2021年09月14日 10:11 弁護士ドットコム
4年前の交通事故の損害賠償は時効になるのかーー。過去の交通事故で自動車の所有者から損害賠償を要求されている人が、弁護士ドットコムに相談を寄せました。
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相談者は4年前、借りた車で追突事故を起こし、車を破損させてしまいました。どういうわけか、その後車を借りた所有者から連絡がない状態が続きましたが、最近になって所有者から、車の買い替え費用、慰謝料等の支払いを請求する簡易書留が届いたというのです。
相談者としては請求された金額は法外だと考えていますが、相手方は払わないなら裁判するつもりのようです。相談者はどう対応すべきなのでしょうか。前島申長弁護士に聞きました。
ーー交通事故による損害賠償では、時効はどのように定められていますか。
交通事故による損害賠償請求権については、身体的な損害(人身損害)と自動車などの物質的な損害(物的損害)を分けて検討することになります。
その消滅時効については、旧法では、人身損害も物的損害も「損害及び加害者を知ったときから3年」とされていました。
しかし、2020年4月1日施行の改正民法により「人の生命又は身体を害する不法行為」による損害賠償請求権については、生命・身体という法益の重大性を重視し、損害及び加害者を知ったときから「5年間」に時効期間が伸長されました。
その結果、新法適用の事故については、人身損害については5年、物的損害については3年の時効期間が適用されることになります。
ーー今回のケースではどのように判断されますか。
不法行為による損害賠償請求を前提にした場合には、基本的には事故日から3年で消滅時効が成立することになります。
もっとも、相談者と所有者との間に自動車の使用貸借契約が成立しているような場合には契約責任が発生する余地があり、その場合には、債務不履行による損害賠償請求権として10年の消滅時効にかかることになると考えられます。
また、所有者の請求額が法外か適正かに関わらず、時効期間が経過している以上、相談者は消滅時効の援用をすることができます。所有者が法外な請求額を請求してきた場合には、適正な金額に賠償額を減額するような主張をすることも可能です。
——仮に賠償するとしたら、どのような内容になりますか。
一般的に自動車の物的損害として考えられる損害項目は、 修理が可能な場合の修理費(適正修理費相当額)、経済的全損の場合の買替差額のほか、登録手続関係費用(登録、車庫証明費用など)、代車使用料などがあり、場合によっては評価損が認められます。
なお判例は、特殊な場合を除いて物的損害としての慰謝料を認めていません。
【取材協力弁護士】
前島 申長(まえしま・のぶなが)弁護士
前島綜合法律事務所代表弁護士 大阪弁護士会所属
交通事故・不動産紛争などの一般民事事件、遺産分割・離婚問題などの家事事件を多く扱う。中小企業の事業継承や家族信託などに注力を行っている。
事務所名:前島綜合法律事務所
事務所URL:https://maeshima.lawer.jp/