2021年09月11日 09:51 弁護士ドットコム
夫をガンで亡くした女性。残されたメールから思わぬ夫の秘密が発覚し、弁護士ドットコムに相談を寄せました。
【関連記事:夫婦ゲンカ「仲直りご飯」を作ろうとしたら、夫がすでに「離婚届」を出していた…】
子どもも成人し、夫とは円満な夫婦生活をおくっていたと思っていました。しかし、残されたメールの内容から、夫は病気になる前から亡くなるまで、複数の女性と不倫関係を続けていたことが分かりました。さらに、夫は性依存症でEDの薬も服用していたことも明らかになりました。
「顔も知らない女たちに対してどうしたらいいのか、心の整理がつきません」と打ち明ける女性。忘れた方がいいと分かりつつも、「今も相手の女たちは幸せな思いを持ってのうのうと生きていると思うと報復したい気持ちもあります」と内容証明を送り慰謝料請求することも考え始めました。
はたして夫の死後、不倫していた女性に慰謝料請求することは可能なのでしょうか。山本明生弁護士に聞きました。
――夫が亡くなった後に不倫が発覚したというケースですが、慰謝料請求することは可能でしょうか。
今回のケースにおいても、原則として、相談者は亡夫と不倫していた女性に慰謝料請求することは可能でしょう。
不倫は夫婦の貞操義務に違反する行為であって、不倫した配偶者とその不倫相手は、不倫された一方配偶者に対し、共同不法行為者として損害を賠償する責任があります。
過去に不倫したという事実があれば、貞操義務違反が認められますので、不倫が継続しているか否かは問わず、また、配偶者が亡くなったからといって、その責任が当然に無くなるということもありません。
――慰謝料請求する際に、気をつけることはありますか。
通常の慰謝料請求の場合に、相手方から反論が予想される事項については、今回でも同じく反論されることが予想されます。
まず、不貞慰謝料請求の場合、損害及び加害者を知ったときから3年を経過すると、消滅時効が完成します。
今回のケースでは、相談者は残されたメールを見て、亡夫の不倫関係を知っていますので、この時点が起算点となり、それから3年を経過すると、相手方から消滅時効を援用される可能性があります。
次に、不貞相手が、不貞行為時において、亡夫と相談者の婚姻関係は既に破綻していたと主張することも考えられます。
相談者は夫とは円満な夫婦生活を送っていたと思っていたとのことですので、不貞相手からの主張に対しては、円満な夫婦生活を送っていた事実を主張し、婚姻関係が破綻していなかったことを反論すべきであると思われます。
――相談者は夫の遺産相続をしていると思いますが、これは慰謝料請求に影響しますか?
相談者は亡夫の遺産相続をすると、いわば相談者は亡夫と同じ地位に立ち、相談者は債権者であり、債務者であるということになりますので、亡夫に対する慰謝料請求権は混同により消滅するという考え方もあります。
したがって、相談者が亡夫を相続したという事情が、不貞相手に対する慰謝料請求金額に影響を与える可能性もあると考えられます。
【取材協力弁護士】
山本 明生(やまもと・あきお)弁護士
大阪弁護士会所属。交通事故被害(死亡事故、重度後遺障害案件を含む)、相続、離婚など個人をとりまく身近なトラブルを多く扱っている。「話しやすく、分かりやすい弁護士であるべき」との信念に基づき日々活動している。
事務所名:山本明生法律事務所