人に対して、現実には存在しない希望を抱かせているのに等しいと言えます。

結局、好きでないと続けられない

しかし、プログラミングができるようになるには下積みが必要とか、エンジニアになるには10年かかるとか、そういうことはありません。半年でも1年でも出来る人は出来るようになります。だた、知らないと仕事にならないことが他の仕事に比べて多いのは事実です。

興味を持つきっかけは何でもいいでしょう。しかしエンジニアになろうと思ったらその後が大切です。まず、勉強をし続けることに苦痛がないかを自問してみてください。データベース、メソッド、クラス、ネットワーク、設計、セキュリティ、といったIT技術に関連することを好きになれるでしょうか。自分で興味を持って好きになれないと、やっぱり続けるのは難しいでしょう。

現状を変えたい、新しい未来を作りたい、という気持ちで大枚をはたいてどこかに入会するのも、情報商材を買うのも、怪しい壺を買うのも個人の自由です。しかし、甘い言葉で金だけとられて何も手に入らない場所ではなく、本当の現実を教えてくれる人に出会うか、育ててくれる会社に入るべきでしょう。

ただ、どこかにエビのむき方くらいはちゃんと教えるプログラミングスクールがあってもいいとは思いますが。

【筆者プロフィール】船木俊介
スーパーソフトウエア東京オフィス代表。大学生の頃からベンチャー企業で働き、後に東証マザーズに上場するマーケティング企業の立ち上げ、フリーランスエンジニアを経て2010年に株式会社スーパーソフトウエア東京オフィスを設立。2012年に750万ダウンロードを記録したアプリ「漫画カメラ」を開発してリリース。さらに2014年にはベビーシッターマッチングサービスの立ち上げにも参画。クライアントの課題解決をテーマにしたITサービス事業は急拡大しており、現在もエンジニアとしてAIの開発などを行っている。