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NEWS 増田貴久主演ドラマも注目 『古見さんは、コミュ症です。』の魅力とは?

2021年09月11日 08:01  リアルサウンド

リアルサウンド

『古見さんはコミュ症です』の魅力とは?

※本稿は『古見さんは、コミュ症です。』のネタバレを含みます。


 「週刊少年サンデー」で連載している、オダトモヒトの『古見さんは、コミュ症です。』が絶好調だ。2021年9月現在、単行本は22巻まで刊行。さらに、今月の6日からNHK総合でドラマ、10月6日からテレビ東京他でアニメの放送が始まるのである。


 この原稿、実はドラマの初回を見終わってすぐに書いているのだが、先が楽しみな出来であった。特に注目したいのが只野仁人を演じている、ジャニーズ事務所所属の男性アイドルグループNEWSのメンバーの増田貴久である。というのもこの物語、ヒロインは池田エライザ演じる古見硝子なのだが、キー・パーソンとなっているのは只野くんだからだ。


 漫画は、県内でも有名な進学校の私立伊丹高校に入学した只野仁人が、クラスメートの古見硝子と出会う場面から始まる。中学の頃は中二病気味だった只野くんだが、今は周りの空気を読んで、目立たず生きていこうと思っている。しかし隣の席が古見さんだったことから、注目を集めてしまう。というのも古見さんは、とんでもない美少女で、すぐさま学校のマドンナになったからだ。


 しかし古見さんは誰とも喋ることなく筆談を使い、なにかあると激しく震えたりと態度がおかしい。男女の機微にこそ疎いが、人をよく観察して本質に気づく只野くんは、古見さんがいわゆる“コミュ症”(人付き合いを苦手とする症状。またはその症状を持つ人を指す)であることを見抜いた。そして彼女は子供の頃からまったく友達がいないこと、そんな自分が嫌で、友達が欲しいと思っていることを知る。


 古見さんの願いをなんとか叶えたいと考えた只野くんは、まず自分が友達になる。さらに、幼馴染のクラスメートで、コミュ力の化け物である長名なじみの協力を得て、古見さんの友達を100人にすべく頑張るのだった。


 というのが物語の発端だ。最初はなじみがストーリーの牽引役として機能していたが、クラスメートを中心に古見さんの友達が増えていくと、青春群像劇の要素も強まってくる。その一方で、只野くんと古見さんの関係が、じりじりと接近。甘酸っぱい恋愛物としても読めるようになっている。


 そして第10巻で2年生になると、新たなクラスメートとしてギャルの万場木留美子が登場。古見さんの新たな友達になる(このエピソードで古見さんの成長を実感させるのが巧い)。


 古見さんや只野くんたちと遊ぶようになり、しだいに只野くんに惹かれていくのだ。しかし古見さんの只野くんに対する気持ちも理解しており、第17巻で互いの気持ちを告白し合う。この物語は優しい世界であり、恋愛問題も爽やかだ。そして三角関係がどうなるかが、目下の一番の関心時になっている。


 さて、以上のことを踏まえて、あらためて只野くんを見てみたい。私立伊丹高校の合格基準は〝個性〟であり、奇人変人が多い。古見硝子がコミュ症など、みんな名は体を表すとばかりに、個性を主張している。そんな中で只野仁人は、名のとおりの唯の人。一見、平凡で没個性なのである。


 これを象徴しているのが、只野くんの顔だ。本作の登場人物は表情豊かであり、ヒロインの古見さんも、よくデフォルメ顔になる。ところが只野くんの、目が大きくて黒目の小さい顔は、あまり変化しないのだ。もちろん照れたり焦ったりすることはある。しかし顔自体は、ほとんど変わらない。何度か女装しているが、それも同様だ(男子クラスメートの妄想の中では、可愛く描かれている)。いささか牽強付会になるが、そこに彼のニュートラルな性格を見ることができるだろう。だから只野くんは、見かけで人を判断しない。古見さんがコミュ症であることをすぐに見抜く。第6巻から登場する、強面だが奥手の片居誠についても、すぐに本質を見抜いて受け入れる。


 さらにそのことをよく表現しているのが、第19巻の四者面談のエピソードだ。なぜか三者面談に参加させられた只野くんは、クラスメートの良い部分を的確に指摘。担任の先生から、「教師になれ? 私より面談うまいもん」といわれるのだ。個性的なクラスメートの中で、唯の人であると思っている彼は、その実、きわめて非凡な存在となっているのである。


 だから只野くんは、物語のキー・パーソンなのだ。その只野くんを増田貴久がどう演じていくのか興味津々。漫画の行方はもちろんだが、ドラマの行方も気になってならないのである。