いよいよ後半戦を迎えるスーパーGT、第5戦の舞台は昨年開催のなかったスポーツランドSUGO。GT300では昨年より、第6戦までポイント×3kgのサクセスウエイト(SW)が搭載されることから、とくに今後2ラウンド、上位陣はヘビーなウエイトを背負うことになる。
このため予選では軽量な車両、とくに過去SUGOを得意としてきたGT300(昨年までのJAF-GT300)規定勢が上位に進出することが予想される。
前戦鈴鹿でも速さを見せたマッハ車検 GTNET MC86 マッハ号(SW:18kg)はその筆頭候補と言える。また、富士、鈴鹿でPPを獲得しているSUBARU BRZ R&D SPORTも、54kgのSWを積むものの、ポールポジション獲得は不可能ではないだろう。
鈴鹿では決勝でのペースダウンに苦しんだBRZ。レース後、井口卓人はセットアップ面での課題を語っていたが、先週オートポリスで行われたタイヤメーカーテストでは、改善の兆しが見られたという。
テストはあいにくの雨に見舞われたが、山内英輝によればその雨が課題を浮き彫りにしたという。
「ドライのときと同じような症状が、雨の中ではむしろ顕著に出ていました。でも、チームが足回りのセットなどをいろいろとやってくれたおかげで、それを抑えることができました」
ちなみに山内は、直近の開催となる2019年にコースレコードとなるタイムでPPを奪ってもいる。ここ最近は“予選が良くても……”という戦いが続いているだけに、開発の成果を決勝で見せつけたいところだろう。
一方、タイトル争いで上位につける“重量級”チームにとっても、ポイントを積み上げるための重要なラウンドとなる。
なかでも、SW72kgで前戦鈴鹿に挑み、8位入賞で貴重なポイントを手にしたリアライズ日産自動車大学校 GT-Rは、周囲が恐れる存在だ。鈴鹿では序盤にピットレーンスイッチの誤操作により順位を下げたが、そこからの決勝レースペースは「驚異的に速かった」とライバル勢のある関係者は“積んでも速い”決勝ペースを注視している。
今回81kgのSWを背負う藤波清斗は「走ってみないと分からないです。ただ、なるようになるかなと、あまり深くは考えていないですね」と飄々と語る。
「重くはなってきてますが、(いま使っているタイヤは)とてもいいタイヤですし、(レンジの)幅も広い。そこはまったく心配してないです」
「逆に今回、周囲はソフト(めのコンパウンド)で来ているようなので、日曜日が暑くなりそうなことを考えると、ドロップがすごくなりそう。その面では、僕らは安定感を持っているので」と自信も覗かせている。
藤波のコメントにもあるように、ここSUGOではソフト系のタイヤを使い、予選で前に行くことを命題としているチームが多いようだ。
グッドスマイル 初音ミク AMGもそのうちの1台だ。第4戦もてぎでは予選で上位につけるも、グリッド上でのセット変更が裏目に出てポジションアップはならず。鈴鹿でもピットタイミングを引っ張ったことで勝機を逃してしまったというが、いずれも「タラ・レバでいえば、勝てていたかも」(河野高男エンジニア)と、調子は上向いている。
河野エンジニアによれば、今回のSUGOに向けては「(タイヤだけでなく)車両側でもいろいろとやってきている」といい、好調だったもてぎのパッケージも入っているという。ただし決勝では“トップから20秒以内”でレースを進めることが上位フィニッシュの条件となりそうだ。
この“20秒以内”というのは、SUGO特有の条件である。
1周の短いSUGOでは、決勝中のポジションによって、採れる作戦の幅が大きく変わってしまう。ピットアウト後、首位車両にラップダウンにされてしまうと、その後(上位勢がピットインする前に)セーフティカーが導入された場合に1ラップの遅れを取り戻すことができなくなってしまうからだ。
河野エンジニアによれば、SUGOのピットロードでのタイムロスは約30秒、グッドスマイル 初音ミク AMGの作業時間はうまくいけば33~34秒ほどだという。決勝ラップペースを1分23秒程度と仮定すると、第1スティントでトップから20秒以上遅れた状態でピットに入ると、確実にラップダウンになってしまう。
ミニマム周回数でピットインする、あるいは順位を争う車両に対して“アンダーカット”を仕掛けるなどの、幅のある戦略を少ないリスクで採れるのは、トップから20秒以内を走る車両に限られる。これが「Q1を通ることが一番の目標」(河野エンジニア)である理由だ。
ソフトタイヤで予選上位に出て、戦略の幅を活かすのか。予選上位は難しいと読み、決勝での安定性を武器に挑むのか。搭載ウエイト量がバラつきつつある第5戦、各陣営はそれぞれに異なった思惑でSUGOのレースウイークを戦うことになる。