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え、いまさら? 「そろばん」が現代の習い事として意外と優秀な理由

2021年09月15日 06:10  キャリコネニュース

キャリコネニュース

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個別指導塾を経営・運営し、1500人の生徒をサポートした、プロ家庭教師の妻鹿潤です。

電卓やexcelの計算処理など、高度な計算手段がいくつもある昨今、「今さらそろばん?」と思ってしまいますが、そろばんを習うメリットは、実は計算が速くなることだけではありません。「集中力」「忍耐力」「情報処理能力」など、現代社会を生きていく上で必須ともいえるスキルを磨くことができるのです。

そろばんの脳トレ効果

そろばん初心者のうちは実際に手で珠をはじいて計算しますが、慣れてくると頭の中で珠をイメージする「そろばん式暗算」ができるようになります。

右脳を使うそろばん式暗算は、いわば「画像処理」であるため、左脳による筆算式暗算に比べて高速で処理することができます。そろばんの達人が、大きな桁の暗算を軽々とやってのけられるのはこのためです。

全国珠算教育連盟によると、そろばんの学習効果は世界的に高く評価されており、現在では世界108か国に普及しているそうです。

東洋経済の記事によると、日本では片手でそろばんの珠をはじくのが主流ですが、脳トレを目的としている海外では、左右の脳をバランスよく刺激できる「両手式そろばん」が主流とのことです。

手軽でリーズナブルなそろばん

そろばん教室の数は減少傾向にあるものの、日本国内でもまだまだ人気の習い事の一つです。

地域や教室によっても差はありますが、日本珠算連盟によると、そろばん教室の月謝は「月謝は4,000円から12,000円」程度で、「東京都内の平均的な月謝は6000円」とされ、非常にリーズナブルです。また、準備するものもそろばん本体のみということで、手軽に始められることが人気の理由です。

そろばん検定試験では、膨大な計算を間違えずに解くことが求められます。集中力が鍛えられるのはもちろんのこと、粘り強く鍛錬を続ける忍耐力も身につきます。

そろばん一つで、学力も精神力も鍛えられる――月々数万円の月謝がかかる塾や、用具や教材が必要になる他の習い事と比べて、そろばんは圧倒的にコスパが良い習い事かもしれません。

「視覚優位」な人におすすめ

そろばんでは、「数」の概念を「珠」によって視覚的に捉えることができます。小学校に入学したばかりの子どもたちにとっては、数という概念そのものがわかりづらく、最初のつまずきとなるケースも多いのですが、そろばんを使うことで、「数」というものが何か、直感的に理解することができます。

また、目で見た情報を処理することが得意なことを、「視覚優位」といいます。発達障害の子どもたちは、この「視覚優位」であることが多いと言われています。そういった特性のある子どもたちにとって、「珠」という視覚情報は、算数を理解する上でとても役立ちます。

注意点としては、規模が大きく、大人数が一斉に学ぶ形態の教室は集中しづらいため、子どもたちの特性によっては、適切とは言えないかもしれません。

また、小学生は早く来て早く帰る、高校生は遅く来て遅く帰る……といった人の出入りは気が散るものです。集中するのが苦手なお子さまの場合、「少人数」「学年ごとに部屋が分かれている」ことをポイントに、教室を選びましょう。

デメリットは?

デメリットとしては、そろばんが得意だと、筆算や途中式を書くのが面倒になりがちなことがあります。

学校のテストでは、筆算や途中式を書かないと減点される場合もあります。そのため、複雑な計算をするときに検証しやすくなること、計算の過程も評価されることなどを伝え、子どもに理解してもらわなくてはなりません。そろばん教室の先生や、担任の先生の協力を仰ぐのも一手です。

同様に、「37×99=」のような「工夫した計算が身に付きにくい」という傾向がありますが、これも同様に、工夫した計算が身につくような訓練を別ですれば良いでしょう。

このように見ると、そろばんを習うことのメリットは大きく、身に着けた計算力や集中力が無駄になることはありませんし、もし続けられずやめてしまったとしても、そもそも月謝が安いので、経済的にもそれほど大きな損失とはなりません。

デジタル化が進むこの時世だからこそ、敢えて自分の頭と手を動かすそろばんが注目されています。お子さまの習い事の選択肢の一つとして、検討してみてはいかがでしょうか。

【筆者プロフィール】】株式会社STORY CAREER取締役 妻鹿潤(めがじゅん)
関西学院大学法学部卒。塾コンサルタント・キャリアコンサルタント・プロ家庭教師などを通してのべ1500人以上の小中高生、保護者へ指導・学習アドバイスを行う。
大手教育会社時代は携わった教室が10か月で100人以上の生徒が入会する塾に。しかし志望校合格がゴールの既存教育に限界を感じ、「社会で生き抜く力」を身につける学習塾を起業。40~50点の大幅な点数アップを実現し、生徒のやる気を引き出すメソッドを確立。入塾待ちの塾となる。
現在はキャリアコンサルタントとして企業の採用支援、大学生・社会人のキャリア支援を行う。ほかにも塾コンサルティング、プロ家庭教師、不登校・発達障害の生徒の個別指導なども行っている。