2021年09月15日 16:31 弁護士ドットコム
性同一性障害のトランスジェンダー女性がうつ病を発症したのは、勤め先の上司から「彼」と呼ばれたり、身体的特徴についてたずねられるなどのハラスメントを受けたことが原因だとして、9月14日、神奈川内の労基署に労災申請した。
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女性の代理人によると、性自認に関するハラスメント(SOGIハラ)で労災認定されるハードルは高いという。女性は9月15日、都内で記者会見を開いて、「会社はいまもハラスメントを認めません。労災として認定してほしい」と呼びかけた。
労災認定の申し立てをしたのは、神奈川県の会社(製造業)で働くAさん(40代前半)。15日の会見で経緯を説明した。
Aさんは7~8年前、性同一性障害の診断を受け、保険証などの性別はいわゆる「裏面表記」のトランス女性だ。
新卒入社時は男性として振舞ってきたが、次第に髪を伸ばすなど、会社でも女性としての扱いを希望してきた。
しかし、性自認に関するハラスメント(SOGIハラ)を含むハラスメントを受けたという。
特に、当時所属していた部署の上司にあたる男性から、2018年4月19日、「君は『彼』でしょ」など、差別的な発言を繰り返されたことから、精神的ショックを受けた。同年12月にうつ病と診断され、同月15日ごろから出勤できなくなった。
この男性からは、ほかにも「君のことを女として見られない」「女として扱ってほしいなら手術を受けたらどうだ」などの趣旨の発言があったという。そのほかにも、仕事からはずさせるようなパワハラにあたる言動があったと主張している。
今年9月5日までの休職期間を終えて、復職しようとしたところ、遠隔地への配置転換を命じられたという。Aさんは、労働組合「プレカリアートユニオン」に加入し、団体交渉を通じて転居を伴わないで済むかたちで復職した。
Aさんの代理人の小野山静弁護士によれば、労災認定基準の中に「SOGIハラ」は明確にないため、上司からセクハラ・パワハラにあたる言動を受けたと主張している。
Aさんは「ハラスメントをした上司は、何度も、何カ月もやめてほしいと言い続けたにもかかわらず、私をあえて『彼』と呼び続けました。ほかの女性職員を『~さん』と呼ぶのに、私だけ『Aくん』と呼びました。また、仕事からのけものにしようとしました」と話す。
会社にはハラスメント行為を禁じる社内規定もあるが、上長に相談してもハラスメントと認められず、今も会社側は「不適切な言動」ではあるが、ハラスメントを認めていないという。
「労基署が認めれば、会社も認めざるをえない。ぜひ、認定してほしい」(Aさん)
同じくAさん代理人の佐々木亮弁護士によると、職場における性自認の問題は「施設・社内制度の問題」と「ハラスメントの問題」の2つに大きく分けられるという。
「前者は物理的限界もあり、議論を深めていかないといけない分野です。しかし、ハラスメントは今すぐにでも解決できる類の問題です。時代にそぐわないような言動を、上司が部下にぶつけるのはたださないといけません」
会社は、弁護士ドットコムニュースに「現時点では、コメントは控えさせていただきます」と回答した。
追記(9月16日午後9時02分):保険証に関する記述について、会見者側から「不正確な説明だった」と連絡があり、一部訂正しました。