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繊維のゴミを紙に、循環型社会を目指すプロジェクト「サーキュラー コットン ファクトリー」が始動

2021年09月09日 23:51  Fashionsnap.com

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(左から)グラフィックデザイナーの福島治氏、hap 鈴木素社長、45R-J 中島正樹代表、渡邊智恵子氏、日本郵政の増田寛也社長、榮太樓總本鋪 細田将己副社長、生駒芳子氏、新渡戸文化中学・高等学校教諭兼統括校長補佐 山藤旅聞氏 Image by: FASHIONSNAP
繊維の廃棄物から紙を作り、循環型社会を目指すプロジェクト「サーキュラー コットン ファクトリー(Circular Cotton Factory、以下CCF)」が始動した。オーガニックコットンを日本で広めたアバンティ創業者の渡邊智恵子氏が筆頭となり、「繊維のゴミを資源にする」という活動を広めていく。

 CCFによると、年間で作られる約28.5億枚の服のうち約14.8億枚は売れ残り、新品のまま破棄されている。また、世界の廃棄物のうち繊維は14%を占めるなど、ファッション業界で衣服の大量廃棄が問題視されている。近年はリサイクルに取り組むアパレル・繊維企業が国内でも増えているが、服はボタンやファスナーなどのパーツが多く、混紡生地も存在するため、分別が難しいとされている。実際に、繊維のリサイクル率は17.5%に留まっているという。一方で、紙の回収率は85%、古紙利用率は67%と繊維よりも高い傾向にある。渡邊氏は日本特有の紙の文化や歴史に着目し、繊維の廃棄物を紙として活用できる循環社会を目指すために2年前から準備を進めてきた。CCFの運営には渡邊氏のほか、グラフィックデザイナーの福島治、アパレルのOEMを行うhapの代表取締役社長で世界初の快適多機能性素材「カバロス(COVEROSS®)」を開発した鈴木素氏、「45R」を展開するフォーティーファイブアールピーエムスタジオ(45rpm studio)とクールジャパン推進機構が設立した45R-Jで代表を務める中島正樹氏の3人が参画している。
 CCFの最初のアクションとして、再生紙の専門メーカーや全国の和紙メーカーの協力を得て、綿製品を中心とした繊維ゴミから紙をつくる技術を確立。数種類の紙の製造に成功したという。開発したサーキュラーコットンペーパーには、綿製品の繊維ゴミ50%と木材パルプ50%を使用。会見に参加した新生紙パルプ商事の花輪年秋氏は「これまでも廃棄物を紙に混ぜるという取り組みはあったが、配合率は高くて30%。50%以上はもはや主原料になっていると言っても過言ではない」と高く評価した。現状の課題としては、製紙メーカーにおける技術の問題やコスト面、強度に加えて、漂白や染色を行わないためクオリティの安定性などを挙げた。

 今回はこのサーキュラーコットンペーパーの活用を広める「100 project」を発足。パートナー会員からサーキュラーコットンペーパーを使った事例を集め、100件に到達した場合は同ペーパーを用いて「洋服で未来(紙)をつくる100 project」として書籍化を目指す。現在はCCFのヴィジョンに賛同するパートナー会員を募っており、月会費は5000円。日本郵便やサザビーリーグ、菓子屋の榮太樓總本鋪、統合医療 希望クリニックなど、約30の企業や個人がパートナー会員としてすでにリストに名を連ねている。渡邊氏はさまざまな業種からプロジェクト参加者が集まったことを受けて「(サーキュラーコットンペーパーの)マーケットは大きいと思っている」と前向きな姿勢を示し、「日々使っている繊維が紙になるということを知ることで、サーキュラーコットンペーパーを使っていこうという気付きにつながり、浸透していくのではないか」と続けた。
 会見にはプロジェクトメンバーのほか、ゲストとしてファッションジャーナリストの生駒芳子氏らが登壇。また、「ミナ ペルホネン(minä perhonen)」のデザイナー皆川明がビデオでコメントを寄せ、「産業廃棄物からコットンを取り出し、再生コットンではなく紙にするという新しい使い道を模索するというのは、いろいろな産業や暮らしのなかでプラスに働いていくと思う」とエールを送った。CCFは今後も用途に合わせた多様な紙を開発していくという。

■サーキュラー コットン ファクトリー:公式サイト