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鍵を握る2基目のニューエンジンと、ウエイト差以上に気になるアナザー・ファクター【第5戦GT500プレビュー】

2021年09月10日 18:41  AUTOSPORT web

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前回鈴鹿でブレーキトラブルからクラッシュした64号車Modulo NSX-GTは2基目のエンジンを投入
今週末、2年ぶりに開催されるスーパーGT第5戦スポーツランドSUGO。昨年は新型コロナの影響で開催がなかったため、昨年デビューした現行規定のGT500車両はほぼ、初めての走行となる。サクセスウエイト(SW)を考慮すると今回の優勝候補は8号車ARTA NSX-GT(SW26kg)、12号車カルソニック IMPUL GT-R(SW16kg)、38号車ZENT GRスープラ(SW22kg)、39号車DENSO KOBELCO SARD GRスープラ(SW28kg)が挙げられるが、今回のSUGO戦の見どころは、他にも多く見られる。

 今年、ダンロップがSUGOでタイヤテストを行い、64号車Modulo NSX-GTを除く14台は、現在の車両でSUGOを走行するのは今週末が初めてになる。唯一テストで走行した64号車も大津弘樹が「僕はGT500のミッドシップを乗っていないので比較はできないですが、(FRの現行NSXでも)まったく違和感なく走行できました」と話していることから、大きな問題はなさそう。

 64号車がテスト走行できたことで、ホンダNSX陣営としては基本データの確認ができたようだが、タイヤメーカーが変わればセットアップに関してはデータ共有は難しい。ブリヂストン、ヨコハマ、ミシュランにとっては2年ぶりとなるSUGOで、どこまで路面コンディションとマッチングするかは大きなポイントになる。

 また、今回のSUGOはシーズン5戦目の折り返しとなることから、ほとんどのチーム、メーカーでシーズン2基目のアップデートされたニューエンジンを搭載してきているようだ。GRスープラ陣営は6台すべてが2基目のニューエンジンに換装。ホンダNSX陣営は、数台が2基目のニューエンジンで、数台が前半戦の1基目を継続使用しているという。

 前回の鈴鹿戦の決勝でブレーキトラブルから大クラッシュをしてしまった64号車Modulo NSX-GT。クラッシュの影響からモノコックは交換までは至らず修復で対応できたとのことだが、エンジンは2基目に換えて臨むことが確認された。

ただ、ホンダNSX陣営の他のチームに関しては、どのチームがニューエンジンを搭載しているのか搬入日の段階では確認できなかった。そのあたり、他メーカーを含めて市販車でもコロナの影響で海外からの部品供給が遅れていることの影響があったとも言われているが、ホンダ陣営のシーズン戦略を考えての狙いを感じる。

 ニッサンGT-R陣営も未確認ながらアップデートされた2基目を投入している可能性が高く(23号車MOTUL AUTECH GT-Rは第2戦富士でのエンジントラブルにより、1基目と同じ2基目を搭載)、現在のGT500の規定で唯一開発が全面的に認められているエンジン・ウォーズの今季第2章がこのSUGOで見ることができそうだ。

 サクセスウエイトが軽めのクルマとは対称的に気になるのが、ランキング上位の重いクルマたち。前回の鈴鹿で一時14番手まで順位を下げながら4位入賞を果たしてランキングトップに立った1号車STANLEY NSX-GT(SW80kg)、14号車ENEOS X PRIME GR Supra(SW70kg)、36号車au TOM’S GR Supra(SW64kg)がそれぞれどのようなパフォーマンスで、どのポジションでフィニッシュするか、チャンピオンシップを考える上で重要な一戦になる。
 
 また、前戦で衝撃の表彰台独占を果たしたニッサンGT-R陣営が鈴鹿と似た特徴をもつ中高速コーナーの多いSUGOで、サクセスウエイトが重い状態でどこまでパフォーマンスを発揮することができるのか気になるところ。路面コンディション、または雨が降るダンプコンディションのような展開になればミシュラン勢の23号車MOTUL AUTECH GT-R(SW44kg)、3号車CRAFTSPORTS MOTUL GT-R(SW56kg)にもチャンスが巡ってきそうだ。

 もうひとつ、実際の走行で気になる点としては、改修されたピットレーン出口の合流についてだ。今年、SUGOはピットレーン出口が改修されて3コーナーのアウト側で合流する形となった。スーパーフォーミュラではすでに一度レースが行われ、大きな問題は起きなかったが、台数が大きく増えるスーパーGTでは事情が異なる。

 ピットレーンからコースインするマシンにとっては左側が死角になって本コース上のマシンが確認しずらいことから、予選アタックを邪魔してしまう可能性や、レースでの合流時の交錯が心配される。 搬入日のコースウォークでも多くのドライバーが2年ぶりのコースを確認していたが、このピットレーン出口では時間を掛けてチェックする姿が印象的だった。

 前回の鈴鹿戦は特に予選日が予想外の低気温でタイヤ選択を外して、サクセスウエイトの差以上にタイヤ選択、タイヤのマッチングが勝敗を分ける結果になった。今回のSUGOの週末も予想の難しい天候になりそうで、GT500クラスの戦いは路面とタイヤ、そしてクルマのセットアップのマッチング、さらに自動車メーカー、そしてタイヤメーカーの得手不得手が絡み合った難しい展開になりそうだ。