前戦オランダGPでメルセデスのルイス・ハミルトンとの真っ向勝負に完勝し、再びチャンピオンシップでリーダーとなったマックス・フェルスタッペン(レッドブル・ホンダ)。しかしクリスチャン・ホーナー代表は、イタリアGPに向けては、こう語って緊張感を緩ませることはしなかった。
「次のモンツァはメルセデスに向いたサーキット。我々はチャンピオンシップでダメージを最小限にする戦いをしなければならない」
2014年からスタートした現在のパワーユニット時代。全開率が最も高いモンツァは、パワーユニットの性能がラップタイムに大きく反映される。このモンツァでメルセデスは2014年から5年連続で優勝し、パワーユニット4社のなかで最も得意にしている。
そのモンツァで、フェルスタッペンは予選で3番手を獲得した。これは2015年にホンダがF1に復帰して以来、イタリアGPでの予選最高位となった。
そこにはF1最終年に向けて開発・投入してきたホンダの新骨格パワーユニットの力があったことは言うまでもないが、今回の3番手はそれだけが理由ではない。
予選後、ホーナー代表は、こう振り返った。
「今回は素晴らしいチームとしての結果だ。今日はチェコ(セルジオ・ペレス)が重要な役割を果たしてくれた。マックスにトウ(スリップストリーム)を与え、空気抵抗の少ない空間を与えるという素晴らしい仕事を全うした」
モンツァには4本の長いストレートがある。そのため、どのマシンも空気抵抗をなるべく小さくして走ろうとウイングを寝かせる。それでもF1マシンには大量の空気が前方から当たる。それを少しでも避けようと、予選では前者のスリップストリームをいかに利用するかという駆け引きが見られた。
しかし、この駆け引きは簡単ではない。そこでレッドブル・ホンダはフェルスタッペンの予選ポジションを優先して、チームメートのペレスにフェルスタッペンの前を走らせる役割を与えた。ペレスが予選で9番手に終わったのには、そんな理由があった。
「おそらく、チェコにとっては0.5秒ほどのタイムロスになったと思う。それがなければ、もう少し上の順位を獲得できていただろう」(ホーナー)
しかし、もしペレスがフェルスタッペンの前を走っていなければ、フェルスタッペンが0.5秒ほどのタイムロスをしていたかもしれない。そうなっていれば、フェルスタッペンは3番手を獲得できていなかった。
パワーユニットの性能をいかに活かすのかは、チームの戦略にかかっているということをあらためて思い知らされた今年のイタリアGPだった。