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Gクラスもスマートも! メルセデスが明かした電気自動車の未来

2021年09月14日 11:02  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
メルセデス・ベンツがクルマの電動化を加速させている。ドイツで開催された国際的な自動車ショー「IAA MOBILITY」で発表した10台の新型車のうち、実に7台が電気自動車(EV)という徹底ぶりだ。あの本格オフローダー「Gクラス」のEVコンセプトも発表となった。


○どこから見ても「Gクラス」



メルセデスが発表した7台のEVとは、「EQB 350 4MATIC」「EQE 350」「Mercedes-AMG EQS 53 4MATIC+」「Concept Mercedes-Maybach EQS」「Concept Mercedes-Benz EQG」「Concept EQT」「smart Concept #1」である。



その中でも注目は、メルセデスのSUVラインアップの中でトップに君臨する「Gクラス」のEV「コンセプトEQG」だろう。実用的なオフロードの象徴であるGクラスのEVが、ほぼ完成に近い形のコンセプトカーとして登場した。


ひと目でGクラスとわかる伝統的なデザインを踏襲したコンセプトEQG。量産型に近いこのモデルは、Gクラスの象徴的な角ばったシルエットを採用している。フロントビューは典型的な丸型ヘッドライトのおかげで見慣れた顔になっているが、従来のエンジンモデルのようなラジエターグリルではなく、深みのあるブラックのフロントカバーを配置してあるところが斬新だ。3D効果のある星のイルミネーションが、ブラックのカバーのアクセントになっている。その周りには、メルセデスがEQモデルでよく使っている、ブルーを基調とした「丸い四角」のアニメーションパターン(リスクルパターン)があり、視覚的にもほかのEQモデルとのつながりを想起させる。


エクステリアデザインのハイライトは、ハイグロスブラックのフラットなルーフラックだ。そのミニマルなデザインをトップビューで見ると、中心には「G」の文字が。ルーフラックのフロントエッジに組み込まれた白色LEDストリップは、過酷なオフロード走行に欠かせないサーチライトを現代風にアレンジしたものとなっている。ルーフラックのリアエンドには、レッド仕上げのLEDストリップを装着している。


「G」を名乗る以上、オフローダーとして妥協は許さないとメルセデスは強調する。シャシーは堅牢なラダーフレームをベースとし、フロントアクスルには独立したサスペンション、リアアクスルには電気駆動を組み込むため新たに開発したリジッドアクスルを採用。ホイールに近い位置にある4つの電気モーターを個別に制御することで、オンロードでもオフロードでも「個性的」な走行特性を実現するという。

○意外と大きい? 「スマート」のEV

メルセデスが発表したクルマの中で気になったのは、スマートのEVコンセプトである「smart Concept #1」だ。使用シーンを考えると、スマートほどフルEV化するのにふさわしいクルマはない。その生産モデルを示唆しているのが、このsmart Concept #1なのだ。


生産開始が間近に迫るsmart Concept #1のデザインは、メルセデス・ベンツ・デザインのグローバルネットワークで作り上げたとのこと。バランスのとれたプロポーション、力強い面構成、フロントとリアのショートオーバーハングなどが特徴的だ。



中でも目を引くのは、光の輪が印象的な大きなパノラミックガラスルーフ。フロントガラスやフレームレスドアの窓面とシームレスにつながっているため、ルーフがボディから浮いているように見える。一方で、アンスラサイト(無煙炭)とブラックが印象的なボディ下部のデザイン要素はSUVの堅牢性を強調。ユニークなデザインの21インチホイールがアクセントになっている。


特徴的なのは、隠れたドアハンドルだ。smart Concept #1のリアドアは後ろにヒンジがあり、フロントドアとは逆方向に開く。つまり、観音開きだ。このドアにより、クルマへの乗り降りが特に容易になる。Bピラーがないので、ドアを開けたときには広い室内空間を見渡すことが可能だ。



ボディサイズは全長4,290mm、全幅1,910mm、全高1,698mm、ホイールベースは2,750mmと聞くと、スマートという名前から想像するよりは、かなりサイズの大きなクルマだと感じる。特に、全幅はかなりのものだ。



ホイールを車両の四隅に配置したことで、広々とした室内空間を実現したsmart Concept #1。BEV(バッテリーEV)アーキテクチャーを採用しているため、将来の5人乗りの量産モデル同様、4人乗りのコンセプトモデルでも、上位セグメントの車両と同等の足元と肘まわりのスペースを確保している。収納スペースも十分だ。


紹介した2台は市販を前提とするコンセプトカーなので、誇張している部分はあるとは思うが、ほぼイメージは変わらずに市販化にこぎつけるだろう。オフロード性能を重視したSUVのEQGは、自然の中へ入り込むことが多いことを考えると、フルEVであることのメリットは大きそうだ。Gクラスらしい走破性も期待できるだろう。デザインは「ここまでやるか」というくらいGクラスを意識したものなので、現行Gクラスユーザーがどういう反応を示すか興味がわく。



smart Concept #1はどちらかというと「Aクラス」に近いサイズなので、EQAあたりとどのような差別化を図るかがポイントになるだろう。



内田俊一 うちだしゅんいち 1966年生まれ。自動車関連のマーケティングリサーチ会社に18年間在籍し、先行開発、ユーザー調査に携わる。その後独立し、これまでの経験をいかしてデザイン、マーケティングなどの視点を含めた新車記事を執筆。また、クラシックカーの分野も得意としている。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員、日本クラシックカークラブ(CCCJ)会員。 この著者の記事一覧はこちら(内田俊一)